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第四十二話 焦り

 テオドールは部屋に残っていた木彫りの人形を手に取る。


(魔力を使ったデコイか……)


 テオドールが森でやったことをやり返されたのだ。

 更に部屋の床に細かな血が落ちていた。手に触れて確認してみるが、乾いていない。新しい血だ。誰かが負傷した可能性がある。


 すぐさま雷霆結界を停止し、魔力感知の距離を拡げる。500マトルから1キロマトル。


(いない……!)


 焦燥感が生じる。だが、魔術による感情コントロールにより、共感性を排し、合理性を強めた。リュカたちを失う恐怖さえ無ければ、メンタルの混乱は少ない。


(この範囲にいないということは洗脳によって連れ去られたわけではない)


 魔術による物体の瞬間転移は不可能とされていた。


(だが、物理的に運んだとも思えない。少なくとも四人全員を一度に拉致するのは不可能だし、それならデコイを使っても俺にバレてる……)


 一瞬でいなくなったのだ。


(なんらかの特殊天慶か……)


 ゲートのような瞬間転移で別の場所に移動させられたと考えるべきだろう。最悪、別階層に連れていかれた可能性がある。その場合、全員死亡の可能性があった。

 怒りと焦りに思考が乱れかけたので、魔術を重ね掛けし、メンタルを強引にコントロールする。


(どう探す……?)


 時間は限られている。効率的かつ迅速性が求められている状況だ。

 テオドールの魔力感知では最大で1キロマトル。限界を突破しても二倍の2キロマトルを瞬間的に調査可能というレベルだろう。ただし、その場合、ほぼ全ての魔力を使ってしまうため、後の移動や戦闘に支障が生じる。


(ドーム型に広げる場合は全ての空間に自分の魔力を走査させるわけだ。だから、効率が悪い)


 調査したい空間全てに自分の魔力を拡げるから、魔力感知はコストが悪いのだ。テオドールの場合、強引に空間の魔力を支配下に置き、自分の魔力に疑似変換させることで、デタラメな距離を調査できる。

 それをしても2キロマトルが限界である。


(ドーム型だから悪いんだ。もっと限定的に魔力を伸ばせば、少なく済む)


 左手を伸ばし、人差し指で虚空を指した。指先に魔力を集めるイメージを作り、同時に魔術式を頭の中に広げる。絵画のように一瞬で拡がる魔術式の一部を組み替え、転換。


(線なら5キロマトルまで行けそうだ……)


 指を伸ばしたままテオドールは、その場で一回転する。更に高さを変えたり、角度を変えながら闇雲に振り回した。


(いた!)


 4キロマトル先。状況がどうなっているかはわからないが、リーズレットの魔力に触れた。

 瞬間、窓から飛び出し、身体強化に慣性制御の魔術を羅列。更に風力爆破で風を利用し、空中に飛び上がる。


(風力爆破! 風力爆破! 風力爆破!)


 空気を圧縮。爆発させる魔術を重ね掛けし、空中で加速。そのまま城壁を滑空して飛び越え、慣性制御をしたまま地面に着地。身体強化した足で地面を蹴り、加速。更に風神爆破で速度を得る。


(ダメだ。時間がかかりすぎる!)


 この速度では、どんなに急いでも二分弱はかかる。

 もし、敵があの襲撃者ならば、状況によっては被害が出る。リュカが十全の状態ならば、少しは保つだろう。だが、リュカが負傷している可能性が一番高かった。


(あいつは命令のために死ぬバカだ……)


 リュカはテオドールのために生き、テオドールのために死ぬよう教育されてきている。アシュレイたちを守れ、と命じたら、自分の身を呈してでも命令を遂行するだろう。

 そういう奴だ。


 だから、信頼しているし、同時に悲しくなる。

 リュカの死を想起しただけで、思考が混線してしまった。既に精神コントロールに魔術は使っていない。今はただ目的地に向かうためだけに全てのリソースを割いていた。


(嫌だ! 嫌だっ!! リュカ! 死ぬなっ!!)


 焦燥感に歯を食いしばりながらテオドールは地面を蹴った。



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