ロリコン疑惑と番頭と陰謀と。
エルフ
それは帝国の南に広がるセコイヤ大森林の住民、外部との関わりを絶ち一生のほとんどを森林で暮らすという。
森林において非常に高い戦闘力を持ち、三代前皇帝の頃から帝国との間に不可侵協定を結んでいます。
ただし、貿易は行われており。エルフからの貿易で得られる大森林の特産品は、帝国の専売品として莫大な利益を上げている。
旦那様の外套をめくると金髪でピコピコお耳のかわいいエルフ幼女が現れました。
幼女、これはまずいですわね・・・エルフは美形揃いと聞きますしさっきから旦那様の外套に顔を埋めてうらやオホン。
それにしても、本当に凄くなついてますわね。
わたくしが目を離した間に一体何をしていたのか、後でじっくりと聞かなければいけません。
変な趣味に走らないか注意しなくてくては。
ねえ、旦那様?。
(ニッコリ)
「っなんだか背筋が・・・」
さて、冗談は1割ぐらいにして。
エルフの、しかも幼女が帝国の帝都にいるという状況。
まずエルフが帝国にいるといういう事は別に問題はありません。
変わり者のエルフが森林の外に興味をもって旅をするという話は珍しいですが無いことはないのです。
そういうエルフは数が少ないですが広範囲を巡る傾向があるのでフランソワでも見かけられます。
そのよなエルフは入国の際に手続きを済まし入国証明書を所持しているもの。
目の前の幼女ほぼ着の身着のままですね。
次に幼女、これも問題です。
通常ならばエルフの子供が帝都に落ちているような状況はあり得ないのです。
帝国にとってエルフはお得意様、仲良くするだけで莫大な利益を与えてくれる存在。
大森林はエルフ以外にも危険な原生生物がうじゃうじゃいて帝国の国力をもってしても開発は難しく、帝国は大森林への進出をキッパリと諦めてエルフ交易で儲ける方針をとっており。
これは帝国による無言の独立保証に等しく他国の森林地帯への侵入を防いでいます。
この状態でエルフ幼女が帝都に一人で落ちている状態が大変おかしい事がお分かりでしょうか?
もし、エルフが帝都で事件に巻き込まれるような事があれば帝国の警備兵が大隊単位で突っ込んで来るでしょう。
つまり、何が言いたいかと言いますと。
「商会長、東からお客様がおみえになられています!」
少し前のフランソワ王国の騎士を称した強盗事件からつくられた符号ですが。
いきなり役にたっていることにため息をつきたくなります。
非合法な業者の方々のお越しのようです。
「明日の夕食が一品増えますわ!」
暫く現場に出てきてはいないので、久しぶりに暴れられますわ。
この頃、夜にお義母様の気配を察知していろいろ不都合があったのでそのストレスもぶつけてしまいましょう。
「セイヤアあああ」
鬱憤を込めて商会玄関へと繋がる扉を蹴り飛ばします。
そして、その勢いで玄関外へと突入し脚を構えながら賊を見回しました。
「死にたい方から前に来な「「「「「「「すいませんでしたあああああああ」」」」」」」・・・はい?」
土下座の海が広がっていました。
その中の数名は完全に五体倒地帯の状態にまでなっおり、その周りをわんこがぐるぐると回っています。
「・・・なんですのこれは?」
明らかに堅気格好をした方々が土下座しています。
皆さん一応ににごめんなさいごめんなさいと繰り返していて話になりません、仕方がないので一人適当に選んで襟を締め上げてお話をしましょう。
「御用件は?」
「知らなかったんだ、ヘルメス商会関係のやつだったなんて!頼む許してくれええええええ」
「・・・首謀者は?」
「俺達は何も知らないんだ、頼む!」
「・・・信じるとお思いで?」
本当の事を言っているのは確かのようですの、この怯え方は故郷の財布がよくしていた表情に類似しておりますわ。
しかし、この怯えようはおかしいです。
