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確かにふくよかな婦人たちをパーティーの席で見かけている。
「ま、まさか、あのご婦人方はこれをして……」
サバラルはコルセットのキツさに涙をポロリと流している。『これをしてもあの太さ』とは言えずに口籠る。
「そうですわ。コルセットをしないで夜会へ出る女性はおりません」
ルルーシアは大業に頷いた。ゼッドは顔を歪ませて息絶え絶えに訴える。
「ここは夜会では……ないではないか……」
「淑女A科は毎日のコルセットは必須ですわよ。コルセットに慣れることもお勉強の一つですもの」
フェリアがそう言うと、フェリアとルルーシアとバーバラが自分たちのウエストに手を置いて妖艶に微笑んだ。
確かに尋常でないほど細い。
「今日のところはこのくらいですかね? 毎日少しずつでないと締まりませんね」
メイドたちはため息交じりに仕方なく今の状態でリボンをすることにした。
「毎日……嘘だろ……」
「ヤダ……」
「っ……」
イードルたちが呆然としていることを無視してメイドたちは着替えを進める。
「はい! 手をお挙げください」
呆然としている三人は言われた通りに腕を上げた。椅子に立ったメイドが上からパニエを被せる。おしりを少し隠すほどの長さのパニエであった。
一枚目はされるがままの三人も三枚目になればさすがに声を上げた。
「パニエを何枚着させる気だっ!」
「みなさんはウエストがお太いですので三枚ですね。お嬢様方はおそらく五枚ほどか、五枚分のフリルをつけたものを着用なさっておりますよ」
フェリアとルルーシアとバーバラは笑顔で首肯する。
「暑いよ……」
サバラルがパニエをパタパタさせる。
「サバラル様。たかだか三枚で……はしたないですわ」
バーバラが眉を寄せた。
「これは学園用のパニエなので短いのですわ。本来膝下までありますのよ。そうなればこの程度の暑さでは済みませんわ」
バーバラの説明にゼッドが驚いている。だが、ゼッドにとっては夏の甲冑よりは耐えられるもののようだ。
「はい! では、もう一度手をお挙げください」
メイドたちにドレスを上から被せられた。
「重い……」
「イードル殿下。これは春先用なので軽いものですよ。冬用を着てみますか?」
イードルはフェリアにフルフルと首を振った。
ドレスの後ろ紐を結ばれる。
「グッ!」
「ハッ!!」
「……」
先程フェリアに悲鳴を注意されたのでなんとか堪える。
「本日のところはお化粧はいたしません。明日からは準備しておきます」
「よろしくお願いしますね」
メイドのリーダーらしき者とフェリアが相談している。
「お靴はこちらに」
三人の前にどデカいハイヒールが並べられた。
「これは流石に特注ですわ」
ルルーシアが嬉しそうに教える。
「は? 特注?」
イードルとサバラルとゼッドは不思議に思った。
メイドたちに促されて靴を履くが、バランスを崩してメイドたちに支えられた。
「あっ! あぶなっ!」
「フラフラするよ……」
「これでは歩けん!」
三人はメイドに支えられてもフラフラしていた。
「皆様のお靴はヒールが三センチですのよ。しっかりしてくださいませ」
フェリアが失笑ながら説明した。
「本来殿方にお見せするものではありませんが仕方ありませんね」
バーバラの言葉でフェリアとルルーシアとバーバラが横に並んで右足を前に出した。メイドが靴が見える分だけスカートを捲る。
「「「……っ!!」」」
いつもは長いスカートに隠れて見えない部分が晒されて、男三人は頬を染めて絶句した。