55.お絵描き準備=彼女は何かを掴みかける。
失敗したであろう玉子焼きをどうにか処理した辺りでお昼が終わり、ぐぬぬといった表情を浮かべながらまた講義が終わる頃にきますからねと悔しそうに言い残して去っていった。
まさかあの子が料理下手なんて……あの見た目とキャラでそんな属性まであったらまるで漫画のヒロインだよね……。
講義を受けながらお昼の出来事を思い出し、ぼんやりとそんなことを考える。
私だったらあの子のキャラを考えて方向性は崩さずに…………っ今、私は何を……?
ぼんやりと、自然に出てきたアイディアにはっとし、講義中だという事も忘れて振り払うように首を振った。
「――――そこの君、どうかしたのかね?」
「へ、あ、いや、その……何でもありません……」
その様子から講義中の教授に目を付けられ、怪訝な顔で尋ねられてしまった私は羞恥心から顔を真っ赤にしてそう答え、どうにかその場をやり過ごす。
うぅ、絶対に目を付けられた……ここまでずっと真面目に講義を受けてきたのに……
悪いのは講義中に考え事をして勝手に自爆した自分なのだが、こうなったのもあの子のせいだと頬を膨らませ、抗議してやると心に決める私。
さっきまで考えてきた事……それがずっと描けない状態を抜け出すためにきっかけになる事をこの時の私は羞恥心のあまり気付いていなかった。
ようやく講義が終わり、帰り支度をして教室を出た私を迎えたのはお昼ぶりに現れた少女だ。
「さっきぶりですねミリアさん。さ、遊びに行きましょう!」
「ちょ、いつも強引に……って力強いなもうっ!」
会って早々、私の手を掴んで引っ張る彼女の力に驚きつつ、抗う暇も抗議する暇もないまま、街へと連れ出されてしまう。
一緒に出掛ける中、講義中にあった出来事を話して怒ってやろうと思っていたのに、振り回されるうちにすっかり忘れていた。
そしてその事を忘れたまま結局、その日もその日とて振り回された帰り道、変わらず元気にはしゃぐ彼女と対照的に私は疲れ切った表情を浮かべる。
「ふふふーん、今日も楽しかったですねミリアさん!」
「……そうですね。今日も今日とて疲れましたけど」
同意を求められた私がそう返すと、彼女はミリアさんは本当に体力がないですねと言いながらからからと笑った。
その返答に対して思わず私の体力がないんじゃなくて貴女が元気過ぎなだけでしょうと突っ込みそうになったけれど、そんな事をしても余計疲れるだけだとそれを呑み込んだ。
「……あ、そうでした。明日なんですけど、私、ちょっと用事があって一日潰れちゃうので大学には行けそうにないんです」
「…………はぁ、断らなくても好きにしたらいいんじゃないですか?別に私が来いと頼んでいるわけでもありませんし」
「またまた~そんなこと言って、私が会いに行かないとミリアさん寂しがるんじゃないんですか~?」
「……そんなわけないでしょう?むしろ静かに過ごせるから清々します」
あまりにもしつこいのでプイっと顔を背けて答えると、彼女は頬を膨らませる。
「む~もう本当に意地悪なんですからミリアさんは」
「……意地悪も何も私の本心です。ほら、もう暗くなりますし、早く帰りますよ」
ジト目を向けてくる彼女から目を逸らした私は半ば強引に話を終わらせ、帰路に着くように促した。
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「……やり方はともかくとして、ゆうぐれ様のストーカー染みた行動のおかげでお母様のトラウマも少しずつ和らいでいったんですのね」
「……うん、正直、やり方はアレだけど、ゆうぐれちゃんのおかげではあるかな」
「…………二人共、いちいち私を貶してからじゃないと喋れないの?素直に褒めてくれてもいいんじゃないかしら」
「いや、だから褒めてる……よ?ゆうぐれちゃんのおかげだって」
「そうですわね。きちんと褒めてますわ……よ?」
「……何故かしら、物凄く納得いかないのだけれど」