こちらではまだあまり暴れておりません、それなのに昔いた学園の男子貴族師弟と同じような表情をされるのは心外ですの。
「本当なんだ!だから、だから・・・あいつを止めてくれええええええ」
「!?」
理由を追及しようとしたところ、賊の一人が鬼気迫る表情で路地を指差すと、先ほどまで何もなかったはずの暗がりから濃厚な殺意と存在感が放たれる。
お義母様とは別の気配の薄さ、いや存在感が大き過ぎて出している本体がその中に紛れ混んでいる。
そして気がついた。
賊達は土下座したくてしているじゃない、させられているのだ。
己の武器である脚が脱力し地面へと吸い寄せられそうになるのをこらえる。
ガクガクと震える手足を殺意の方向へとかろうじて向けた。
「お見事!」
冷や汗が目に入りぼやける視界のなか、路地から現れたのは一人の老人であった。
少しやつれた礼服を纏い杖をつきながら歩いてくるが、重心は下半身に込められており背筋が真っ直ぐに伸びているのがわかる。
その瞳はこちらを突き刺すように鋭く、さらに先ほどからまばたき一つしていない。
「初めまして奥様、わたくしめヘルメス商会の番頭を任されおりますシディアンと申します」
老人はそう名乗り一礼する。
聞いた事がある、ヘルメス商会には凄腕の番頭がいると。
だが、これはどうだ。
少なくとも目の前の老人は北部蛮賊と日常的に戦闘しているわたくしのお父様よりはるかに強い。
「やりすぎだよシディ」
「ホッホッぼっちゃま。良い奥方を娶られたようで・・・爺は感激しております」
言葉が出てこない私をかばうかのように旦那様が話しかける、しかも愛称まで使って。
それに対するシディアンも先ほどまでの剣呑な雰囲気は四散しまさに好々爺といった感じになっている。
「さてぼっちゃま、先ほど変わった拾い物をしたようで。爺は心配になりまして急ぎ駆けつけたのですが、どうやら年寄りのおせっかいになってしまったようですな」
それでは、といって老人は歩き出した。
「ああ、そういえば・・・フランシスコ伯爵にご注意を」
不穏な忠告を残して。
フランシスコ伯爵
帝国貴族。いわゆる領地を守護する領主貴族ではなく、帝城にて執務を行い給金を得ている法衣貴族。
外交畑の人物でありエルフへの外交に携わる人物。
しかし、その人物が何故今回の騒動に関係するか結びつかなかったのです。
かたやエルフ保護の責任者でもう片方はおそらくエルフを狙って襲撃してきた非合法組織。
仮にフランシスコ伯爵がエルフ誘拐の黒幕だとして、先ほどの一手は最愚作。
そもそも、自分の職域と権限の中でエルフ幼女を回収できる見込みがあるのに、わざわざ外部の後ろめたい手段を用いてまでも回収する必要があるのか?。
情報不足ですの。
幼女と旦那様が一緒にお風呂に入っております・・・酷いですの
わたくしだってあんまり入った事がありませんのに。
お風呂上がりの幼女をわんこがペロペロとグルーミングしているのを眺めながら旦那様と話します。
「身元ははっきりしているの?」
「まだ、聞いてない」
「へえーー(名前も知らない幼女を拾ってきたのですか、そうですか)」
「何ですかその笑顔は、((( ;゜Д゜)))」
「それで、詳しいことは?」
「落ち着いたようだし今聞いてみよう。おーい、あなたのお名前はなにかな?」
「うう・・ほんとはおしえちゃだめだけど、おじちゃんピカピカひかっているから特別!えーとえーとね。セコイヤしんりん、めたぞくぞくちょうのむすめ!」
((セコイヤ森林メタ族族長の娘・・・))
こうして私達は、エルフ・帝国貴族とが混じりあった陰謀へと足を踏み入れたのでした。
商人
今回の話で謎に光っている事が発覚。
蛍光ルアーの可能性が浮上してきた。
わんこ
妹のような存在ができて嬉しい。
元令嬢
旦那が幼女を拾ってきたことに謎の危機感を覚えている。