37.配信オフ=彼女は満たされ、理由を失い、そして決意する。
今後の私を変える様々な出来事が起きた初コラボ配信はその濃密さとは裏腹に何とも締まらない感じで幕を閉じた。
その原因とも言えるのが、最後の最後で羞恥に悶える私を可愛いと揶揄う白崎さんとコメント欄だ。
私が何度、止めてと言っても可愛いだの、尊いだのいうものだから最終的にもういいですと半ば強制的に配信を終わらせてしまった。
もちろん、いきなりぶち切ったわけではなく、きちんと謝罪とお礼をしてから終わりの挨拶はしたけれど、足早になってしまった事に変わりはない。
せっかくの初コラボなのだからもう少しちゃんと終わりたかったのに、こうなってしまったのは不本意だけど、白崎さんやノーみりん先生……そしてリスナーのみんなも楽しそうにしていたので、配信としては良かったのかもしれない。
「――――だあぁぁぁぁ…………大分、やらかしちゃったなぁ…………」
配信を終え、まだまだ居座る気満々だった白崎さんをマネージャーと思われる人が連れて帰った後、私はベッドに倒れ込み、手足を投げ出して仰向けになった。
初コラボ自体は上手くいったと思う。当初、予定していた内容の他にもアドリブの部分も白崎さんやノーみりん先生のおかげで大きく盛り上がる事ができた。
けど、配信の終わり……白崎さんに問われた私が全てを吐き出し、感情のままに泣いてしまった。
「……あの時はもう全部が終わっちゃったと思ったけど……まさかみんなが受け入れてくれるなんて、ね」
私の醜い部分、ちっぽけな器量の狭い部分を曝け出してしまった筈なのに……みんなの応援してくれた崖っぷち令嬢Vtuber〝礼嬢オリィ〟の正体を知ってしまったのに……それでも良い、好きだと言ってくれた。
ずっと……ずっと誰にも言えなくて……隠して……ひた隠して……限界でも我慢しないといけないってずっと思ってた……だってそうじゃないと嫌われてしまうから。
でも、そうじゃなかった。醜い私でも、ちっぽけな私でも受け入れてくれる人達がいる……その事実だけで私は救われる。
…………そっか、これでもう私がVtuberをやる理由も無くなっちゃったんだ。
受け入れ、肯定してくれるみんなのおかげで配信の理由だった承認欲求は充分と言えるほどに満たされてしまった。
元々、生活が限界を迎えるまで……死ぬまでの間で承認欲求を満たすために始めたVtuber活動だったけど、まさかその限界がくるよりも早く満足するなんて思いもしなかった。
「…………まあ、今のところ、生活に関して言えば限界どころかむしろ、余裕も見えてきそうなくらいになっちゃったけど」
続けられる現状ではあれど、目的を果たした私に続ける理由はない……満足したのならもう何の未練もなく死ぬべきなのだろう…………けど、それは受け入れてくれたみんなを否定するに等しい行為だ。
私の人生の終着としてはそれも有りだけど、みんなが応援してくれる崖っぷち令嬢Vtuber〝礼嬢オリィ〟の終着としてはありえない。
「……理由はなくても〝礼嬢オリィ〟は私だけのものじゃない。みんなに愛され、応援される偶像……もうどうしたって切り離せないもう一人の私だ。だから――――」
明るい天井、虚空に向かって手を伸ばした私はそっと目を閉じ、そのまま力尽きるように眠ってしまった。
37.配信オフをお読みくださり、ありがとうございます。
承認欲求を満たされ、Vtuberとして活動する理由を失った彼女はどんな選択をするのか……今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……承認欲求のために始めたVtuber活動が私の中でここまで大きくなるなんて思いもしませんでしたわ。これもひとえにゆうぐれ様、ノーみりんお母様、配信を見てくださるリィメンバーの皆様のおかげ……本当に感謝いたしますわ」




