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プロローグ

好評につき連載番をつくりもうした。


彼らの日常と騒動をお楽しみください。



私はフランソワ王国の北方鎮守の要であるレッグストロング侯爵家の令嬢であり、同時に次期国王たる王子の婚約者でありました。

ありました・・・なぜ過去形かと言うと簡潔に言えば追放。

深く言うならば次期国母をめぐる政争で敗れた敗北者。

あ、仮にあの茶番劇が本気であるならばとつけ加えなければ行けませんね。




 フランソワ王国 王立貴族学園


 そこは未来の貴族師弟が貴族とはなんぞやの心構えを学び、同時に領地経営の基礎や領主貴族としての責務を学ぶ学舎。


 事件はその卒業式に起こりました。




「レッグストロング家令嬢アニキスよ・・・貴様に婚約破棄を通達する」


 まさに青天の霹靂といえばいいのでしょうか?私はそこで婚約破棄を通達されてしまったのです。


 笑ってはいけません。


 いくら王子といえども貴族婚姻に関して貴族院と王家の承認なしに変更などあり得ません。


 仮に王子が根回しそして承認を得てから、この茶番劇に挑んでいるならば百点花丸をあげたいです。


 よしよしと撫でてあげたいくらいです。




 まあ、ここに侯爵家の令嬢が今まさに隣国へ追放されようとしている時点でそれはないでしょうね。


 貴族令嬢を追放・隣国・生身の三点セットです。


 おそらく王子は幽閉、そして本件を画策した連中の首が空に舞うでしょう。




 問題点としては隣国追放を見届けるために王子の取り巻きが付き添っていることでしょうか。


 どうやら隣国への追放を見届け、もし戻って来ようとするならば矢をいかけると喚いています。




 私がおとなしくしているのも、取り巻き連中が貴族子弟しかも高位貴族のであるからなのですが・・・。




 仮に今からでもレッグストロング家秘伝の殺脚術をもってすれば簡単に全滅させられます。


 しかし、そうなればお父様に迷惑がかかってしまう上にレッグストロング家令嬢が貴族子弟を惨殺。




 大事件です。




 正当な行使だったと認められたとしても上位貴族達との関係に不都合が生じるはずです。


 そうならないために我慢してここにいる訳ですが・・・どうやら着いたようです。




「ほら、降りろ」


「・・・はい」


 できる限り悲痛な感じで馬から降りました。


 こうすることで取り巻き達も力ない令嬢が森に一人で放置されて絶望していると見えるでしょう。


 どうやら連中、私が怯えていることに満足しているのか満悦のようです。ゲスといえばいいのでしょうか?




