21.配信準備=彼女は最強Vtuberの欠点を知る。
白崎さんに無理やり連れられて買い出しにやってきた私は何故か腕を組んでくる彼女に困惑しながらも、ひとまず買い物に集中しようと陳列されている商品に目を向ける。
「……それでご飯を作るのはいいですけど、メニューは決まってるんですか?」
料理が苦手なわけじゃないけど、ブラック企業に勤めていた頃は当然ながら作っている時間なんてなく、出来合いのものか、食べない事がほとんどだった。
だからあまり凝ったものだと作れない可能性があるので事前に確認を取ったのだが、彼女は不思議そうに首を傾げ、さも当然のように何も考えてないよと答え返してくる。
「だって一緒にお買い物しながら決めた方が楽しいでしょ?事務所の子達とコラボする時もそうするんだ~」
「……そうですか。じゃあ……えっと、どうしましょう?」
正直、ほぼほぼ初対面という現状で仲良く晩御飯の買い物をできるほど私はコミュ強じゃない。メニューが決まってないなら、私としては白崎さんに任せてしまいたいところではある。
「それはもちろん一緒に決めよう?あ、そうだ。オリィちゃん、料理は得意な方?」
「ええと、人並みには……白崎さんは?」
「私もそんなに得意じゃないんだよね~……うーん…………」
「……ならカレーとかでいいんじゃないですか?それなら二人で作れますし、そこまで難しくもありませんよ」
変に凝った料理を提案されても困ると思い、そう提案すると、意外にも彼女はそれに賛同し、今晩の夕食のメニューはカレーに決定した。
材料を買い揃え、距離の近い白崎さんのせいで向けられる通行人からの奇異な視線を受けながらも無事に帰宅した私達は早速、カレー作りに取り掛かる事に。
まあ、とはいってもカレーは変なアレンジをしなければ失敗もしないし、大した手間もかからない料理……大雑把に言ってしまえば切る、炒める、煮込むの単純な作業だ。
……白崎さんがとんでもなく料理下手じゃない限りは。
まず始めに野菜の皮を剥いて切る作業、皮はピーラーを使えば誰でも剥けるし、切るのだって多少不揃いでも問題ない。
けど、まさか自信満々に包丁を握りながら皮を剥こうとして危うく指を切りかけるとは思わなかったし、終いには剥き過ぎて原形がなくなったりと散々。
炒める作業も格好をつけてフライパンを振るから中身が飛び散り、最後の煮込む工程では変な隠し味を入れようとして盛大に失敗するなんて誰が想像できるだろうか。
「確かに得意じゃないとは言ってましたけど、ここまでとは……」
変わり果てたキッチンと膝をついて項垂れる白崎さんを前に思わずそんな本音が漏れてしまう。
「…………ご、ごめんね。前に事務所の子とコラボした時はこんな事にならなかったんだけど」
本当に申し訳なさそうな顔をして謝る白崎さん。この壊滅的な料理の腕は慣れない場所のせいという訳じゃない気がする。
たぶん、そのコラボした事務所の子達が相当頑張ってフォローしたからこそ白崎さんの認識が得意じゃないで止まっているのかもしれない。
「……ひとまずここを片付けましょうか。それから後は私がやっておくので白崎さんは向こうで休んでおいてください」
「…………はい」
きっとその事務所の子達は白崎さんを傷つけまいと一生懸命フォローしたのだろう。
正直、その子達の努力を思うと少し気が引ける。
けれど、生憎、私にそこまでの気遣いはできないし、ここで変に誤魔化すのも本人のためにはならない。
だから直接とは言わないまでも、そうやって暗に告げる事で彼女へのダメージを少しだけ抑えつつ、私は残りの作業を一人で進める。
仕方ない事とはいえ、私にはそう告げた時の落ち込んだ彼女の表情から目を逸らすことしかできなかった。
21.配信準備をお読みくださり、ありがとうございます。
最強Vtuberの思わぬ欠点を前に呆然とキッチンの惨状を見つめる彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……白……ゆうぐれさんはまず基本から学んだ方が良いと思いますわ。私も得意な方ではないとはいえ、カレーくらいは問題なく作れますし……え?やっぱり隠し味は必要だから……って、ちょ、そんなに入れたら駄目ですって!隠し味が隠れてない……え?甘過ぎたから今度は辛味を……っだから量を考えてくださいってば!」




