45.お絵描き準備=彼女は初めての案件に取り組み、浮かれて笑みを漏らす。
結局、当時の私はあの後、お風呂に入りながら考えた結果、その企業からの依頼を受ける事に決めた。
普通のイラスト依頼と違い、Vtuberのデザインとなると、片手間という訳にはいかず、そちらの仕事に掛かりきりになる。
だからその間、他の依頼は受けられなくなるし、企業からの案件となれば生半可な出来は許されない。
勉強は続けてたとはいえ、高校以来の作成だったからきちんとできるか不安だったで断ろうとも思ったけど、またとないチャンスでもあり、いつまたこんな大きな案件がくるとも限らないと考え直して受ける事に踏み切った。
「……やるからには失敗できない……まずは向こうの要望と設定を聞いて……返事をもらうまでに試しで別のデザインを動かして……あ、その前に受ける旨を伝えないと」
受けると決めてから慌ただしく動き始め、早速、準備に取り掛かる。
幸い、受けると返事をしてすぐに企業の方から連絡があり、大まかな設定とこうしてほしいという要望、配信するのはこんな子だという情報をもらった。
できる事ならその本人と会う、もしくは連絡を取って話せればよかったけれど、そういう訳にもいかないらしく、企業側とやり取りするしかなかった。
今考えればこの時点、あるいはデザインのラフができた時に多少無理を言ってでも、その子の声なり、確認なりを取れば良かったのかもしれない。
初めての企業案件だったからこういうものなんだと思って何も言えなかった。
企業の案件を受けてしばらく、私は寝食も忘れて作業に没頭した。
もちろん、両親との約束もあったから大学にはきちんと通っていたけど、講義の最中もずっと依頼の事を考えていたからその内容が頭に入っていない。
この頃は不安や忙しさで苦しかったものの、夢に向かって確かに進めているという充実感でいっぱいだった。
そしてラフ画を何枚か用意して企業に確認してもらい、OKをもらって本デザインへと進んだ私はより一層のめり込んで制作に努めた。
デザインやモデリング自体は企業からもらった期限内に余裕を持って完成させることができたのだが、時間の限り詰めてより良いものにしたいと、ぎりぎりまで待ってもらい、今の自分……当時の私にできる最大限のクオリティのものを提出した。
その甲斐もあってか、企業側から大いに喜ばれ、また機会があれば是非、頼みたいですとまで言われた。
「っ~終わったぁ……正直、不安だったけど、なんとか上手くいって良かった~……」
人生初の大きな案件を終え、安堵と疲労の入り混じった声を漏らしてベッドに横たわった私は満足感と充実感を味わいながら込み上げてくる嬉しさに思わず笑みを溢したのを今でも覚えてる。
「ふふっ……今後もまた頼みたいって……うふふ…………」
この時は一人だったから自分でどういう顔をしているか確認はできなかったけど、たぶん、人には見せられないくらい緩んでだらしない顔をしていたと思う。
だってイラストレーターとして初めての大きな案件を大成功という形で終える事ができたのだから浮かれるのも仕方ないだろう。
だからこの案件が私にとって最悪を出来事を引き起こすなんてこの時は思いもしなかった。
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初めての大きな案件を無事に終えて企業から褒められ、浮かれる彼女を待つ出来事とは……?
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「流石はノーみりんお母様……初めての案件で企業の方から高評価を勝ち取るなんて……」
「……別に流石でも何でもないよ。あの時の仕事の出来に不満はないけど、やっぱりちょっと浮かれ過ぎだったね」
「初めての案件ですもの。浮かれても仕方ないと思いますけれど……」
「ううん、ここで浮かれずにもっと慎重に事を進めれば良かったんだ……そうすれば……」
「私が言えた事ではありませんが、たらればを考えても仕方ありませんわ。どんな出来事だとしても、その過去があったから今のお母様があるのですから」
「オリィちゃん…………ありがとね」




