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10.配信中=彼女はお母様の禁句に触れてしまう。

 

「――――という感じでやり取りが始まり、実際に会う事になるのですが……まあ、電話口のやり取りから分かると思いますけど、ノーみりんお母様は中々に変わったお方でしたの」


≪も~そんなに褒めても何も出ないよ?≫

≪あれは褒めてた……のか?≫

≪ノーみりん先生も強烈なキャラしてるなぁ……≫


 どこにも褒める要素はなかったはずなのに照れたような反応をコメントするノーみりん先生にざわつくリスナー達。


 コメント欄が盛り上がるのは大いに結構だけど、私の配信がノーみりん先生のインパクトに呑まれている気がしてどこか釈然としなかった。


≪ほらほら、私の方ばっか構ってるからオリィちゃんが拗ねちゃったよ?リィメンバーのみんなで慰めないと≫


「なッ……別に私は拗ねてなんて――――」


 分身(アバター)越しにどうやって表情を読み取ったのか、ノーみりん先生の核心を突く一文に思わず否定の言葉を口にしたせいで、より信憑性が増してしまう事になり、コメント欄が激しく動き始める。


≪拗ねるオリィ嬢も可愛い!≫

≪ごめんねオリィ嬢。でも大丈夫!俺達の一番はオリィ嬢だから≫

≪それもこれもノーみりん先生がはっちゃけたのが悪い!ほら謝って!!≫

≪ええっ!!まさかの私が悪者扱い!?≫


「ちょ、皆様落ち着いてくださいまし……私は本当に拗ねてなんかいませんから、ね?」


 目で追うのが困難な速度で流れるコメント欄を前にどう切り返したらいいか分からず、ひとまずリスナー達を落ち着けようと試みるも、失敗。


 むしろその一言で本当は拗ねているけれど、必死にそれを誤魔化しているというキャラ付けがされたらしく、余計にリスナー達は盛り上がってしまった。


≪よよよ……オリィちゃんのせいで悪者扱いされてしまったよー……これは責任を取ってもらわないと≫


「せ、責任!?そ、そんなこと言われましても私は……というか、そもそも発端はノーみりんお母様じゃ…………」


≪おおっと、そろそろ締め切り催促の電話が掛かってくる頃だ。それじゃ私はこの辺で失礼するよ。ごきげんようーおつオリィ!≫

≪あ、逃げた≫

≪逃げましたね≫

≪逃げるなー!≫


 場を荒らせるだけ荒らして去っていったノーみりん先生に呆れつつも、盛り上がったならいいかと気を取り直し、咳払いをしてから続きに戻ろうとする。


「…………まあ、お母様の事はひとまず置いておきましょう。それよりも続きを……と、思いましたが、少し喋り過ぎてしまいましたね。今日のところはこの辺りにして、続きはまた次回の配信という事で」


≪えーもうそんな時間?≫

≪言われてみれば……楽しくてあっという間だった≫

≪ノーみりん先生のキャラも濃かったし、オリィ嬢も可愛かったしで最高の配信でした≫


 まだ続けようと思えば続けられるかもしれないけど、やっぱり平日の長時間配信は視聴者にとって優しくないし、この辺が潮時だろう。


「それでは皆様、次回の配信まで、ごきげんよう」


≪ごきげんよう≫

≪ごきげんよう~≫

≪ごきげんよう~おつオリィ~≫

≪おつオリィ~≫


 締めの挨拶と共にエンディングの画面を呼び出してからマイクを切り、配信を終了する。


 ちなみにここでマイクを切り忘れる事があるので念入りに確認してから席を立ち、ベッドに倒れ込んだ。


「…………今日も無事に配信できて良かった……あ、ノーみりん先生から着信が入ってる」


 何だろうと思って折り返し電話をかけると、ワンコールもしない内にノーみりん先生が出る。


『もしもし、オリィちゃん?配信お疲れ~』

「お疲れ様です。配信、見にきてくれてありがとうございました」


 互いに社交辞令的な言葉を交わしてから本題……電話してきた要件をノーみりん先生に尋ねた。


『んーと、まあ、何か特別な用事があったわけじゃないんだけど、なんとなく電話したくなって』

「…………何か面倒くさい彼女みたいですよ、先生」


 依頼を通して知り合っただけで、さほど深い仲でもないけれど、先生のキャラも相まって思わずそんな軽口を叩いてしまう。


『ふふ、オリィちゃんみたいに可愛い子の彼女にならなってあげてもいいよ?』

「はいはい、ありがとうございます。それで?用がないなら切りますよ」


 冗談交じりの言葉を流して返すと、先生は少し慌てたように待ったをかける。


『ちょ、ちょっと待ってって。確かになんとなくとは言ったけど、そんなにすぐすぐ切らなくてもいいでしょ?』

「……冗談ですよ。そんなに長時間は無理ですけど、少しくらいなら付き合います」


 きっと今の私は少しだけ気が昂っているのだろう。


 なにせ、登録者増加による収益化に、リスナー達の温かいコメントとノーみりん先生が来てくれたこと……先行き不透明でずっと不安だらけだった私の人生にいくつもの光明が差し込んだのだから。


『……そういえば、今更だけど、お母様って呼んでくれるんじゃないの?オリィちゃん』

「……あれは配信中だけですよ。崖っぷち令嬢Vtuber、礼嬢オリィとしてはお母様ですけど、私個人にとっては先生ですからね」

『ぶーオリィちゃんはオリィちゃんなのに。変なの』


 電話越しでも不満そうに頬を膨らませているのが分かるような物言いをするノーみりん先生に苦笑を返しつつ、私はつい思った事をそのまま口にしてしまう。


「流石に先生くらいの年齢でそんな子供みたいな――――」

『……オリィちゃん。次、年齢の話をしたら怒っちゃうゾ?』

「…………ごめんなさい」


 さっきまでと口調こそ変わらないが、その声音は驚くほど低く、有無を言わさない圧力を孕んでおり、反射的に謝罪を口にする。


『……分かればいいんだよ、分かれば。私の方こそごめんね。怒っちゃって』


 すぐに声のトーンが戻った事にホッとしつつも、もう二度とノーみりん先生の前で年齢の話をしないと心に決めたのだった。


 その後、配信についての話をしながら十数分経った辺りで話題が途切れたため、ノーみりん先生との通話を終えた私はベッドに横たわったまま、いつの間にか眠ってしまった。



10.配信中をお読みくださり、ありがとうございます。


これは〝礼嬢オリィ〟のママ……ノーみりん先生とのファーストコンタクトを話した彼女がリィメンバー達と楽しいやり取りを繰り広げるお話です。


ノーみりん先生とのやりとりでさらに人気を得た彼女がどうなるのか、気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!


「ノーみりんお母様とのやりとりは配信を抜きにしても楽しいと思えますわ……まあ、正直、良い歳をしてあのキャラはどうかと今も思っていますけど……」

「――――んー?今、何か言ったかな~オリィちゃん」

「っお、お母様!?い、いえ、な、何も言ってません……ええ、何も言ってません…………本当、恐ろしい……ですわ」


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