20.配信準備=彼女はその行動力に翻弄される。
「さて、それじゃあ機材の準備も終わった事だし、親睦を深めるためにも女子会をしよっか」
「……はい?」
二人で準備を終え、自身のSNSで今日の配信をお休みする事と次回の配信でビックなゲストを迎える事を知らせたところで、不意に白崎さんがそんな事を言い出した。
「女子会だよ、女子会。あ、でも二人でも女子会って言うのかな……?」
「……いや、知りませんよ。というか、唐突に女子会って……一体何をするんですか?」
まだ短い付き合いだけど、白崎さんの思い付きから始まる行動力の凄さから抵抗するだけ無駄だと悟り、諦めてそう問い返すと、彼女は不思議そうな顔をして小首を傾げる。
「何って……え、した事ない?ほら、学生時代とか……」
「……友達はいましたけど、泊まり合うまで仲の良い子はいませんでしたから……」
別にぼっちだったわけじゃない。仲の良い友達は何人かいたし、放課後に遊んだりした記憶だってある。
でも、親友と呼べるくらい仲の良い友達はおらず、社会人になってから……あのブラック企業に勤め出してから完全に縁は切れてしまっていた。
「そ、そっか……えっと、女子会は別に何をするって決まってるわけじゃないけど、お菓子を食べながらお喋りしたり、ゲームしたり……言ってしまえば遊びの延長だよ。それを夜ふかしの特別感で楽しむって感じ」
「はあ、お喋り……」
なんとなくイメージはできるし、気心の知れた友達でやるなら楽しいんだろうとは思う。でも――――
「そそ、まあ、決まりはないけど、定番の話題とかならあるよ?言えば恋バナとか……」
「……私、学生時代から告白した事もされた事もないです……まして社会人になってからはそれどころありませんでしたし」
「あー……えーと、それはなんというか……あ、じゃあほら、好きな人は?今まで一人もいないって事はないでしょ」
「……いや、学生時代まで遡ればいますけど、配信でもないのにそれを聞きたいですか?」
たぶん、それが恋バナとして成立するのは同じ学校の友達だけだろう。誰々が好きだったと言ったところで顔も知らない相手……それで盛り上がるのはかなり難しい。
「や、でも、ほら……」
「……あと付け加えるならいくら明日の配信が夕方とはいっても、諸々の段取りや打ち合わせ、体調を整える意味でも夜ふかしはできませんよ」
詰まる彼女へ矢継ぎ早に言葉を並べ立てる。
別段、女子会自体を忌避しているわけではないけど、いくら助けてくれた相手でも、今の私には会って間もない彼女とそこまで仲良くする勇気はなかった。
「うぅ……確かに見てくれる人達の事を考えれば夜ふかしはできない……で、でも、せめて晩御飯は出前とか外食じゃなくて二人で作ろ?ね?ね?」
「ちょ、近っ、わ、分かりましたから!離れてくださいって!!」
ぐいぐいと距離感のバグっている白崎さんから顔を逸らして避難しつつ、半ば強制的ながらもしぶしぶ了承する。
できるなら作るよりも出来たものを食べたかったけど、仕方ない。
向こうから誘ってくれたとはいえ、遥か雲の上の存在である彼女とお仕事する以上、全部を嫌、嫌と私の我儘を通すわけにもいかないだろう。
「よしっ!そうと決まれば早速、買い出しにいこっ!」
「わっ!?ちょ、引っ張らないでくださいよ――――」
ハイテンションではしゃぐ彼女に振り回され、そのまま二人揃って近くのスーパーへと繰り出した。
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唐突に訪問して強引に泊まると迫る〝漆黒ゆうぐれ〟に翻弄されっぱなしの彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「……確かにコラボの件は了承はしましたけど、まさかいきなりやってきてオフコラボだからお泊りさせて、女子会しようなんて言い出すなんて普通、思わないですよ……いや、でも人気Vtuberともなるとそれくらい行動力のあったほうが……うーん……や、やっぱりない……ですわ」




