39.配信オン=彼女は張り切るけれど、出番を奪われる。
もうすぐ時刻は二十一時を迎えようという頃、たぶん、大抵の人が寝る準備をしつつも寛ぐ時間帯に私の活動は始まる。
「――――ふふふーん、チェック、チェック、機材や今日使うゲームは問題なしっと、あ、飲み物忘れてたから用意して……うん、今度こそ大丈夫!」
鼻歌交じりに準備を進め、確認を全てし終えて画面の前に座り、最終チェックとして発声を何度か繰り返してから息を大きく吸って吐いた。
「……開始まであと三分。漏れはないよねっと」
何度この瞬間を迎えても緊張してしまう私にとって、今の一連の動作はちょっとしたルーティンになっている気がする。
「はぁ……ふぅ……よし、始めよう――――配信スタート」
再び深呼吸をしてから気合を入れて開始ボタンを押し、私はもう一人の私……〝礼嬢オリィ〟としてみんなの前に姿を現し、今日も元気に配信を始めていく。
「――――皆様、ごきげんよう。元ブラック勤めの崖っぷち令嬢Vtuber〝礼嬢オリィ〟ですわ!」
ついこの間まで……ううん、今でも少しだけ先行き不透明で不安だけど、見てくれるみんなのおかげでどうにか活動を続けられている。
だからそんなみんなに感謝を込めて配信を続けつつ、目指すはトップVtuber……なんて言えたら格好いいのかもしれないけれど、私にはちょっと荷が重いかな?
でも、みんなが想ってくれる限り期待には応えたいから頑張る……と心の中でテンションの高いモノローグを呟きながら精一杯の笑顔を振りまいてみせる私。
ここから始まるのは限界を超えた24歳OLのお話……ではなく、みんなのおかげで〝礼嬢オリィ〟として過ごせるようになった先のお話と、私を取り巻く周りの人達との葛藤や繋がりのお話。
まず最初は私にチャンスをくれた恩人である大人気イラストレーター〝ノーみりん先生〟がそこに至るまでの軌跡を話してくれるみたいです――――――――
39.配信オンをご覧くださり、誠にありがとうございます。
皆様、お久しぶりです。この度は再び崖っぷち令嬢Vtuber〝礼嬢オリィ〟の物語に目を通してくださり、本当にありがとうございます。
再会した物語ですが、次回からは視点を変え、登場人物の一人であるイラストレーターの〝ノーみりん先生〟にスポットが当たります。
彼女がいかにして大人気イラストレーターに至ったのか、気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「皆様、お久しぶりです。崖っぷち令嬢Vtuber礼嬢オリィですわ!」
「はいはーい、久しぶりのところ悪いけど、主役はこの私、ノーみりん先生だからそこのところをよろしくね~」
「ちょ、ノーみりんお母様。まだ私が喋って――――」
「ふっふっふっ……残念だけど可愛いオリィちゃんの姿はお預けだよ!しばらくは私が独り占めするんだから!!」
「……相も変わらず人の話を聞かない方ですわね……こんなお母様ですが、次回以降もよろしくお願いいたしますわ」




