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97.配信休止=彼女は逃れられない過去に囚われる。

 

「――――もしかして白崎?」


 コンビニで飲み物やお菓子を買った帰り道、実家の玄関前まで戻ってきた私は不意に後ろから声を掛けられて反射的に反応してしまった。


「えっと……」

「ほらほら、アタシだよ。中学の時、同じクラスだった安倉泉、覚えてるっしょ?」


 中学の時、その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中は真っ白になり、全身に冷や汗が滲んでくる。


 ここは地元なのだから当然、その可能性はあった筈なのに、私はそれを失念していた。


 いや、今思えば失念していたというより、分かっていながらも、考えないようにしていたのだろう。


 平日だから、あるいは同級生はもうみんな地元を出ただろうから、もしくはきっと今の私なら誰も分からないと高を括っていたのかもしれない。


「あ、安倉さ……ん?そ、その、ひ、久し……ぶり…………」

「え、何?急にきょどって、白崎って見た目は変わっても中身は全然変わってないんだ?ウケる」


 理想の私を演じると決めたあの日から、もう昔の自分には戻らないと誓い、どんな状況だろうと崩れない……今の私こそが本当の私だとそう思っていた筈なのに、ただ中学時代の同級生と再会しただけで脆く、剥がれ落ちてしまった。


「そ、それじゃあ……その、わ、私はこれで――――」

「は?白崎の癖になに勝手に帰ろうとしてんの?アタシが今、話してる途中っしょ」

「ひっ……ご、ごめんなさい……」


 一度剥がれ落ちてしまったそれはもう戻らない。たぶん、普段の私なら何とも思わない威圧でも、今の私はいとも簡単に怯んでしまう。


 それこそまるで中学の時に戻ってしまったかのように。


「まーいいや。それよりさ、白崎、アンタ今、配信やってて有名なんっしょ?」

「っ……!?」


 滲んでいた冷や汗は滝のように流れ、閉塞感と共に悪寒と吐き気が襲い掛かる中、追い打ちをかけるように問われた言葉は知られるはずのない事実だった。


「でさ、その辺りの事を詳しく聞きたいんだけど……って、あ、ちょ――――」


 どうして?なんで?浮かび上がる疑問よりも、知られるわけのない事実を知られてしまったという衝撃を受けた事で、私はあまりのストレスに耐え切れなくなり、何か喋っている同級生を振り切ってそのまま家の中に駆け込んだ。


「――――はっはっはっ……っ……なんで……私は…………」


 鍵を閉めて(うずくま)り、外から聞こえてくる同級生の怒声から逃げるように耳を塞いでそれが止むのをひたすらに待った。


 どれくらいそうしていたかは分からない。


 けれど、日が暮れ始めて薄暗くなってきた事に気付き、恐る恐る耳から手をどけると、辺りはしんと静まり返っていた。




97.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。


もうすでに克服したと思っていた過去に囚われた彼女は果たして……?


今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、ブックマークと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!


「過去のトラウマ……それは一朝一夕で克服できるものではないですが、あのゆうぐれ様があそこまで取り乱すなんて……」

「……それだけ心の奥深くに根付いてしまってるんだよ。ゆうぐれちゃんみたいに壮絶ってわけじゃないけど、その気持ちは私も少しだけ分かるもん」

「……私にはトラウマと呼べる程の過去はありませんから気持ちが分かるとは言えませんが、それでも寄り添う事はできるはずですわ」

「そうだね……寄り添うだけじゃなく、ゆうぐれちゃんを引っ張って助け出すのが私の役目だ。たとえ、ゆうぐれちゃん自身が嫌がっていても絶対に諦めないよ!」

「もちろんですわ!恨まれようと助け出す覚悟はできていますもの!」


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