第2話
校内に戻った彰子は、美香の説明を頼りにオカサーの部屋を探した。
「――どこだろうな~ 外もだいぶ暗くなってきちゃったし。だけど今日は美香がいるから大丈夫か」
あたりをキョロキョロしながらそんなことを考えていた。
そして、ようやくそれと思しき部屋を見つけた。
古びたドアが妙に不気味に見えてしまう。
締め切られたドアに近づくと、中から数人の話し声が聞こえる。
恐る恐るノックしてみる。すると勢いよくドアが開き。
「ちょっと木田さん遅かったじゃ…… あれ??」
「あの~失礼します。 私…… あの~」
中から慌てた様子で部員が飛び出してきた。彰子はさながら幽霊と勘違いしたかと疑うほど、瞬間的に体が硬直してしまった。
「あなた誰?」
「はい。木田美香の友人で、竹下といいます」
「友人て…… 木田さんはどうしたの?」
「はい。美香からこの手紙を預かってきました」
「手紙?」
「これです」
彰子は手紙を手渡した。用事を終えたので、すぐに引き返そうとした。
「では私はこれで……」
ガチガチに緊張した声でそう言うと、踵を返した。
しかし呼び止められてしまった。
「ちょっと待ってよ。木田さんは何で来ないの? あなた何か聞いていないの?」
「そ、それはその手紙の中に書いてあるそうです」
「手紙の中って……」
彰子は心の中で、早く解放してくれと強く願っていた。
手紙を受け取った部員は部屋の中に向かって大きな声を出した。
「アサギさ~ん! これ木田さんからの手紙らしいです!」
「手紙!?」
部屋の奥からアサギと呼ばれた人が姿を現した。そして彰子と目が合った。
女性らしいたたずまいではあるが、勝気で男勝りといった印象。
そう彰子の目には映った。
「あなたは?」
「木田美香の友人です」
「そう」
彰子はペコリと頭を下げた。
アサギは手紙を受け取ると、彰子に対し言った。
「私サークル長をやっている者だけど、中に入って話聞かせてくれない?」
「いいえ私は結構です!」
中に入るなどとんでもない。
それより一刻も早く逃げ出したい。それだけであった。
アサギは手紙を広げ、スラスラとその内容に目を通す。
次第に表情が険しくなっていった。
「ちょっとこれどういうこと!? 木田さんがサークル辞めるって!」
アサギの一言に部員全員が驚いた様子で集まってきた。
サークル長のアサギ。始めに部室から顔を出したルカ。もう一人はルミであった。
3人とも顔を寄せ合い、手紙の内容を目で追っていた。
まずい展開である。彰子は後悔した。手紙を読まれる前にこの場からいなくなるべきだったと。
一通り目を通したアサギは彰子に聞いた。
「ねえあなた! この手紙を受け取ったっていうことは木田さんのいる場所知っているんでしょ!?」
「え? は、はい……」
いいえ知りませんと嘘をつく勇気はなかった。
「すぐその場所に案内して!」
これは大事になったと彰子は思った。
やむをえずオカサーの3人を連れ、美香の待つ駐輪所に向かった。
3人の表情は真剣そのものだ。
美香という存在の重要さが伝わってくる。
ややこしいことになってしまったが、もう後戻りはできない。
それに美香も手紙だけでなく、しっかり会って話す必要があるのではないかとも思った。
オカサーの3人はたえず個々に美香の名を呼んでいた。
「木田さ~ん!」
「木田美香~! どこ~~!!?」
ようやく駐輪所に到着した。
彰子の自転車は先ほどと同じ場所に置かれていた。
しかし美香の姿はなかった……
「木田さんは何処にいるの!?」
「ここで待ち合わせたのですが……」
「ここで!?」
3人は再び美香の名を呼びながら、あたりを探しまわった。
彰子は考えた。
「――おかしいな。もしかしたら先に帰っちゃったのかな…… でも美香は約束を破る子じゃないし……」
自転車のサドルをさわってみると、まだ温かかった。
「――つい今までここに座っていたようね。でも遠くでサークル仲間の声が聞こえたから逃げ出したって感じかしら」
彰子はそう推測した。
まだ近くを探せば見つかる可能性はあるとは思ったが、そこまでする気持ちはなかった。
そしてサークル長のアサギに言った。
「どうやら先に帰っちゃったみたいです」
その言葉にアサギは、額に青筋を立てて声を荒げた。
「帰っちゃったじゃ澄まされないのよ! 今日は大会本部に、決勝大会の正式メンバーを申請する日なの! あの子がいなくなったらどうなると思うの!? メンバーが足りなければ決勝大会に出られないのよ!」
なんで私が怒られるのか…… 彰子は疑問に思いながら話を聞いていた。
アサギ達は諦めるどころか、より一層声を張り上げ美香を探した。
この様子では彰子もすんなり帰してもらえそうにない……
そう思った彰子はある決断をした。
「あの~みなさん! 私の話を聞いてもらえますか!?」
「なあに話って?」
3人が寄ってきた。
「私さっきまで美香とここで話をしていました。美香は本当に今度の決勝大会に出る自信がないみたいで、そのことでずっと悩んでいたようなんです。あの子と私は高校の時から一緒なのでよく分かるのですが、けっこう臆病なところあるし、こういうオカルトだとかお化け屋敷みたいなものは苦手だと思うんです。今後は私と一緒の読書サークルに入りたいとも言っていました。なので、許してあげて下さい」
それに対しアサギが。
「じゃあ私達の今までの苦労はどうなるっていうの? 苦労して予選を闘ってきたし、今では大学を挙げて応援するまでになっているのよ。それを全てなかったことにしろって言うの!?」
「そうは言いませんが、美香の気持ちも分かってもらいたいんです」
彰子は美香の気持ちを説明した。その説得にアサギの口から驚く一言が。
「分かったわ……」
「え?? 本当ですか?」
彰子は驚いた。こうも簡単に? しかし裏が隠されていた。
「木田さんは諦めるわ。その代わり…… あなたが出てちょうだい!」
「え?? それってどういうことですか?」
「どういうことって、簡単よ。木田美香さんの代わりに、あなたが私達のチームに入って決勝大会を戦うってことよ」
その言葉に彰子は頭が真っ白になった。
次回 15日予定




