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24.配信準備=彼女は彼女を知り、そして抱きしめられる。

 

 一番最初、私から見た白崎朝陽という人物の印象は強く、優しく、少しだけ怖そうな女性というものだった。


 それは部屋までやってきた元上司を追い払ってくれた事とその後のドア越しの会話に起因しているのだろうけど、それでもあの時の彼女は私にとってまさにヒーローに見えた。


 それだけに今日の彼女はその印象から遠く離れていて、最初は別人かと思ったほどだ。


 もちろん、彼女が配信で見せる姿……〝漆黒ゆうぐれ〟と実際の性格が違うのは百も承知だ。


 普段から()()()性格で過ごしていたら一瞬で身バレするだろうし、日常生活にも支障をきたすのが目に見えている。


 それもあって、その部分の違いは何とも思わなかったけど、やっぱり最初の印象とのギャップ差は大きかった。


「――――分からないんです。元上司を追い払った時の強くて少し怖い貴女……私に優しく声を掛けてくれた貴女……そして今日の距離感の近い貴女……口調、話し方も全然バラバラで今、目の前の白崎さんは何かを演じてるのか、それとも素なのか……」


 たぶん、普通ならそんなものはどっちだっていい……というか気になりさえしないだろう。


 けれど、私はどうしたってそれが気になってしまう。


 それは生来の性質というよりは今までの環境からくる他人への恐怖心……つまるところ、あのブラック会社での日々が原因だ。


 その元凶ともいえる元上司から助けてくれた彼女にそれを聞くのは少し(はばか)られるけど、知らない事にはたとえ今日みたいにスキンシップを重ねてきても、本当の意味で仲良くはなれないと思ってしまった。


 だから彼女に聞きたい事をなんでも聞いてと言われた時、真っ先にこの疑問が思い浮かんだ。


 失礼は百も承知、コラボの話が立ち消える可能性も覚悟しての問いに対して彼女は静かに目を瞑り、優しく微笑んだ。


「……そっか。ずっと悩んでたんだ……うん、ごめんね。私が紛らわしい事をしたせいで」

「いえ……白崎さんは悪くないです。ただ、私が気にし過ぎというか……その…………」

「ううん、私の配慮が足りなかった。オリィちゃんと仲良くなりたいからって、焦って距離を詰めようとし過ぎちゃった」

「どうしてそこまで…………」


 言い淀む私に白崎さんは自嘲的な笑みを浮かべて力なく首を振る。


 今の問答の中で白崎さんに落ち度は全くない筈なのにどうして謝るのか、そして何故にそこまで仲良くしたがるのか、私には何も分からなかった。


「……これは私の自己満足。ただ昔、オリィちゃんみたいに追い詰められた子を救えなかったから今度は間違えないようにって……たはは~……でも、やっぱり失敗しちゃったみたい」

「白崎さん…………」


 彼女が語らない以上、そこに込められた後悔の重さを私には推し量ることができない。


 でも、あの時、元上司の訪問に怯えていた私に救えなかったその子を重ねたからこそ、必要以上に距離を詰めようとした事は理解できた。


「……今の私が素なのかって話だったよね。うん、信じてもらえるか分からないけど、今日、オリィちゃんと一緒に過ごした中で、無理に距離を詰めようとしたこと以外、全部偽らざる本当の私だよ」

「それじゃあ、初めて会った時の白崎さんは…………」

「あれも別に偽ってたつもりはないよ……まあ、あの元上司?って人を追い払うために少し強気な雰囲気を演じたけど」


 実は内心、震えててバレないか冷や冷やしてたんだよね~と苦笑する彼女に私は返す言葉が思いつかず、押し黙ってしまう。


「……それと、これは勘違いしてほしくないから言っておくと、私がオリィちゃんとコラボしたいと思ったこと自体はその子と関係ないからね?」

「え……でも……」

「そもそも私は最初、オリィちゃんに挑戦状を叩きつけるつもりだったって言ったでしょ?元ブラック勤めだっていうのは知ってたけど、配信だと元気だし、正直、あそこまで追い詰められてるなんて思いもしなかった」


 確かにドア越しの会話で白崎さんはそんな事を言っていた気がする。言われてみれば白崎さんはコラボしようと突撃してきたからこそ私の現状を知りえた。


 つまり、私とその子を重ねたからコラボしようと思った、だと時系列が合わない。


 だから白崎さんが私……〝礼嬢オリィ〟とお仕事(コラボ)したいと思ったのは純粋な彼女の気持ちという事になる。


「…………それならどうして私なんかと――――わっ!?」


 そう口にしたその瞬間、白崎さんがすっと立ち上がり、何も言わずにいきなり私をぎゅっと抱きしめてきた。


「白崎……さん?」

「……たぶん、私が何を言ってもオリィちゃんの認識は変わらないんだとは思う。でも……でもね?私は貴女が凄いんだと知ってほしい。きっと否定するだろうけど、みんな優しいから、気を遣ってるからとかじゃなく〝礼嬢オリィ〟……ううん、君が大好きだから見にきてるんだって」


 優しく言い聞かせるような彼女の言葉に何も返す事ができないまま、私は抱きしめられた温もりに身を委ねた。



24.配信準備をお読みくださり、ありがとうございます。


誰もが誰かを演じている……それを素だと知りたがる彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!


「……この日の事はよく覚えていますわ。私にとってのヒーロー……そして今となっては憧れ、追いつきたいと思っているあの人……少々、お節介で、人との距離の詰め方がへたくそなのが玉に瑕ですけれど」


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