115.配信中=彼女は人の怖さに怯えながらも、どうにか配信を終える。
最早、配信の流れは完全に決した。未だに誹謗中傷を書き込む人もいるにはいるけれど、そういうコメントは逆に周りから叩かれて消えてしまうようになっていた。
《可哀そう……》
《あんな酷い嘘の記事を書かれたらもっと怒るのにそんな事まで考えていたなんて……》
《ファンになりました!これから応援します》
《……きっと配信でその事を告白するのは凄い勇気のいることですよね……素直に尊敬します》
コメント欄が私への同情的な意見で埋め尽くされ始める。
漆黒ゆうぐれとしてはこの状況を喜ぶべきなのかもしれないけど、さっきまで誹謗中傷していた人達が掌を返して別の人を叩くのは見ていてあんまり気持ちいいものじゃないし……やっぱり心境としては複雑だ。
非難される対象が漆黒ゆうぐれからそれをする側に変わっただけ……それはなんというか、人の怖い部分を見せつけられているような気がしてゾッとする。
でも、人が掌を返す事なんてそんな珍しい事でもない。
リスナー全員に清廉潔白であれ、なんて土台無理な話で、配信……Vtuberをやっている続けていく上では特にそういう場面に遭遇する事だって多い筈だ。
だから私がここで何かを思う事はあっても、それを態度や言葉に出してはいけない。
「……どうやら誤解も解けたようでなによりだけど、ここで私……いえ、事務所としての方針を発表させてもらうわね。今回の件、この記事の大元はもちろん、嘘の情報を提供した誰か……そして度を越した誹謗中傷をした人達へ法的処置も視野に入れた対応をさせてもらうわ。まあ、私が直接何かをするって訳ではないのだけれど、一応、ね?」
《ま、まあ、当然の対応だな……》
《事務所からすれば今回の騒動で被害を被ったわけだしね》
《……下手すれば自社の大人気Vtuberを潰されてたかもしれないし、まあ、妥当な判断か》
《……というか、少なからず酷い言葉を書いちゃったし、大丈夫かな》
念には念を、炎上騒動へ終止符を打つべく、止めと言わんばかりに釘を刺した私の言葉にコメント欄はどこか動揺を滲ませながらも、賛同する。
まあ、ここで賛同しなければ誹謗中傷をしていた自分達にも飛び火するかもと思えばその反応は当然かもしれないけど。
「――――さて、大方、事情の説明し終えたし、これからの方針も話したからそろそろこの配信を終わらせてもらおうかしら。一応、騒動が落ち着くまでもう少し活動は控えめになるけれど、次回の配信はそこまで期間を開けるつもりはないから、見に来てくれると嬉しいわ……それじゃあ、漆黒の夜を待つ夕暮れにお会いしましょう。おつぐれ」
コメント欄の反応を待たずにそう言い切った私はスタッフさんに目配せをして配信を終了させてもらうのだった。
115.配信中をご覧くださり、誠にありがとうございます。
コメント欄の掌返しに恐怖しながらも、配信を終えた彼女の行く末は……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、ブックマークと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「本当っにお疲れ様ですわゆうぐれ様!完っ璧な配信でしたわよ!」
「あ、ありがとう……正直、そんな完璧と言えるほど上手くできた自信はないのだけど……」
「いやいや、自信持っていいよ。まるで視聴者をぶっ飛ばすような勢いの配信は見ててスカッとしたし……」
「……褒めているのかしらそれ?」
「ま、まあ、細かい事は気にしなくていいじゃないですの。それよりほら、お祝いしましょうお祝い!」
「あ、だったらパーティーしようよ。お金は全部、私が持つからさ」
「流っ石大人気イラストレーター、太っ腹ですわね」
「……何か凄い勢いで誤魔化された気がするのは気のせいかしら」




