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スープの湯気と紅茶の記憶



 シンデレラは、自室に閉じこもった初日、良く寝た。


 これまでの睡眠不足を、解消するかのように、良く寝た。


(どうしよう⋯最高だわ)


 二日目は、何もしないことに罪悪感を覚えた。


 義姉が、母に止められているであろうに、作り置きのスープを持ってきてくれた。しかし、ドアを開けてはいけない。


 扉越しに、義姉が話しかけてきた。


「貴方、昨日、良く寝てたわね。ノックしたけど、全然返事がないんだもの」


「申し訳ありません⋯。あ、鍋のスープは、味が濃くなっていませんか?」


 恥ずかしさを誤魔化すように、シンデレラは、義姉に問うた。


「⋯濃くなってきたわ」


「ならば、煮詰まって来ていると思うので、温める前に、水を入れて下さい。少しずつ。鍋に使う水は、大きな(かめ)に蓋がしており、上に手酌が置いてあります」


「分かったわ」義姉が続けて、口を開く。


「ねぇ、シンデレラ。⋯私、早く貴方の顔が見たいわ。あなたの作ったお菓子も口にしていないのよ。火を起こす事は、出来るようになったけど、それで、お茶は飲めるけど、同じ茶葉なのに、味がぜんぜん違うのよ。貴方が入れてくれる紅茶は、あんなに美味しいのに⋯」


と、話したところで継母の、義姉を探す声がする。


「大変。じゃ、もう行くわね」


 そう言って義姉が、料理を置いて遠ざかる。


 お茶の味と聞いて、いつだったか、義姉がシンデレラのお茶の味を気に入り、『自慢したい!』と、この屋敷で、お茶会が開かれたことがあったな、と、シンデレラは思い出す。


 義姉主催で、その頃には、下働きが、自分ひとりしかおらず、義姉に言いつけられるまま、飾り付けをして、大量のお菓子を焼いて。


 当日、給仕もしたけど、


(義姉のご友人は、やたらと、おっちょこちょいの人達ばかりだったっけ?)


 義姉の友人がスプーンを落としたのを、拾って、新しいものを差し上げると、恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして。


 それから、友人たちは、次々とフォークやらスプーンやら、色んな物を落とすように。


(やたらと、拾ってばかりの時間だった気がする⋯)


 それから、お茶会が開かれることは、なかった。


 準備が大変だったから、助かったものの、義姉に聞いたら、

「貴方が取られそうだから、もう、やらない」

と、良く分からない返答をされた。


 三日目、賑やかな音で起こされた。



 城からの使者が、訪ねに来た、合図だった。



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