29.配信中=彼女は彼女足り得ない事にため息を吐く。
「さて、本来の話題に話を戻して……ええと、確か私の家にゆうぐれ様が突撃してきた辺りまでは話しましたわね」
「ええ、そこから続きを話すと、私がオリィの家に行った時、ちょっとしたトラブルがあっていつもみたいに挑戦状という訳にはいかなかったのよね」
≪トラブル……?よくわかんないけど、オリィ嬢が無事なら良かった≫
≪……というか、いつもみたいにって、ゆうぐれ様は毎回、突撃して挑戦状を叩きつけてるのか≫
≪それが我が君ですから。最近は事務所に止められていましたが……今回は我慢できなかったようですね≫
≪……そもそもどういう繋がりで個人勢のオリィ嬢の住所を特定できたんだろ?≫
トラブルの部分に反応している人はいるものの、上手い具合に元上司の事をぼかして経緯を伝え、そのまま彼女はリスナー達が疑問に思っているであろう事を説明していく。
「……黒の使徒達とはまた今度、認識を改める必要がありそうね。まあ、ともかく、私がオリィの住所を知れたのはママのおかげよ。電話したら二つ返事で教えてくれたわ」
≪ママ……そう言えばオリィ嬢とゆうぐれ様のデザインはどことなく似ているような……≫
≪あ、そっか。そういえば二人のママはノーみりん先生だっけ≫
≪そうだ、コメント欄での奇行ばっかりで忘れがちだけど、ノーみりん先生は大人気イラストレーターだった≫
≪ねぇ、奇行ってどういうことかな?君の名前は覚えたからね≫
≪……ノーみりん先怖っ≫
もう何度目かになるノーみりん先生の面倒くさいムーブにリィメンバーの一人が巻き込まれたところで、コメント欄は私とゆうぐれさんの関係性に話の方向が進んでいった。
「……正直、ノーみりんお母様は個人情報の管理を徹底してもらいたいところですが、まあ、私とゆうぐれ様は姉妹みたいなものなのでそこは良しと……やっぱりちょっと許しがたいですわね」
≪ええっ!?そんなぁ……私はオリィちゃんのためを思って教えたのに…………≫
≪個人情報漏洩は流石に庇えないかな……?≫
≪ノーみりん先生にはいい薬だと思う≫
≪……ふむ、どうやらノーみりん先生は思っていたよりも残念な人みたいですね≫
私の一言で圧力をかけていたノーみりん先生が打って変わってしょんぼりしてしまい、コメント欄はそれを仕方ないという流れになり、そして黒の使徒も彼女のはっちゃけた部分を知る事になった。
「まあまあ、ママも反省しているみたいだし、大目に見てあげましょう」
「……元はといえば貴女が諸悪の根源でしょうに。どうしてあたかも自分が悪くないかのように振る舞えるんですの?」
≪それが我が君ですから……あ、これは迷惑料です――――¥3000≫
≪最強故に自分の非は認めない……これが〝漆黒ゆうぐれ〟……≫
≪……オリィ嬢もこのくらい我儘に振る舞っていいんだよ?≫
≪……まあ、もちろん今のオリィ嬢も良いけど、リィメンバーは我儘をいつでも待ってるよ≫
真似しようとしてもできそうにない最強たる彼女のスタイルに関心半分、呆れ半分の感情を抱きつつ、私は諦め混じりのため息を吐いた。
29.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。
最強Vtuberたる〝漆黒ゆうぐれ〟のスタイルに圧倒されつつも、その悪びれない態度に呆れる彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……リィメンバーの皆様からもう少し我儘になった方が良いと言われましたけれど、私としてはもう十分に我儘を通しているつもりですのに……正直、ゆうぐれ様のように振る舞うのはちょっと遠慮したいところですわ」




