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10 卒業する人

 卒業式の朝、例の美男子三人は朝早くにタウンハウスから学園へ来て、女子寮の前で婚約者たちを待っていた。そして、婚約者たちが現れると恭しく手を差し伸べ、丁寧に卒業式の会場へとエスコートしている姿が見られた。


 彼らは屋敷で正装して来たのだが、彼女たちが用意してくれた式礼服をメイドが着させてくれていた。そして、彼女たちを玄関で迎えたときに、その服が彼女たちと対になっていることに気が付きまた涙が出てきた。

 式礼服を用意するのは一年ほどかかる。自分たちがニーナにドレスを買ってやっていた時期に、婚約者である彼女たちは彼らのことを考えてくれていたという意味なのだ。


「ありがとう……」


 彼らはそれぞれの婚約者に涙ながらにお礼を言った。


「これから態度で返してくださいませね」


「はい。誠心誠意努めます」



〰️ 


 卒業式の翌日から三人はダリス公爵家―マイゼルの家―に集められ勉強のやり直しを課せられた。ダリス公爵家の執事長は学園のどの教師よりも厳しく、講師陣でさえも震え上がって講義をしている。


 彼はヘンリ男爵に第二夫人についての説明に赴いた者であり、説明を受ける前のヘンリ男爵に『公爵家からの正式な婚姻の申込みですねっ!』と嬉しそうな顔をされてしまい三人の犯した罪の深さを痛感していたのだった。


「人を傷つけるような高位貴族であってはなりません。ましてや何のお考えもなく無意識に陥れるなど言語道断です。

結婚式までにわたくしの合格がなければ、婚約は破談となり、放逐することになっておりますのでご理解くださいませ。六家のご領主様からの厳命でごさいます」


 執事長からスマートな仕草で獰猛な視線を後ろから送られ、猛省して猛勉強することに拍車がかかった。


「「「頑張りますっ!」」」


「お嬢様方はみなさま方と違い大変ご立派な貴族なのです。ご本人のお気持ちより貴族の義務を優先させてのご婚姻です。

みなさま方が貴族の義務を全うする力がなければお嬢様方がみなさま方とご婚姻する理由は皆無です」


 三人は二日前に言われているのでわかっているが、改めて言われるとショックもある。だが、選択肢はない。


「捨てられないように尽力なさいませっ!」


「「「はいっ!!」」」



〰️ 〰️ 〰️



 卒業式から一週間後、マイゼルとコンジュとラルトンは一緒にヘンリ男爵に謝罪へ行った。しかし、すでに謝罪金は受け取ったとして土下座はさせてもらえなかった。ヘンリ男爵からすれば、高位貴族令息三人に土下座されるなどかえって恐ろし過ぎる。

 ニーナは一ヶ月限定で修道院へ預けられており、会うことは叶わなかった。



〰️ 〰️ 〰️



 卒業式から一ヶ月後。メリナの家のガゼボにて、フラールとメリナとダリアーナは優雅にお茶をしていた。そばにはそれぞれのメイドたちが控えている。卒業後の近況報告から始まった。お茶会は当然のようにニーナの話になっていく。


「それにしても、ニーナ様が天然な方で良かったですわね」


「ええ。本当にっ。計算ずくの女性でしたらこの程度では済みませんでしたものっ」


 実はマイゼルたちには大袈裟に言っているが、公爵家侯爵家としては困るほどの無駄遣いではなかった。

 とはいえ、彼らに与えられた資産による収益を超えた出費をしていたことが何回かあったので、彼らが資産管理をできていないことは露見している。それに、大袈裟に言われていることに気が付かないことも管理能力がまだないと見なされる要因だ。

 彼らの両親からの要望で、彼らの反省を強く促すために大袈裟に伝えたのだ。彼らの両親は領民たちのために彼らの再教育を必須とした。強く反省しなければ再教育も意味をなさないだろうと思われている。


 そして、両親たちは彼らがそれらをしなければ平民にさせるつもりでもいる。彼らにはそれぞれ弟や従兄弟がいるので血筋には困らない。ただし、彼らの両親は家として彼女たちを求めている。彼らの親族の中に、彼女たちに合う年齢の跡継ぎが彼らしかいないのだ。

 彼女たちは才能、知識、教養、人徳、社交性、家柄、血筋、すべて完璧である。彼らと婚約破棄になることを周りの家々が手ぐすね引いて待っていることを彼らの両親は知っている。なので、是が非でも彼らに頑張ってもらわねばならない。


 ニーナのことは、フラールたちも学生時代の戯れだと思っており、咎めたり家に報告をしたりしなかったので、六家の親たちは知らなかった。ヘンリ男爵が社交パーティーで豪語しだしたことが、親たちが知るきっかけとなっていた。

手違いで昨日の投稿ができていなかったため、本日2話投稿します。

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