屋根裏のおふだ
第四回なろうラジオ大賞参加作品第十九弾!
目が覚めるとそこは……小さい頃に何度か入り込んだ事がある、僕の家の屋根裏だった。今はあまり出入りせず掃除もしないから埃っぽい場所だ。
しかも不気味な事に、なぜか大量の……『異界防除』と達筆な字で書かれた御札が貼られた屋根裏だ。
驚き、すぐに上半身を起こす。
すると次に、ベッドが……わざわざ誰かが、僕を寝かせるためだけに運び込んだベッドが目に入る。僕はそんな屋根裏に置いてあったベッドの上で、今まで眠っていたようだ。
でもなぜだ。
なぜこんな不気味な屋根裏に閉じ込められなくてはならない?
思い出そうにも、閉じ込められる前の事がよく思い出せない。僕の両親が、僕を見て何か言ってた記憶はある……まさか両親が閉じ込めたのか?
とにかく屋根裏を脱出するべく出入口を探す。
するとすぐに見つかった。すぐに開けようとするが取っ手がない!? どうやら屋根裏に僕を閉じ込めた誰かが取ったようだ。これでは外に出られない。
――……出て……。
するとその時だった。
聞いた事のない誰かの声がした。
「だ、誰だ!?」
幻覚かもしれない。
孤独によって精神が狂ったのかもしれない。
でも返事をせずにはいられない。
――……そこから……出て……。
なぜか返事をしなければいけない気持ちになったのだ。
と同時に、何をしてでもこの屋根裏から脱出しなければならない気持ちにも。
「うおおお!」
僕は屋根裏にあった物でドアを壊そうとする。
何度も何度もぶつける。少しずつドアにヒビが入り始める。
「外に出てはダメ!」
僕の行動に母が気付く。
けど構うもんか。僕を閉じ込めた容疑者の言う事なんか!
「その部屋で今日が終わるまでジッとしてなさい! でないと――」
しかし母の言葉は最後まで聞けなかった。
その瞬間にドアが壊れ。
そして同時に僕は……見知らぬ場所に転移してたのだから。
「おおっ! 手こずったがなんとか勇者召喚に成功したぞ!」
僕の目の前に、偉そうな身なりの連中がいた。
そしてその衝撃の出来事のせいか僕は……ようやく両親が何を言っていたのかを思い出した。
『俺の一族は特殊でな。十五歳の誕生日に必ず神隠しに遭うんだ』
『お父さんの親戚の中にはね、この世界に帰れなかった人もいるの』
『だからお前には、なんとしてでも結界を張った屋根裏から出ないでほしい。仮に如何なる、結界をすり抜けた干渉があろうとも』
ああ、僕はなんて事を。
干渉され記憶を奪われ……生き残れるか分からない異世界に召喚されるなんて。
「いやぁ、今回の召喚はうまくいきましたなぁ」
「それもこれも召喚士の日進月歩のおかげですなぁ」
「これでまた我々は労せずして、他国の土地を手に入れられますなぁ」
「異世界召喚には感謝感謝ですなぁ」
先々代の時、異世界召喚術者が召喚対象の周囲の事象を操作して結界を破壊せんとした事がありましたから、両親は親族一同と共に外から主人公を護衛しなければならなかったという裏設定が一応あります。