112.配信中=彼女は覚悟を胸にそのスキャンダルと向き合う。
『――――正直、これは上手くいく保証はないですし、おそらく誹謗中傷で溢れるコメント欄とまともに向き合う必要があるので、白崎さんの精神的負担も大きい……でも、上手くいけば最強Vtuber〝漆黒ゆうぐれ〟の完全復活も見えてきます』
あの作戦を提案した際、オリィちゃんはそう言っていた。
きっと優しいオリィちゃんの事だから私を心配してくれていたのだろう。
今、現在、オリィちゃんの危惧した通りの状況でそんな事を考えながらも、私は自分を奮い立たせて前を向く。
「……騙したなんて人聞きが悪いわね。裏と表で性格が違うなんてよくある事でしょう?Vtuberをやっていく上で全部が全部、素の自分で臨む人の方が稀……それを騙した、裏切りというのなら、貴方達はその全てを非難するのかしら?」
《そ、それは……》
《そんなのは詭弁だ!裏切りは裏切りだろ!》
《いや、でもそう言われると確かに……》
《……そりゃいつもキャラを演じてたら疲れるし、それを騙したっていうのは違うかも》
私の問いかけに誹謗中傷で溢れかえっていたコメント欄が僅かに怯む。
たぶん、雰囲気で加担していた人達が少し冷静になった結果だと思うけど、それでも理論を無視してコメントを書き殴る輩を黙らせるまでには至らない。
……ここまではオリィちゃん達との話し合いで出た想定内、問題はここから――――
悪い事はしていないのだから堂々とした態度で臨む……あの時、オリィちゃんが最初に言った案だけど、思っていた以上に効果はあった。
しかし、オリィちゃんも提言していた通り、それはあくまでキャラを演じている、騙しているという記事だけに焦点を当てた場合の話。
おそらく、この記事では私を叩くには弱いと判断した人達は批判のネタを切り替えてくる。
そしてそれに対して私はまともな反論できないという未来がすでに目に見えていた。
《キャラが違うのは確かに裏切った事にはならないかもしれないが、男漁りの方はどう弁明する気だ?》
《そうだ!そっちは言い逃れできないぞ!》
《これも誰だってしているなんて言おうものなら色んな方面を敵に回すぞ》
《結局どう言い繕ってもお前はファンを裏切っているんだよ!》
やはりというべきか、コメント欄の流れは私が裏で男をとっかえひっかえしているという根も葉もないスキャンダルを責め立てるものへと変わっていく。
この問題に関してはいくら嘘だろうと、何か言えば言うほどに言い訳がましく聞こえて自分の首を絞める事になってしまう。
でも、ううん、だからこそ、この問題を解消する事ができれば今回の炎上騒動は収束していくはずだ。
112.配信中をご覧くださり、誠にありがとうございます。
とうとう触れられた嘘のスキャンダルと向き合う彼女はどう切り抜けるのか……?
今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、ブックマークと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「……あれだけ堂々と開き直っても様になるのは漆黒ゆうぐれのキャラクターあっての事ですわね」
「だねぇ……少なくとも私じゃ真似できないや」
「……別にそんな大仰なものじゃないわよ。オリィならオリィの、ノーみりんママならノーみりんママのやり方でどうにか解決していたと思うわ」
「うーん……どうでしょうか、正直、そんなやり方なんて思いつきませんわよ」
「うんうん、私も思いつかない〜」
「……オリィはともかくノーみりんママは同じような騒動に巻き込まれてもあっけらかんとしてそうね」
「……それは同感ですわ」




