13.配信中=彼女は初めての収益化配信に戸惑い、驚く。
なりきり系最強Vtuber〝漆黒ゆうぐれ〟……チャンネル登録者百万人超えの大人気Vtuberで企業、個人問わず全てのVtuberの憧れと言っても過言ではない存在だ。
かく言う私も彼女の配信はVtuberというものがどういうものかを勉強する時に何度も見たし、その目的以外にも普通に一視聴者として楽しんでいた。
まだぎりぎり収益化が通ったばかりの駆け出しVtuberの私からすれば雲の上の存在。
そんな人が突然やってきて〝一緒にお仕事しよう〟と誘ってきた衝撃の出来事から数時間後の現在、私は半ば放心状態のまま配信の準備を進めていた。
「……はっ!?まずい、まずい、こんな浮ついたままの状態で配信するなんてリスナー達に失礼だよね…………切り替えないと」
浮ついた心を引き締めるために両手で顔をパチンと叩き、気合を入れ直す。
ひとまず、コラボの件は配信が終わってから改めて考えよう。今は収益化が解禁されて初めての配信を頑張る……!
突然の訪問からコラボの誘いは向こうも流石に無理があるのは分かっていたようで返事はまた今度でいいと言ってくれた。
だから頭からそのことを一旦、追い出し、配信で喋る内容を固めていく。
そしてあっという間に配信を予定していた時間を迎え、私は深呼吸と共に画面へと向き合い、気持ちを切り替えて開始のボタンを押した。
「――――皆様、ごきげんよう。元ブラック勤めの崖っぷちVtuber……礼嬢オリィ…………ですわぁぁっ!?」
開口一番、いつもの挨拶から始めようとした矢先、信じられないものが目に飛び込んできた事で反射的に思わず声を上げてしまった。
≪ごきげんようオリィ嬢≫
≪ごきげんよう、どうしましたオリィ嬢?突然叫び出して≫
≪ごきげんよう~たぶん、あれじゃないか、ほら、あれ≫
≪ごきげんよう、始まったばかりだけど早速、鼓膜ないなった≫
「ご、ごめんなさいっ!だって、その、か、解禁されたばかりでこんなに…………」
私の驚いた理由。それは収益化が解禁された事で送れるようになった投げ銭……いわゆるスパチャがとめどなく送られてきたからだ。
今、正確に合計は分からないけど、たぶん、洒落にならない金額になっている気がする。
≪あーみんな解禁されるのを待ってたから≫
≪くっ……俺も送りたいのに制限が……≫
≪まあまあ、これで終わりじゃありませんから。送れる時に送りましょ≫
≪うーん、こうなったらお母さんに頼もうかな……≫
驚く私を他所に納得しつつも、盛り上がりを見せるコメント欄。
まるで競い合うように俺も、僕も、とスパチャを送ろうとするのに対し、流石にこの流れは不味いと慌てて止めにかかった。
「み、皆様っ!?そ、その、お気持ちは大変嬉しいですけどっ、あ、あんまり無理なさらないでくださいまし!わ、私なんかに――――」
≪私なんか……?≫
≪おやおや?それは聞き捨てなりませんわ≫
≪いくらオリィ嬢でもオリィ嬢を軽く見るのは許さないぜ?≫
≪謝って、ほら、オリィ嬢は可愛くて無敵のVtuberです。卑下してごめんなさいって≫
≪…………どゆこと?≫
どうやら私なんかという卑下の一言がリィメンバーに火をつけたらしく、少し怒り気味な言葉と共にコメント欄がさらに沸き立ってしまう。
「ちょ、え、わ、私が謝るんですの!?そ、え、ご、ごめんなさい……?」
≪困惑して慌てるオリィ嬢……可愛い≫
≪よしよし、怒ってごめんね?分かればいいの、分かれば≫
≪うんうん、やっぱり家の子は可愛いね――――¥10000≫
≪……なんかしれっとノーみりん先生が混ざってるんだけど≫
何がどう琴線に触れたのかリィメンバーは喜んでくれた……というか、まあ、みんな本気で怒っていたわけではなく、半分はネタ、もう半分は自分を卑下した私を叱ってくれたのかもしれない。
13.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。
これは突然の大人気Vtuberの来訪に驚きながらも、初めての収益化配信に臨み、そこで彼女がリスナー達からさらに驚かされるお話です。
思わぬスパチャの額に思わず声を上げてしまったり、素で反応してしまう彼女の事が気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!
「懐かしいですわね……初めての収益化配信でまさか私などにあそこまでスパチャをして頂けるとは思いませんでしたわ……っと、こんな事を言ったらまたリィメンバーの皆様に怒られてしまいますわね……」




