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ツキと王  作者: 鷹坂光樹
2/2

第一夜 奇妙な鳥の言葉



起きろ、起きろ・・・・


頭に響く、井戸に落ちるような声。


起きろ、人の子よ・・・・


誰かが、呼んでる・・・・?



「う、ん〜・・・・」


ごろんっと寝返りして薄く目を開くと、そこには視界いっぱいに広がる緑があった。

少女は地面がふかふかしていることに気づき、バッと辺りを見回した。

どこを見ても木々や草木があるだけで、探しているものは見当たらない。


・・・・行っちゃった、のかな。


もう一度眠ろうとしてごろんっと寝ころぶと、目の前に小さな黒い影があった。

少女はきょとんとしてそれを見つめた。


「あー黒いひとぉ〜?」

『・・・ほう。私の姿に驚かんとは、なかなか礼儀を知っているな人の子よ』


低いガラガラした渇き声に、耳元でばさばさと羽の音。

少女は、残念そうに眉をひそめた。


違う・・・・。


目の前を飛んでいたのは、鳥だった。

でも、おかしな鳥。

鷹みたいに鋭い爪とくちばし。鳶みたいに大きい翼。

それらが付いたフクロウみたいな鳥だった。

少女はじいっとその生き物を見つめ、くすっと笑った。


『・・・人の子よ。何故笑っている?』

「ん〜?だぁって〜楽しいもーん♪」


少女がけらけらと笑いながら言った。

奇妙な鳥は、自分よりも奇妙な少女を見つめ、やがて口を開いた。


『人の子よ、名は何と言う?』

「・・・・ナ?」

『人の呼び名だ。お主にはないのか?』

「ナ〜よびナ〜うーん・・・・ないっ」


少女の元気な返答に、鳥はふむと何か納得したようだった。


「ねえ、トリさんのナはぁ?」

『私か?私の名は夜牙だ』

「・・・・ヤガ?」

『夜の牙と書く・・・時に人の子よ』

「あい?」


夜牙がしばしの間を空け、よかろうと何やらつぶやいた。

そして少女の方を向き、吸い込むような瞳で見据えた。


『お主は・・・・森の王に会っただろう』


その途端、少女が目を見開いてガバッと飛び起きた。

脳裏にはあの綺麗な黒い眼をした影が映っていた。

夜牙はバサッとはばたき、少女の前に降り立った。


「黒いひと!」

『ふむ、どうやら会ったらしいな・・・人の子よ、お主はこの森で生きるか?』

「えっ!いていいの!?」

『私が決めることではない。人の子よ、この森を進んだ先に大きな館がある。そこへ行け』

「なんで??」

『そこに彼の方がいらっしゃる。そして名を求めるのだ。それさえ出来れば、お主は森の主に認められたこととなり、この森で生きていけよう』

「やったー!行く行く!!」


ならば、と夜牙は自分の羽根を一枚抜き取り、少女の耳にかけた。


『行け、名を持たぬ人の子よ』

「はぁーいっ」


少女はまるで遠足にでも行くかのように、嬉しそうな表情で森を突き進んだ。


もういっかい、黒いひとに会える・・・・


少女は駆け抜けながらくすりと笑った。

小枝に引っかかれても、こけそうになっても、少女はその足を止めることはなかった。





『ふむ・・・・』


ばさばさと羽をはばたかせながら、夜牙は少女のいた地面に降り立った。


『人の子よ・・・お主がもう一度彼の方にお会いすれば、その命を落とすかもしれん・・・・だが、王と出会い生きている人間はお主のみ。

運命が許せば、また会い間見えようぞ・・・・・』


一羽の鳥の囀りは、儚くも一陣の風に掻き消えてしまった。

















今回も短いです・・・・。

本当にすみません(;_:)

区切り区切り物語を始めていきたいと思います。

次話はまた、あの方が出てきます。

物語の行く末を、どうぞご覧あれ・・・・。


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