33.配信中=彼女は彼女をフォローし、自分の嫌な部分を知る。
地獄のようなゲーム対決を終え、長かったコラボ配信もいよいよ締めの場面へと差し掛かっていた。
「……いつまでへそを曲げてるんですの?今日はたまたまゆうぐれ様の調子が悪かったという事で良いじゃありませんの」
「…………そう、そうね。私はオリィに情けをかけられるほど弱いってこと……フ、フフ……これで最強なんて」
≪駄目だこりゃ。完全に心が折れていらっしゃる≫
≪いや、まあ、あれだけボコボコにされたら仕方ないんじゃ……≫
≪それも初心者のオリィ嬢にやり返されたんだからプライドというか……まあ、色々なものがボロボロになったんだろうな≫
≪ありゃりゃ、ゆうぐれちゃんの悪いところが出ちゃったか。こうなったら……ほら、オリィちゃん。どうにかフォローして!≫
卑屈になってしまった彼女をどうにかしろというノーみりん先生からの無茶ぶりに対し、私は頭を抱えながらも、やるしかないという気持ちでひとまずのフォローを試みる。
「えっと、あの、そんなに卑屈にならなくても大丈夫ですわよ。あ、ほら!最初に会った時に趣味はゲームだけどあまり上手くはないっておっしゃってたじゃありませんの。ゲームが得意じゃなくてもゆうぐれ様が最強Vtuberだという事実は変わりませんわ」
「…………オリィ」
≪……よくよく聞いたらオリィ嬢、止めを刺してないか?≫
≪……今のは暗にゲームが下手だぞって言ってるようなもんだからな≫
≪……オリィちゃんは無意識に毒を吐くし、無自覚に煽るからね≫
≪フォローに見せかけて最強に止めを刺す……オリィ嬢、逞しくなって…………≫
≪うんうん、これは我が君に新たな宿敵が現れた予感がしますね……これからはオリィ様……いえ、オリィ嬢の活躍も追っていこうと思います!≫
何故だか、黒の使徒も私を推してくれるようなコメントをしてくれたのは嬉しい……けれど、ノーみりん先生を始めとしたリィメンバー達から誤解を受けてしまったらしい。
おかしい……私はきちんとフォローしたのに……その評価は納得いかない。
そもそも私はただ彼女が自分で言っていた事になぞらえただけなのにどうして止めを刺しただの、無自覚に煽るだの言われなければならないのだろうか。
「……んんっ、なにやらコメント欄の皆様が妙な事をおっしゃっていますが、私が言いたいのはゆうぐれ様の最強たる所以というか、魅力はゲームの勝敗で決まるようなものではないという事ですわ。ですから自信を持ってくださいな」
「…………そうね、いつまでも引き摺っていたらそれこそ最強の名折れだものね。それに今回負けても次回、また勝てばいいだけの話……切り替える事にするわ」
≪俺達は本当のことを言っただけなのに……≫
≪まあ、それはそれとしてこれは次のコラボ確定って事でいいんだよな?≫
≪この配信中にそれっぽい発言は何度も聞いてるけど、リベンジって事はもう決定で良いんじゃないか?≫
≪ふっふっふ……安心しなさい皆の衆。この二人のコラボは何が何でも私が取りつけてあげるから≫
次のコラボが決まっているわけでもないのに盛り上がるコメント欄とそれを確約するノーみりん先生。
私としてはコラボ自体がありがたい事だけど、彼女は大人気Vtuber……ここでまたと言っていても、それが実現するかどうかは分からないし、発言自体がパフォーマンスの可能性だってある。
……あれだけ優しくしてもらって、ここまで楽しく一緒に配信したのにパフォーマンスかもって思っちゃうのがいかにも私だね……本当に嫌になる。
相手がだれであっても好意を疑い、裏がないかを探ってしまう自分を嫌悪しながらも、配信中だからと私はそれを隠して押し殺した。
33.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。
落ち込む最強Vtuberをフォローしつつも、彼女の優しさを疑ってしまい、後悔する彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……私は本当にどうしようもない人間です。あのブラック会社という環境にいたから……ずっとパワハラを受けていたから……そうなってしまう理由があった……だから何です……理由があったって恩人とも言える人の好意や言葉を疑うなんて――――」
「もうっオリィったら後ろ向きね……そんなの今まで環境のせいだから仕方ないでいいでしょうに……真面目というか、なんというか……それが貴女の良いところでもあるんでしょうけど」
「そうだねぇ……誰だって人に言えない秘密や気持ちはあるもんだし、完璧な人間なんていないんだからね。ま、オリィちゃんはそういうのを気にしちゃうくらい良い子って事だね」
「……本当にお二人は優しいですわね」