「元令嬢アニキスよ貴様は未来の国母として求められるべく品位をそこな・・・」


 どうやら私は国母たる品位がない、だから追放だそうです。


 笑ってはいけません。


 個人の主観だけで貴族を追放とは、ここまでくると認めなければなりません。




 あの王子、やっぱり馬鹿ですね。




 ただ、気になるのが我が王国。


 王位継承者が馬鹿王子だけなんです。




 さらにその王子を両親が溺愛しているという状態。


 なので、血筋と頭脳共に優れていた私がそれを御するという目的で婚約者に選ばれた訳ですが。




 確実に荒れますね王国。


 私の一件が爆弾となって王家と貴族を真っ二つに割る上に、次期国王に対する不信感が膨れ上がるでしょう。


 そうなれば最悪内戦、もしくは王権がお飾りになって貴族が暴れ出しますね。




 幸いにも私の実家であるレッグスストロング家は北部辺境にあり中央とは文化的にも物理的にも離れていますし。


 私を理由に中立無関心を保てばそれなりに立ち回れるはずです。




 となると私がいればそれこそ中央の争いに巻き込まれるでしょうから・・・悠々自適の隠居生活でもしましょうか。

今まで国母としての教育に実務そして人脈作りに馬車馬の如く動いていましたから。

暫くはハーブを栽培しつつ狩りをしてのんびりと過ごしても許されるはずです。




 ただ、何をするにも先立つもの。つまりお金が必要です。


なので、せっかくの国境地帯ですからお財布(山賊)がいるはずなので探しましょう。




 耳を澄まします、こうすれば一山先のウサギの足音も逃しません。




 あら?これは馬車の音?こんな夜半にこれだけの早さで国境を越えようとするならば・・・きっと真っ当な馬車ではありませんね。




 ドレスの足部分を破いて括ります。


 そして、このハイヒールも歩きにくいので捨ててしまいます。




「キャアアアアアアアアア」


 ついでに叫んでおきます、やましい事があるならば口封じに誘拐や人身売買の類いならば嬉々として向こうから来てくれて楽です。


 仮に近づいて来ないならば手練れもしくは慎重な相手ということですから隠れて奇襲しましょう。




「あら?」


森をかき分け木々の間を駆け抜けます。


もう少しで目標というところで足を止めました。


松明がついているのです。


もし賊だとすれば、ねぐら周辺の地形を叩き込んで暗闇からの奇襲が基本。密輸業者も決まった道を叩き込んで暗闇を走りますし灯りをつけていることがレアです。




そして何よりも一団の馬車に描かれているマークに見覚えがあります。


あれは帝国の・・・。




┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝






わたくしめは帝国が誇る三大商会の一つヘルメス商会の商会長の一人息子のカシウスと申します。


我らがヘルメス商会はついに隣国たるフランソワ王国に支店を出す事が許されまして。




そして、わたくし支店長を任されております。




親の七光り?ボンボン?結構。


商売するなら、そんな謗りを受けてこそ一人前です。




さて、そんなこんなで支店を運営しつつも情報は商人の命ですから収集にも余念はございません。




「はい?もう一度言ってください」


「ですからレッグストロング家のアニキス嬢が追放されました」


「失礼、耳が腐ったようです」


未来の勢力図情報を得るため、貴族学園に潜り込ませた部下が変な報告をしてきました。


北部大貴族の侯爵家令嬢が追放されたそうです・・・誰がこんな流言を信じるというのですか?


第一アニキス様は王国の次期国母にして王国のアキレス腱ですよそれを手放すなんて愚行をみすみすするわけが・・・あ、国王様と王妃様って今外遊中じゃなかったっけ?




