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32.配信中=彼女は思いの外、勝利を重ねる。

 

 いよいよ始まったゲーム対決……結果的にいえば私の勝利に終わった。


 練習である最初の数回はもちろん、手も足も出ず、ボコボコにされたし、私が操作を覚えるまで本番を待ってもらったりもしたけど、それでもやっていくうちに慣れてきて何度目かにはいい勝負になり、彼女は次第に余裕を失ってぐぬぬと唸り始めていた。


「…………な、なかなかやるわねオリィ……まさか少し触っただけで私を追い詰めるなんて」

「え、えっと……その、お褒めいただきありがとうございます?」


≪相も変わらず我が君は弱いですね……まさか初心者のオリィ殿に追い詰められるとは≫

≪……てか、オリィ嬢が予想以上に成長してる……もしかしてゲームの才能が?≫

≪それを加味したってちょっと……数回で初心者と接戦になるなんて……ねぇ?≫

≪いや、まあ、まだゆうぐれ様がハンデで手を抜いている可能性もあるし……≫

≪それはないよ?ゆうぐれちゃんはわざと手を抜くとか器用な事はできないもん≫


 顔を引き攣らせる彼女に対し、気まずいながらもそう返すと、コメント欄が寄ってたかって止めを刺しにかかる。


「フ、フフフ……どうやら私を本気にさせたみたいね……いいわ、オリィ。全力でかかってきなさい――――」


 コメントに相当ピキリときたらしく、彼女は青筋を浮かべながら再度対決を始めるも、そこからの結果はある意味、散々なものだった。


一回目――――「ふ、ふーん、なかなかやるわね。ま、まあ、まだこれから、これから……」


二回目――――「あ、ちょ、それはずるいんじゃないかしら?やり直しよ、やり直し!」


五回目――――「っ……もう一回よ、ようやく私も手が温まってきたわ」


十回目――――「そんな……最強の私が……こんなに何度も……」


 最早、十回目を超えた辺りから目も当てられなくなり、最初は煽り気味だったコメント欄も次第に言葉に困り、彼女に同情的なものが多くなってくる。


「…………その、まだ続けますか?」


 地獄のような空気に耐えかね、早く終わってくれという願いを込めてキャラさえ忘れてそう尋ねると、彼女は俯いたまま最後にもう一回、と消え入るような声で呟いた。


「……時間的にもそろそろ締めに入らないといけませんし、本当に最後の一回ですよ?」


≪……後半、もう見るに堪えない地獄だったのにそれでも付き合ってあげるオリィ嬢、優しい≫

≪まさかここまで一度たりとも勝てなくなるなんて思わなかった……オリィ嬢、強過ぎ≫

≪……というかここまできたらゆうぐれ様が勝つには奇跡を起こさないと無理じゃないか?≫

≪……我が君、もう私にはオチが見えているのですが≫

≪オリィちゃんもゆうぐれちゃんも頑張れ~≫


 無言のまま頷いた彼女との最後の対決が始まり、そして……最初の通り、何も起こらず、ゲーム対決の結果は私の勝利で幕を閉じた。



32.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。


ゲーム対決の結果、地獄のような気まずい空気になってしまった配信をどう締めるのか、彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!


「……今でも分からないのですけど、あれは結局、私にゲームの素養があったのか……それともゆうぐれ様が弱過ぎただけなのか……一体どちらなんですの?」

「…………ノーコメントよ」

「……まあ、あんまりそんな事を気にしても仕方ないですわね。ゲームは楽しむことが一番ですもの」

「…………何故だか凄く負けた気がするのはどうしてかしらね」


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