60.お絵描き準備=彼女は少女の料理に恐怖する。
彼女を待たせること十数分、シャワーを浴び終えて洗面所から出てきた私を出迎えたのは鼻腔をくすぐる美味しそうな匂いだった。
「この匂いは……」
「――――あ、上がったんですねミリアさん。もうすぐお粥ができますから待っててくださいね」
こちらの姿に気付いたエプロン姿の彼女がそう言いながらにこりと笑うけれど、私の脳裏にこの間の玉子焼きが過り、慌ててキッチンの方へ向かう。
「わっ……そんなに慌ててどうしたんです?」
「……これは……コンビニのやつ?」
「え?そうですけど……って、ちょっ、ミリアさん髪が濡れたままじゃないですか!症状が悪化しちゃうじゃないですかもうっ」
「え、ああ、これは後で乾かすから……や、大丈夫だって――――」
何事かと首を傾げていた彼女だったが、私の髪が濡れたままなのが見逃せないらしく、強制的に洗面所へと戻され、逃げられないようにがっしり掴まれてしまった。
そしてドライヤーで髪を乾かされること数分、抵抗しても疲れるだけだと悟り、大人しく為すがままにされていると、なにやらキッチンから妙な匂いが漂ってくる。
「……なにか焦げ臭いような」
「あ!?火止めるの忘れてました~!!」
慌ててキッチン戻る彼女だったが、時はすでに遅く、温めていた出来合いのお粥は見るも無残に焦げ付いてしまっていた。
「……まだ上の方は辛うじて食べれそうですけど……まあ、止めておいた方が賢明ですね」
「ごめんなさい!ごめんなさい!キッチンから離れるのに火を消し忘れてて……」
本当に申し訳なさそうに彼女は何度も頭を下げて謝る。確かに消し忘れた彼女が悪いのだが、キッチンを離れた理由が私の髪を乾かすためなのでこれに関しては少し怒りづらい。
そもそも半ば強引にとはいえ、彼女は私の事を心配してお見舞いにやってきてくれたのは事実……そんな相手を頭ごなしに怒るのは流石の私でも気が引けてしまう。
「……怒ってませんから頭を上げてください。幸い、火事にはならなかったですし、お鍋は焦げちゃいましたけど、まあ、それは仕方ありません。大事がなかっただけ良しとしましょう」
「っ本当にごめんなさい!お鍋は弁償しますから…………」
「…………本当に気にしなくて大丈夫ですから。それよりもお腹空きましたし、何か作りますから手伝ってください」
「え、でも…………」
「まずはお鍋を片付けちゃいますよ。ほら、早く」
落ち込む彼女を半ば強制的に動かして洗い物へと誘導する。
気にするなと言っても、彼女には意味がないみたいだから、こうして何事もなかったように手伝わせた方が気分も紛れるだろう。
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好意からお昼を用意しようとして失敗してしまった少女を気にかけ、一緒にキッチンへと立つ彼女。落ち込む少女に彼女はどんな言葉を向けるのか……?
この先が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「……既製品で温めるだけのお粥を失敗するなんて……ゆうぐれ様、大丈夫ですか?」
「あ、あれはたまたまよ。普段、既製品のお粥なんて買わないから、その、温め方も分からなくて……」
「パッケージの裏に分かりやすい図柄で描いてありますわよ。まあ、湯銭が一般的だとは思いますけれど」
「ゆ、湯銭?良く分からないけど、結果的に温まればそれでいいじゃない」
「……中身を直接温めるのも間違いじゃないとは思うけど……もしかしてあの時、強火で温めたりしてないよね?」
「もちろん、強火よ。その方が早く温まるでしょう?」
「…………ええー……数年後しに判明した驚愕の事実なんだけど。どうしよう」
「……どうしようもないですわ。ゆうぐれ様は料理に関する常識が少し欠けているみたいですもの」