「王子の暴走ですと!」


この国の王子の放蕩ぶりは市中でも噂になるレベルです。


さすがにと言いたいですが数々の伝説(笑)すらもすでに残されている状態です。




と、なれば。




「馬車の準備を!今からアニキス令嬢を捜索します」


「ぼっちゃま、何を」


「いいから馬車をここに、そしてできる限り人を集めてください」


情報が命とは、よくいったものです。


王子が追放の首謀者の上に取り巻き連中は上位貴族の子弟です、そうなれば王国貴族は手を出しにくい。


そこを我々が保護すれば・・・うまく行けば侯爵家とのパイプが得られるかもしれません。


我々は隣国の商人ですから偶然を装って保護という形にすれば大丈夫でしょう。




と、勇んで馬車を走らせてきたのですが。




現在その令嬢と山中でにらみ合いになっております。


アニキス令嬢が追放されると言われた国境地帯にすぐさま向かいまして必死に捜索しておりました。


しかし、アニキス令嬢を捜索すれども見つからず。


夜がくれてしまい松明を灯していたところ。


「キャアアアアアアアアア」


突然響く女性の悲鳴。


「ぼっちゃま!警戒を。これほどの殺気かなりの手練れ」


そして、護衛達が次々と武器を構え始めました。




で、現在に至るという訳です。




「失礼ですが、アニキス様ですか?」


「ええ、そうよ。そちらはヘルメス商会ですか?なぜここに?」


どうやら令嬢は我々商会のことを知っていたようで、同時にこちらを表情を変えずに見回してくる。


追放された直後の遭遇だ。疑ってくるのは当然だ。




商人の心得の一つ


相手を騙すような商売は長続きしない。




なので、正直に整然とこちらの目的そして利益を提示し、同時に相手の不利益を指摘。


その上で商談を行いその上澄みを飲んでいきるが我がヘルメス商会である。




「なるほど、分かりました。現在実家とは関係を絶つべきだと考えておりそちらの利益となるような事は行えません」


「そうですか。失礼ですがこれからどちらへ?」


「帝国に向かおうと思います」


「なんと!」


どうやら令嬢は暫く王国とは距離をおくようである。


最初の目論みは水泡と消えたが、別の話が出てくる。


令嬢は帝国へと向かうそうだ。




ならばこのまま令嬢を帝国へとお送りすればいい。


見たところ破れたドレスに裸足と先立つものがなさそうであるのだ・・・つまりただ帝国にお送りし入国税や生活費を援助するだけで侯爵家の令嬢に恩を売れる。




未来への大投資だ。


仮に令嬢が王国に帰れば王国上層部とのパイプが得られる。




「ぜひぜひ、わたくしどもに送らせていただけませんか?」


「・・・未来への投資かしら」


「はい!生活費も援助させていただきます」


「なるほど、では一つ条件を」


「何なりと」


「わたくしを商会で働かせなさい」


どういうことだ?令嬢が商会で働くだと・・・これまでの受け答えから非常によく教育された令嬢。


さすがの国母候補と思っていたがおかしいぞ、通常の貴族令嬢なんぞ働くなんて考えが出てくるはずがない。


ましてや侯爵家令嬢どうしてそんな考えが出てくるのだ


まさかこの追放が令嬢の計画か?いや、侯爵家と王家の関係にヒビをいれるようなことをするはずが・・・。




「考えているところ失礼ですがただ先立つものが必要なだけです。この状況ですから資金の供給を援助のみとするにはリスクがありますから」


「ええ、ええ。分かりました、そのようにさせていただきます」


「賃金を働いて得る。常識では?」


「・・・その通りでございます」


現状不都合はないため了承する。


仮にこれが令嬢による商会乗っ取りの計略だとしても警戒すれば問題はない。何よりも国母教育を受けた最上級の人材が商会に加入することになり利益は大きい。




「では、向かいましょうか」


「ええ」


令嬢を馬車に乗せて帝国へと向かう。


我が商会の未来は明るい、これからわたくしの手によってますますの発展が期待できるはず。




万歳!


















結論から言うと見事に乗っ取られました。




帝国に帰り実家の商会へと凱旋したが、待っていたのは商会長の拳であった。


「任せた支店をほっぽって女連れて帰って来るとはいいご身分だな・・・貴様のせいで王国での商談は潰れ、信用は失墜。お前は勘当だあああああああああああああ」


ごもっともである。


目先の利益につられ私とした事がやらかしてしまった。


だが、自分の行動は商会の利益になるものだと確信している。


・・・が信用というものはそれ以上の価値がある。


私は商会の信用と会長からの信用両方を失ってしまった。




残されたのは馬車と親子の情なのか多目に膨らんだ金貨袋。


そして、馬車の御者席で足をぶらぶらさせている元侯爵令嬢。




侯爵令嬢?




「何故ここに?」


「あなたと同じく商会にいったら門前払いされましたの。身分証明ができない人物を雇う事はできないと」


「それは・・・」


「それで、雇ってくださる?あなたには馬車も元手もあるんじゃないかしら」


「やるか・・・行商」


「ええ、私はただのアニキス。あなたは?」


「ただのカシウス」




こうして行商を始めたのだが。


やっぱり国母教育すごい、アニキスは隣国帝国の地理や特産品・風土・気候までも知識があった。


それを利用して僕達は行商を次々と成功させていき。




暫くたって行商で貯めた資金で商会を設立し。


アニキスは販路の策定や交易相手との商談を行うようになり。


私は商談をすれどもアニキスに及ばないが、かつての失敗から学び堅実な利益を出していた。


そして、気がつけば私は裏方のような存在となっていたのだ。




裏切られる心配?


