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王妃陛下が関わっているらしいことで、イードルとサバラルとゼッドは何も言い返せない。
「お三方が三ヶ月頑張れば、リナーテ様は生涯頑張ると仰っているのです。なんと健気な女性でしょう!」
「本当に素晴らしい方ですわ。リナーテ様が王妃陛下におなりになれば、お三方の『真実の愛』が成就するのです!」
「王妃陛下になられるリナーテ様と共に歩み、リナーテ様を支えて、リナーテ様を守ってあげてくださいませっ!」
フェリアとバーバラとルルーシアは期待するような目で三人を見てた。
『『『そ……そんな……話……だったかな……』』』
イードルとサバラルとゼッドは顔を青くしていた。
「王妃陛下のご助力もいただいておりますから、お逃げにはなれませんよ」
三人は肩をビクつかせる。
「もちろん、学園にもお話は通してありますわ」
三人はブルリと震える。
「各家にも、ですわね」
三人は膝をガクガクとさせてしまう。しかし、メイドに支えられているので座り込むことも倒れることもできない。
「明日からは、着替えとお化粧がございますので一時間早くにご登校くださいませね」
「一時間っ!???」
「はい。今日は大変薄化粧ですが一時間近くかかっております。もうすぐ昼休みが終わってしまいますわ」
イードルとサバラルとゼッドの前それぞれに鏡が並べられた。
「お三方とも美人ですわね。明日のお化粧が楽しみだわ」
『『『悪くはない』』』
三人は自分の姿を見て自分に惚れそうになった。それほど三人は眉目秀麗である。
「「「失礼いたします」」」
メイドがイードルたちの頭にリボンをハチマキのようにつけた。少し長めの髪のイードルとサバラルにはとても似合い、短髪のゼッドでも町娘ならしそうな髪型になった。
三人は自分の映る姿見に思わずニヤリとする。
「「「では、お教室へ参りましょう」」」
メイドに左右を支えられながらフラフラと二学年の淑女A科へ向かうイードルとサバラルとゼッドを生徒たちは興味津々に見ている。
人の多い昼休みの中庭での告白劇であったので見ていた者は多く、噂回りも早かった。そのため三人を一目見るための人垣ができている。
着替えをした共同棟から二学年棟へ移動するも人垣は減らない。
だが、三人は足元が不安で周りを見る余裕などない。
それでも、ある程度見られるほどの美しさであったし、王族と高位貴族である三人なので嘲笑う声はなかった。
学年棟は中央廊下から右が紳士科で左が淑女科となり、一階に各科共同教室とA科B科、二階にはC科D科となっている。
男女で左右に分かれるので、基本的には共同棟以外では男子生徒と女子生徒の交流はできない。イードルが『そもそも男が淑女科へ行けるわけがない』と考えたことは本来正解である。
つまり、現在三人は女性扱いだ。
淑女科へ入ると周りの声色が明るい感じになり、イードルたちはふと周りを見渡した。ここでやっと注目されていることに気が付き、顔を赤くする。
淑女A科一組は一番奥なので、気恥ずかしさから廊下がどこまでも続いていくような気分になった。
フェリアたちに誘導されたイードルたちが教室に入ると、一番後ろに誰も座っていない席が六つ用意されていた。
三人はその様子に瞠目する。
「いいいつの間に……」
イードルの声が震えた。これを見れば学園側が協力的であることは一目瞭然である。
「これはいつもこの状態なのですか?」
サバラルは万が一の光明を探すかのように質問する。
「まさかっ! うふふ。皆様がメイドに連れられてすぐに学園関係者の方が準備してくださいましたわ」
先頭を歩くフェリアは説明しながら真っ直ぐに窓側へ向かった。
一番窓際にイードル、一つ開けてサバラル、さらに一つ開けてゼッドがメイドに支えられながら席の近くへ行く。