第二十八話 追手
その後、しばらく森の中を進みながら魔物を狩っていった。
基本はアシュレイ、レイチェル、リーズレットの三人で行動させ、看過しがたいミスに関してのみ、リュカとテオドールが反応する形だった。
そんなこんなで森を進んでいくうちに、テオドールは違和感を覚えた。だが、言葉にはせず、今日の野営地を探しながら歩いていく。
「ここなんかどうかな? 少し開けてるし」
アシュレイの言葉に「いいんじゃないか。ここで野営しよう」とテオドールも答えた。レイチェルたちが準備をするのを眺めていたら、リュカが近づいてくる。他の誰かの耳に入らないように小さな声で「テオ様……」と声をかけてきた。
テオドールは小さく肩をすくめる。
「ああ、俺も気づいてる。誰かに見られてるな。ただ、魔力擬態がうまくて魔力感知にも引っかからん。精度をあげてもいいけど、気取られたくないし、夜になってからだな」
「はい、かなりの腕かと……」
「なんとなくだが、最低でも三人はいる気がする」
野営の準備を進めるアシュレイへとチラリと視線を向けた。
(まあ、なにかしらアクシデントは生じると思っていたが、真正面から来るとは……)
断定するのは早いが、暗殺者だろう。
たしかに、ダンジョン実習中ならば、死んでも事故死にしか見えない。
「どういたしますか?」
「とりあえずアシュレイには黙っておこう。レイとペンローズ様には、お前の判断で伝えてくれ」
「討ち手はどうなさりますか?」
「盗み見されるというのも面白くない。特にレイやお前も見られてるわけだし、元夫としても、その辺、看過はできんよ」
「どちらだと思いますか?」
と言いながらリュカはチラリとアシュレイを見た。
要するに、暗殺の対象がアシュレイなのかテオドールなのか? ということだろう。
「わからん……が、俺が対象だとしたらお前らの網に引っかかるんじゃないのか?」
「西部から中央に誰かが来たという情報は特にありません」
断定は難しいがアシュレイが狙いである可能性が高いということだろう。
「どちらにせよ、夜になったら仕掛ける。お前はここでみんなを守ってほしい」
「承知いたしました」
うなずきながらリュカは野営の準備へと戻っていった。
(さて、可能ならば捕縛したいな。尋問して情報を引き出した……ところで、誰の得にもならんか……?)
アシュレイが標的にせよ、テオドールが標的にせよ、どうせ黒幕はスヴェラートか、二人の王子のどちらかになる。仮に証拠を手にしたところで、もみ消される未来しかない。敵の権力が強すぎて、打ち倒すのはほぼ不可能だ。
(……王侯貴族から見たら、平民ってほんと吹けば飛ぶ存在だよな)
深いため息が出てくる。
(ま、少しは嫌がらせなりなんなりをしてやろう。もう手を出したくないって思わせる程度にビビらせるのも手か……)
そんなことを考えながらテオドールも野営の準備を再開した。




