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目撃、そして混乱



 往来おうらいを通る王家の馬車にみな、動きを止め、一礼をした。


 シンデレラも皆を習い、義姉を背にかばい礼をし、馬車が通り過ぎるのを待った。


 ふと、何故だか視線を感じ、思わず顔を上げた。


 すぐ目の前に王家の馬車が、ゆっくりと通り過ぎようとしている。


 慌ててシンデレラは、頭を下げた。


 目隠しをされた窓、その向こうの人物と目が合った気がした。


(殿下⋯?)


 馬車が通り過ぎる。

 往来の安全を確かめるように、ゆっくりと。

 これから、貧困層へ、かの娘を迎えに行くのか。


 シンデレラと、人々は、遠くなっていく馬車を見つめた。



 シンデレラが見つめていた馬車の中では、王子様が信じられないものを見た、という顔で呆然としていた。


(ありふれた、でも、どこか目を引く金髪に、彼女を思い出して、見ていたら、彼女にそっくりの男性がいた)


 かぶりを振り、王子様は、考え直す。


(いや、違う。彼女だ。見間違うはずがない。こんなにも近く、目の前に――焦がれた彼女がいた。でも、何故。何故、男装を?)


 王子様の頭の中に疑問のはてなが飛び交う。


 続けて出たのは嫉妬心。


 (後ろに庇った女は何者だ?彼女とどういう関係だ?彼女は、貧しいと言っていた。雇っているのか?それとも金で物を言わせているのか?分からない。どうして?なぜ、男の格好で、女といる?)


(今すぐ、馬車から飛び降りたい。確かめたい。金で縛り付けている女を怒鳴りつけて、彼女を連れ去りたい)


 両手で顔を覆い、ぐるぐると思考の渦に飲まれてしまう王子様。


 ぐっと、歯を食いしばり、嫌な妄想で頭がどうにかなりそうなところを寸でで、堪えた。


(ダメだ。堪えろ。今日は貧困層へ視察だ。護衛は、もう到着している。これは、父王曰く、肝いりの政策なのだ。この目で確かめねば)


 理性的に自分を押さえつけた直後に溢れ出る下心と嫉妬心。


(しかし、あわよくば、彼女と出会えるかと思ったのに、思ったのに⋯っ!!!なぜ、あそこに女といるのだ。庇っていた、大事そうに!赤毛の女を!!女は何者なのだ⋯っ!!ああっ!!)


 悶々と悩む王子様を、馬車は貧困層へと連れて行った。



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