ないない。




喰われました。




行商を始めて数ヶ月。


海沿いのワインの産地で宿を取った時に「宿代節約よ!」と言って同じ部屋で寝たんです。


仕方がないじゃないですか・・・侯爵令嬢ですよ侯爵令嬢。


それがあんな行動するなんて予想できないじゃないですか




それからというもの蹂躙されまして。




現在第一子を背負って帳簿つけています。




商会でも家庭でさえも尻にしかれ・・・完全に乗っとられてますねこれは。








でも、今幸せです。








┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝┝






「はあ、王国も滅茶苦茶ね」


あれから月日が流れ私と夫が設立した商会は一目おかれるような規模になった。




規模が大きくなったので王国の情報を集めて見ればもう滅茶苦茶。


王子を国王にしようとする王家と貴族とで内戦が勃発。


王国から追放された身からすれば他人事だが。




この頃、私を王家が探しているとの情報を得ていた。




いったい今頃なんの用かしらと思うが容易に想像がついてしまう。


私を連れ戻して王子と結婚、それで手打ちみんな仲直りとか考えているだろう。




容易に想像がつくから旦那をたべちゃったわけだけど。


もともと商売に関係すると変なテンションになるけど、素はまともだし性格もいい。


商人としては堅実だし良物件。


そんなのが無防備に転がってたらたべちゃうでしょ。




ただ・・・


「商会長、お茶が入りました」


「ええ、ありがと。そして私は商会長ではないわ」


「・・・食器お下げしておきますね」


ノック音と共に扉が開き商会の使用人が入室してくる。


その手には紅茶と菓子が乗ったソーサーがあり部屋に芳醇な香りが広がる。何度も繰り返しされた会話をスルーしながら横目で使用人を観察する。




「お待ちなさい、いやお待ちくださいかしらお義母様」


「やるわね」


昼食用の食器を片付けているように見えるのだが違和感を覚えて呼び止め、カマをかける。


使用人は一瞬びっくりするような仕草を見せ、次の瞬間には別人に変貌する。


ブロンドのつけカツラに精巧で計算された化粧。僅かな違和感をも着ている服の印象が隠す。




完璧すぎる変装術


それを商会の婦人が会得しているのだ。




「ひ・み・つ」


なぜ、こんなところにこんな人材がいるのか疑問に思い尋ねて見てもはぐらかされてしまう。


まあ、それでやっている事が誰にも察知されずに商会に侵入し、お小遣いと称して金庫に金貨を放りこむことだけど。


(帳簿が合わないと旦那が暴れるだけで実害はない)




お義母様もそうだが旦那の実家が魔境過ぎるのだ。




一流の暗殺者じみた動きをする義母に帝国の近衛騎士を片手でいなす番頭。お義父様のペットのトカゲは空飛んでるし。


この前商会見習い達が、垂直跳びで屋根に上がって走っていたのを見てさすがに異常だと確信しました。




旦那に聞いてもよく分からないの一点張りですし。




ところがある日、全ての疑問が解決する出来事が起こりましたの。




「わんこ拾った」


行商にいった旦那様が子犬を拾ってきたのです。


クリクリとした目のかわいい子犬でした。


とくに狼のような顔つきでかわいさと勇ましさが同居していて私も可愛がりましたの。




数ヶ月後


「ワオン」


わんこ 体長二メートル。






かわいいわんこが巨狼に成長し・・・それに驚かない旦那様とその家族に呆然。




初対面で二メートルのわんこに迷いなく飛び付くお義母様とお義父様を見てわたくしがおかしいのかと自問自答することになりました(本気で自身の常識にズレが生じたのかと疑った)。




数ヶ月後に旦那様が明らかに貴族の落胤と思われる捨て子を拾ってきたのを見て・・・ああ、こういう場所なんですかと理解しました。




お茶を飲みながら窓の外を見ます。


我が商会の中庭には二メートルのわんこが徘徊し、休憩中の従業員がわんことふれあっています。


庭のすみにいる三首の巨大蛇については知りません、初見なので旦那様をとっちめにいきましょう。




我が祖国フランソワの近衛騎士仕様鎧がベコベコにへこんでわんこの玩具になっているのも気にしてはいけません。


数日前に商会に乗り込んで「王命である!アニキス嬢よ王命に従いフランソワ王国へ帰還せよ。拒むならば我々は武力行使もなにするやめろおおおおおアーーーーー」と言ってきた人達なんて知りません。




わんこに負ける騎士とは・・・ううん。




わんこが滅茶苦茶喜んでましたし、良しとしましょう。




私はとても幸せです。



侯爵令嬢


会話文でもみられるように令嬢の形をしたナニかである。


変人奇人の類いであり類いまれなる頭脳のもと将来の国母となるべく教育されてきたが・・・はっきり言って柄じゃない。


貴族としての責務から令嬢を取り繕っているが生粋の原住民じみた考えをしてる。


(実家である北部侯爵家が雪まみれ&北方蛮族が雑草の如く湧くのが原因)




馬鹿がやらかしたおかげで解放された上に実家に戻っても自分が火種になることがわかるのでフェードアウトを決意。




追いかけきた商人を美味しく喰べた。




現在幸せな家庭を築くが、商人実家が魔境過ぎて頭を抱えている。


(本人も魔境の一部だと気がつかないフリしている)




商人


おそらく特性はもの拾い。



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