113.配信中=彼女は背中を押され、一世一代の大嘘を告白する。
ここが正念場、漆黒ゆうぐれのこれからが懸かった大一番、ここで失敗すれば全部が終わる運命の分岐点。
緊張が限界を超えて高まり、胃が痙攣して中身が喉の奥から込み上げてきそうになるのをどうにか呑み込んだ私は不遜な態度を崩さずに小さく息を吸い込んで口を開く。
「…………そうね。それに関しては裏切っていたと言われても仕方ないと思うわ……その記事に書いてある事が本当だったらの話だけれど」
《本当だったら?何、今更、これは嘘だったとでも?》
《ハッ、苦しい言い訳にしか聞こえないけど?》
《もういいから事実を認めて謝ったら?ま、無駄だろうけど》
《ほら、早く謝れよ。ほらほらほら》
やはりこの記事に関しては誰も私の言葉に耳を傾けない。
ただただ非難し、ひたすらに謝る事を強要してくるだけ……たぶん、この人達にとっては真実なんてどうでもいいのだろう。
けれど、今回に限ってはそれでいい。
それでこそオリィちゃんの考えた作戦が効果を発揮するのだから。
「……どうにも聞く耳を持たないようね……なら教えてあげるわ。いい?私が男漁りをしているなんてある筈がないのよ。だって私が好きなのは可愛い女の子だけだもの」
《…………は?》
《…………え?》
《…………何?》
《…………どゆこと?》
私の宣言……予想外のカミングアウトに対して困惑で染まるコメント欄。
そして配信の外ではノーみりん先生がお腹を抱えて笑いながら私の方へサムズアップをしているのが見えた。
……ふふ、人の緊張も知らないで本当にあの人は……でも、おかげで気が楽になったかも。
そんなノーみりん先生の様子に少しだけ緊張が解けるのを感じつつ、オリィちゃんの方にも視線を向けると、彼女は勝気な笑みを浮かべながらそのまま勢いよくやっちゃえ!と言わんばかりにこちらへ拳を突き出している。
「……理解できないようならもう一度、分かりやすく言ってあげるわ。私は男の人よりも女の人が好きなの。それもlikeじゃなくてloveの方の、ね?」
《はぁ……!?》
《ええ!?》
《ちょ、は、ええ!?》
《ま、まさかのカミングアウト……これって結構大きな記事になるんじゃ……》
ノーみりん先生とオリィちゃんに背中を押された私はもう止まらない。
私は呆気に取られるコメント欄に向かってそう言い放ち、少しだけ口の端を吊り上げた。
113.配信中をご覧くださり、誠にありがとうございます。
覚悟と共に大嘘をぶちかました彼女にコメント欄の反応は……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、ブックマークと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「ふ、ふふふ……最っ高っですわゆうぐれ様!あのコメント欄の反応ときたら……本っ当に最高ですわ〜!」
「お、おお……オリィちゃんのテンションがかつてない程に上がってる……いや、まあ、気持ちは分かるけどね」
「……仕方のない事とはいえ、あんな大嘘を吐くのは少し心苦しかったわね」
「大嘘ねぇ……でもあれって本当に嘘なのかな?」
「それはどういう意味かしら?」
「いやぁ……ゆうぐれちゃんって時々、ガチっぽいし…をねぇ?」
「え……ゆうぐれ様って……ちょっと近付かないでくれます?」
「……ちょ、オリィ!?本気にしないでくれるかしら!?」




