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儚きざわめき



 翌日も、シンデレラは、日も明けぬ内から、作業をしていた。


 魔法使いのおばさまの差し入れは、短い睡眠時間でも、疲れを残さなかった。


(なんだか、私、すごい人にでもなったみたい)


 床を磨きながら、ピカピカに磨き上げられた、天井や窓を見上げながら、そう思った。


 継母の言いつけどおり、家中を磨き上げる頃には、深夜になっていた。


 翌日、継母は、シンデレラに、こう告げる。


「ご苦労、シンデレラ。やれば出来るじゃないか。頑張ったお前に、休息を取らせてやるよ」


 そう言うと、継母は意地悪く顔を歪み、笑み、


「二、三日もすれば、国から花嫁探しの使者が来る。お前は、その訪ねてきた使者が、この屋敷から出て、遠く見えなくなるまで、自分の部屋から一歩も外に出てはいけないよ。窓に近づく事も禁止だ。分かったね?」


 その言葉に


「承知しました。お継母様」


 礼をし、退室しようとするシンデレラを慌てて、止める声がした。

 義姉だった。


「わ、私達じゃ料理できないわ!せめて、二、三日分だけの料理を作らせてからじゃ、ダメかしら?ねぇ、お母様」


 母の顔色を伺いながら義姉は問うた。


「それも、そうだねぇ。シンデレラ、今すぐ支度をしてちょうだい」


 継母は、シンデレラに命令すると、部屋から出ていった。


 扉が閉まると、義姉は、シンデレラに近づき、


「貴方と会えなくなるのは、つらいわ⋯」


と、うつむき加減に、シンデレラに告げた。


「腹持ちの良いスープを作ります。日持ちもするでしょう。

お義姉様には、火の起こし方を教えます。私がいない間、冷めたスープになってしまうでしょうから」


義姉は、(え!?火起こし!?)という表情で顔を上げながらも、一旦考え、


「冷めたスープは嫌だわ」


と、言い、シンデレラの後に続いた。



 シンデレラが料理の支度をしている最中、義姉は、椅子に座り、その様子を、じっ、と見つめていた。


 シンデレラは、二、三日の間に傷んでしまいそうな食材を選び出す。


 先程、街から来た行商人から、つい、いつもより安く感じて肉を多めに買ってしまった⋯。


 奮発してしまった数刻前の己を悔いながら、これも全部使わなければ、と肉の塊も鍋の食材にした。


 食材選びにうんうん悩ませていると、後ろから義姉の声がかかる。


「最近の、お母様、なんだか様子が変だわ。前々から厳しかったけど、ここ最近は特に⋯。先日の言いつけも⋯。私、貴方が、倒れるんじゃないかと、これでも心配したのよ」


「ご心配おかけして、申し訳ございません」

 珍しく殊勝な義姉に謝ると、義姉はそれを制した。


「良いのよ、別に。私が勝手に心配してたんだし」


 食材を切り終え、鍋に移し、火を起こす動作を義姉に教える。


 義姉は、『なんだか、早々に失敗しそう』と、不安げだった。


 味見の際は、ちょうど、義姉がいたので、自分の舌に不備がないか、みてもらった。


「ああ、皿は私とは、別がよろしいですね」と、皿を使い回ししてしまった事に気付き、渡した皿を受け取ろうとすると、


「え!?良いわ!そのままで!このままで⋯、良いのよ」

と、言い淀み、ほんのりと目元を染める義姉。


 シンデレラの目からは、洗い物を少なくしようとしてくれる、協力的に映る義姉に、

(めずらしい⋯)と思うのだった。



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