50.お絵描き準備=彼女はその手を振り解けない。
地獄のような時間と化した講義がようやく終わり、安堵から大きなため息を吐いた私はこれ以上、彼女……白崎朝陽とは関わり合いにならないようにすべく、急いで席を立とうとする。
「――――そんなに急いでどうしたんですかミリアさん?」
そんな思惑を察してか、それとも天然か、立ち上がった私の袖を掴み、不思議そうな顔をして尋ねてくる彼女。
この時に掴んできた手を振り払ってさっさとその場を後にしていれば良かったのかもしれないが、流石にそこまで突っ撥ねる勇気は私になかった。
「えっと……その、用事があって……」
「用事……あ、もしかしてイラストを描くんですか?描くんですよね!?」
「……違います。というか、もうイラストは描いてません。私はただの小鳥遊ミリアですから」
目をキラキラと輝かせてグイグイ迫る彼女の言葉に対して私は自分でも驚くくらいの冷めた声音でそう呟く。
別に彼女を突き離そうだとか、そういう意図を込めたつもりはなかったけれど、出てきた言葉は今まで以上に冷たいものになっていた。
「…………じゃあ、ただのミリアさん。その用事は絶対に外せないものですか?」
「え?いや、別にそういうわけじゃ――――」
用事があるなんてこの場から逃げ出したいがための嘘だと言えるはずもなく、突然の問いに思わずそう答えてしまったその瞬間、彼女は私の手を取り、半ば強引に引っ張って駆け出す。
「なら今日はその用事を諦めてください!これから私とデートしましょう?」
「へ、あ、ちょ、ちょっと……!?」
勢いのままに手を引かれた私は抵抗する間もなく、そのまま教室を飛び出し、大学を後にして街の方まで連れ出されてしまった。
抵抗したところで無駄だと察した私は逃げる事を諦め、今日一日、彼女のデートとやらに付き合う事に。
どうせ家に帰ったところでやる事もできる事もない。彼女にどんな意図があるか知らないが、どのみちイラストを描けない私に用はない筈だ。
だからいずれ諦めるまでの我慢だと自分に言い聞かせて彼女の隣を大人しく歩く。
「――――ふふふーんふふーん……あ、ゲームセンターがありますよ!ゲームセンター!」
「……大声出さなくても聞こえてますから……それで?ゲームセンターがどうしたんですか」
ご機嫌な様子で鼻歌まで歌う彼女にそう問い返す。たぶん、話の流れからいってみようという事なのだろうが、友達でもない私がわざわざそれを酌む必要もない。
「もちろん、一緒に行きましょうって事ですよ!さ、早く早く!!」
「ちょ、分かりましたから。引っ張らないでくださいって」
私の意地悪なんて気にしてない彼女はまるで子供みたいにはしゃいでいる。
そんな姿を前に少しだけ良心が痛むのを感じながら、私は彼女に手を引かれ、騒がしいゲームセンターの中へと足を踏み入れた。
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講義にまで潜入した少女……まだ最強Vtuberになる前の白崎朝陽とデートをする事になった彼女の運命は……?
この先が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「若い頃の私は本当に美少女ね……ま、今も可愛いのは変わらないけれど」
「……この頃から強引だったんですのね」
「……だね。私も大概人の事は言えないけど、あの時のゆうぐれちゃんは本当にストーカー染みてたと思うよ」
「…………そこまで言わなくてもいいでしょう?オリィの時もそうだけど、私はただ貴女と友達になりたかっただけよ」
「だとしたらどれだけ距離の詰め方が下手くそなんですの貴女は……」
「……まあ、そんなゆうぐれちゃんの不器用な距離の詰め方に私もオリィちゃんも救われたのかもね」




