冷笑の下の執念
最近、巷で噂の歌謡劇が、連日満席でチケットも高額になっているという。
なんでも、件で注目の的となっている王子様が手掛けたとか? 噂を聞きつけた、義姉が、毎日、観たい観たい、とボヤいている。
継母は、最近忙しいのか、留守にしがちだ。
ほこりチェックの頻度が減ったので、シンデレラは、気になる所を重点的に掃除をした。
「この近くまで、花嫁探しに来ているのですか?」
行商人からの話である。
「はぁ、そうみたいでさあ。お兄さんの所にも近々尋ねに来るのやもしれやせんね。しっかし、王子様ってやつぁ、よっぽど足に拘りがあるんですぁねぇ〜。 あの辺一体の家々なんか、軒並み惨敗とかでね、家の娘よりも玉の輿狙った両親のが、泣き暮らしてるそうですわ」
行商人は、遠くを指差しながらそう言う。
「あぁ、でも、」 と、思い出したかのように、行商人は続けた。
「王子は、男の子も娶りたいようでね、娘と息子がいる家なんかは、もう大騒ぎ。そこらの村なんて、娘と息子に一張羅なんか着せちゃったりして、今かいまかと待ち構えているようなんですわ」
「男の子も⋯」シンデレラが復唱した。
「お兄さんなんかも、貰われちゃったりなんかして」
ニヘラっと笑って行商人は、「それじゃ、まいど!」と、去っていった。
やはり、王子様は、博愛主義者となったようだ。
(舞踏会で、たくさんの素敵な方と出会ったのでしょうね)
何故だが、シンデレラの胸に、一抹の寂しさを覚えるのだった。
最近、外出が多い継母だったが、あらゆる伝手を伝い、最近話題の劇場へと、知人を介してやっと、同伴に誘われることができたので、観劇を楽しみに訪れていた。
終劇に人々が、感心したり、ウットリと、拍手を送る中――。
継母だけは、脳裏に金髪に青い瞳の少女を思い浮かべながら、苦虫を噛み潰したような顔で拍手を送っていた。
「誰かを、思い出させるわねぇ⋯」
その声は、誰の耳にも聞こえることはなかった。
継母からの突然の命令だった。
「良いかい、シンデレラ、よくお聞き。今から庭の草木を1ヶ月、手を出さずとも良いぐらいに、綺麗に剪定、伐採、草抜きをしな。その後は、家中どこもかしこも、顔が映るぐらい、ピカピカに磨きをかけるんだよ」
「私が、良い、と言うまで、ひと息つく暇も与えやしないよ。私が、良いと、言うまで、眠らせはしないよ。期限は、二日間だ。
なあに、それが終われば、たぁっぷり休息を与えてやるさ。分かったら、早くおし!!」
継母の気迫に、実子である義姉も、口をあんぐりと開けたまま、反論の口も挟むことも出来ず、ただ、シンデレラが言われるまま、急いで庭に向かっていく姿を、見送ることしか出来なかった。
シンデレラが、部屋から去った後、継母は、義姉にこう告げる。
「シンデレラの仕事が終わるまで、お前も、シンデレラに話しかける事も近づくことさえ、許さないよ。城からの使者が、どんどんこちらに近づいてるって話さ。あたしの娘らしく、とびっきり美しく、器量の良さに磨きをかけておくんだよ」
そう言って、窓に近づき、庭の遠くで働く、シンデレラを睨みつけるように眺めながら、
「絶対に、幸せになんて、させてやるもんか」
と、呟くのだった。




