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18.配信準備=彼女はまだ自分の価値を知らない。

 

『…………そう、そっか……はぁ……良かった~……オリィちゃんに嫌われたらどうしようって緊張しちゃったよ~』


 心の底から安堵したような溜息と共にそう口にしたノーみりん先生に思わず頬を緩めながらも、少し意地悪したくなってつんっとした声音を出して見せる。


「……嫌いになるも何も、私はまだそこまで先生の事を知りませんよ」

『ええっ!?そんなぁ……私、オリィちゃんの事は実の娘みたいに思ってたのに……うぅ…………』

「……ふ、ふふ……冗談です。いつも先生に意地悪されてますからね。意趣返しです」

『ぐぬぬ…………オリィちゃんがそんな意地悪な子になっちゃって……ママ悲しい』


 見てくれるリスナーもいない中、茶番ともいえるやり取りを経てひとしきり笑った後、私は今回の本題……なりきり系最強Vtuber〝漆黒ゆうぐれ〟がもたらしたお仕事(コラボ)の話を切り出した。


「――――それで白崎さん……いえ、〝漆黒ゆうぐれ〟さんからお仕事(コラボ)の誘いを受けたんですけど」

『……やっぱりね。どうしてもオリィちゃんの住所を教えてほしいって言われた時から薄々察してだけど……本当にあの子は行動力には驚かされるね』


 予想通りといったふうにそういうノーみりん先生。その言い方をするという事は前にも似たような出来事があったのかもしれない。


「という事は今回みたいな事は初めてじゃないんですか?」

『まあね、彼女の癖というか、気になる子を見つけると直接乗り込んで売り言葉に買い言葉で吹っ掛けて、コラボしようとするんだよ。流石に最近は事務所に止められてるから鳴りを潜めてたけど』

「そう、だったんですか……あの大人気Vtuberにそんな一面が…………」


 言われてみればあの時、ドア越しにそんな事を言っていたような気がする。その後の優しい印象が強くてすっかり忘れていた。


『ま、自分の興味のあるものに貪欲で外聞を顧みないところも彼女の魅力だけどね……それが元でやらかした回数も少なくないけど』

「……あれ?でも事務所から止められてるって事はどうして私のところに」

『……事務所に関しては私の知るところじゃないけど、たぶん、ゆうぐれちゃんは止められるのを振り切ってもコラボしたくなったって事じゃないかな』


 どこか温かさを含んだ声音でそう言ったノーみりん先生はまさしく子を想う母のようだった。


「……正直なところ、ノーみりん先生の魅力的なデザインと優しいリスナーさんのおかげで少しずつ人気は出てきましたけど、私自身に特別な魅力があるとはどうしても思えません。まして大人気Vtuberの目に留まるなんて――――」

『おっと、それ以上は駄目だよ。オリィちゃん。貴女はこのノーみりんが認めた自慢の娘……それを否定するつもりかな?』


 後ろ向きな私の言葉を止め、少し怒ったように返すノーみりん先生。それは自分のためというより私のために怒っているみたいに聞こえる。


「そう言うつもりじゃ…………」

『……今のオリィちゃんを見てると、やっぱり私の判断は間違ってなかったのかもね』

「え、それはどういう――――」

『それは内緒。ともかく、ゆうぐれちゃんとのコラボ……楽しみにしてるね。それじゃ、おやすみ』


 言葉の意味を聞いても答えは返ってこず、相談以前にコラボを受ける前提のまま、ノーみりん先生との通話は打ち切られてしまった。



18.配信準備をお読みくださり、ありがとうございます。


微笑ましい会話も束の間、自分には大人気Vtuberの目に留まるような価値はないと思っている彼女の今後が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!


「……思っているのも何も本当の……いえ、これ以上はお母様やリィメンバーの皆様に失礼ですわね。私は未だに自分が凄いだなんて思えませんが、それでも見てくださっている皆様に応えられるよう、誠心誠意努力していく所存です……わ。これからもよろしくお願い致します」


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