36.配信中=彼女は涙を吐き出し、羞恥を耳まで染める。
みんなに背中を押されて少しだけ踏み出せた私は我慢していた事、隠していた感情、自分を好きになれない事……気付けば話すつもりのなかったことまで全部を吐露してしまった。
「――――これが私のひた隠してきた事の全てですわ。崖っぷち令嬢Vtuber〝礼嬢オリィ〟の正体がこんな卑屈で疑り深い人間だなんて幻滅したかもしれませんが…………わぷっ!?」
全てを吐き出し終えて自嘲気味な笑みを浮かべる私を突然、白崎さんがぎゅっと抱きしめてくる。
「え、あ、ゆ、ゆうぐれ様?」
「……ごめんなさい、オリィ……貴女の葛藤を知らないまま無遠慮に踏み込もうとして……それからありがとう。信じて話してくれて……ずっと一人で……よく頑張ったね」
突然の行動に戸惑い驚く中、抱きしめられた温もりと彼女の優しい声音がじんわりと沁み込み、自分でも訳が分からないくらい心の歯止めが効かなくなってしまった。
「う……あぁ…………ッあぁぁぁぁぁ――――――――!!」
今が配信中だという事も忘れて白崎さんに縋りつき、溢れるままに涙を流して声を上げる。
きっとコメント欄では心配する声や驚く声が上がっているだろうけど、感情のブレーキが壊れてしまった今の私には確認する余裕はなかった。
どれくらい経っただろう。体感では物凄く長かった気がしたけれど、たぶん、実際には十数分くらいの間、私は涙どころか鼻水まで垂れ流して泣き続け、ずっと白崎さんに抱きしめられたまま頭を撫でられ続けていた。
「――――少しは落ち着いたかしら?」
私が泣き止んだ事に気付いたらしい白崎さんが優しく微笑みながらそう尋ねてくる。
「……………………はい……そ、そのぉ……なんというか…………ごめんなさい」
泣き止み、ようやく落ち着きを取り戻した私は我に返り、配信中にも関わらず鼻水まで垂らして泣いてしまった事や白崎さんに思いっきり甘えてしまい、撫でられ続けた事を思い出して物凄い羞恥の気持ちが込み上げてきた。
いくらブレーキが効かなかったとはいっても限度があるでしょ私ぃっ!?しかもよりによって白崎さんに甘えちゃうなんて…………
きっと今の私は羞恥のあまり耳まで真っ赤に染まっている事だろう。全部を吐き出してみんなとの関係が壊れる事を恐れていたのに、これでは別の意味で配信ができないかもしれない。
「ふふ……謝らなくても大丈夫よ。元はといえば私のせいみたいだし、こんなに可愛いオリィは見れたのだから、少しくらい涙と鼻水が服についたって気にしないわ」
「ッ――――!服に関しては本当にごめんなさい!でもそれはそれとして揶揄わないでください!!」
≪オリィ嬢が泣いちゃった時は思わずもらい泣きしちゃったけど、これは尊過ぎる…………≫
≪良かったオリィ嬢……ずっと抱えていたものを吐き出せて……それはそれとしてごちそうさまです≫
≪全部を聞いた今、もっともぉっと……オリィ嬢の事が大好きになりました!≫
≪可愛い……可愛いよオリィちゃん!今度は私の胸に飛び込んできてね!!≫
≪……さっきまでシリアスだったのに欲望に忠実なノーみりん先生はある意味流石……それはそれとしてオリィ嬢が可愛いのは全面的に同意するけど≫
≪うんうん、オリィ嬢も可愛いし、それを受け止めたゆうぐれ様も美しい……≫
≪まさか我が君がここまで母性に溢れていたとは……これはとってもてぇてぇですな≫
声を上げて泣いてしまったのにも関わらず、それを咎めないみんなの温かさに感謝しつつも、不本意な方向で湧くコメント欄と鼻水垂らし泣きをニヤリと弄ってくる白崎さんに反論する私。
さっきまで感じていたどうしようという不安や暗い感情はいつの間にか心の中から消え去っていた。
36.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。
最強Vtuber〝漆黒ゆうぐれ〟……白崎朝陽に抱きしめられ、感情のままに涙を流して羞恥に悶えた彼女に現れる心境の変化とは……?
彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……先程、生涯忘れる事はないと言いましたが、これは別の意味でもこの配信を忘れられませんわね…………どうして泣きついちゃったかなぁ私」
「今、思い出してもあの時のオリィは最高に可愛かったわ。羞恥で耳まで赤くなっちゃって……」
「……いい加減そのネタで弄るのは止めてくださいな……全くもうっ!」
「いいなぁ……私もその時のオリィちゃんを生で見たかった…………」
「……ねぇママ?欲望に正直なのは良いけれど、それじゃあ言ってることが完全に厄介ファンと同じよ」
「……はぁ……ノーみりんお母様は相変わらずですわね」




