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9.配信準備=彼女は光明を見つけ、正直に答える。

 

 気分転換にコーヒーを淹れてから、休憩がてらにまだ見た事のないVtuberの配信を探していると、不意に一人のキャラクターが目に留まった。


「この子……凄い面白い…………」


 映し出されているのは配信を始めてまだ間もない個人のVtuber。視聴者は少ないが、トーク力は悪くないし、なによりそのキャラクター性が際立っているように見える。


「あれ?このデザイン……どこかで…………」


 個人勢とは思えない程、洗練されたデザインに既視感を覚えた私は記憶を思い返してその元を探し、ある答えに行き着いた。


「そっか、思い出した。この子のデザインは有名な企業のVtuberと似てるんだ……ならもしかして…………」


 急いで配信の概要欄からデザインを担当した絵師の名前を見て検索し、その有名Vtuberと同じである事を確認する。


「……人気イラストレーターのノーみりん先生がどうして無名の個人Vtuberのデザインを担当してるんだろう?まさか現実で知り合いって事もないだろうし……何か伝手があったとか」


 仕事を選ぶ、ではないけど、今、私が頭を悩ませているように有名なイラストレータ―は自身の技量、知名度に応じたものを受けるのが普通のため、個人勢である彼女がデザインを依頼できたのがどうしても腑に落ちなかった。


「……ひとまずこの子の配信を全部見てみよう。気付いた人が言及してるかもしれないし」


 その個人Vtuberの配信アーカイブを全て見返し、デザインについて言及しているものがないかと探していると、意外にもそれはすぐに見つかる。


『はい!このデザイン素敵ですよね!!何を隠そう……私のママはあのノーみりん先生なんですよ!!』


 初配信、それもかなり序盤の方でリスナーに尋ねられたその子が物凄く嬉しそうに答えており、そのまま引き受けてくれた経緯についても口にしていた。


『私みたいに個人で何の伝手もない子があの有名なイラストレーターのノーみりん先生にデザインを担当してもらえたのは凄く幸運ですよね!!……ホント、ダメもとで依頼してみて良かった…………』


 肝心の理由までは聞けなかったけど、私の欲しかった情報は得る事ができた。


 個人勢この子も私と同じく、何の伝手もなかったこと。


 ノーみりん先生がそのダメもとの依頼を引き受けたこと。


 ひとまず、この二つさえ分かれば十分だ。たとえ可能性が低くても、ノーみりん先生なら依頼を受けてくれるかもしれない……さっきまでの八方塞がりの状況よりはずっと良い。


「……よし、そうと決まれば早速、ノーみりん先生にコンタクトを取ろう。まずは先生のSNSから仕事依頼受付の連絡先を探して――――」


 手早く準備を進め、先生に送る依頼文書の内容を考える。


 ここで下手な文章を送れば先生に読まれさえしないかもしれないため、簡潔で読みやすく、目に留まりやすいように、と考えるも、そんな都合の良く思いつくわけもなかった。


「…………こうなったら全部正直に書こう。どのみち洒落た文章なんて作れそうにないし、なにより、私の分身ともいえるキャラクターのデザインを依頼するのにそこを伝えない訳にはいかない」


 依頼した経緯、Vtuberをやろうと思ったきっかけ、ここまでに至る全てをまとめ、ノーみりん先生の宛先に送る。


 後は奇跡的に返信がくることを祈るだけだ。


 先生宛に依頼を送って二日、何の音沙汰もなく、半ば諦めかけていたその時、私のSNSに返信が来ている事に気付いた。


「っノーみりん先生からの返信……!内容は…………え?」


 少し興奮気味に返信を開いて目を通すも、その内容に思わず困惑の表情を浮かべてしまう。


「……依頼の可否について何も書いてない。それにこれは……電話番号?」


 返信の中身はただ一文、こう書いてあった。


〝君は何を求めるの?〟と。


 普通に考えれば依頼をしているのだからほしいのはノーみりん先生のデザインなのだが、そんな分りきっている事をここで聞いてくる筈もない。


 ならこの問いの意味はきっと――――


 目を瞑り、大きく深呼吸をしてから記載されている番号をスマホに入力し、耳に当てる。


「……もしもし」

『――――問いの答えは?』


 電話での定型文を無視して返ってきたのは答え以外を許さない圧力の込もった言葉だ。


 声の感じからして電話口の相手が女性である事は分かったが、ここで私が答えなければこのまま切られてしまうだろう。


「…………私が求めるのは承認欲求です。私が生きていたという証を……認めて、誰かに覚えていてほしい。それが答えですよ……ノーみりん先生」


 確証はないけど、そんな気がして答えと共にそう切り返すと電話口の相手が耐え切れなくなったかのように吹き出した。


「…………えっと、先生?」

『――――ふふっ……ごめんごめん。うん、いいね。合格だよ、君』


 困惑したままの私を他所に電話口の相手は一人納得し、そう返してくる。正直、返信から今のやり取りを含めて意味が分からなかったけど、これが私とノーみりん先生の出会いだった。



9.配信準備をお読みくださり、ありがとうございます。


これは迷走していた彼女が突破の光明を見つけ、一か八かそれに賭けるお話です。


キャラデザ……Vtuberとして成功するかどうかの重大な一因。果たして彼女はその光明を掴めるのか……気になる、推せるという方はチャンネル登録……もとい、ブックマークの方をよろしくお願いします……それでは彼女から一言!


「……あの個人勢の子を見つけられたのは本当に運が良かったと思います。なにせ、このきっかけがなければお母様に辿り着けなかったんですから……実は今でもこの子の配信を時々、追っているのは内緒……ですわ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ダメもとでノーみりん先生にコンタクトを取る行動から始まったのですね(∩´∀`) その主人公の行動力に脱帽です('◇')ゞ [気になる点] いきなり問い掛けられる主人公に対し、試すような言い…
2023/11/24 01:37 退会済み
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