焼き鳥と少年
『やばい、ガチで眠い…』
時間が気になりふと自分の時計を見るととっくの間に23時を超えていた…
『くそ、これもあの禿上司のせいだ…俺の仕事はとっくの間に終わってるのに接待があるからとか言いながら行きやがって…』
明日も仕事あるし一旦家に帰って風呂入って寝るか、そう思いながら資料やパソコンをバッグに入れ席を立った。
外に出ると朝は砂漠のように蒸し暑かったが夜にもなると上着がなきゃ風邪をひきそうなくらい寒い…しばらく歩くと焼き鳥のいい匂いがした。
昼から何も食べていないので空腹に耐えきれず財布の中身を開けながら店の扉を開けた。
「すみません、塩とたれ5本ずつ持ち帰りでください」
「あいよ、兄ちゃんこんな夜中まで仕事かい?」
「そうなんです、ちょっと上司が…」
「大変そうだねぇ、よっサービスでもう一本つけとくよ」
「ありがとうございます」
そう言いながら10本分のお金を焼き鳥屋の親父に渡した。
「次はもっと明るい時間から来て店で食ってきな」
「分かりました、また来ますね」
そうして暖かい店から静かな夜に出て行った。
早く家で温かい焼き鳥を食べようと少し早歩きで向かうと赤信号で足止めを食らってしまった。
『少しの辛抱だ少しの辛抱だ』
すると小学生位の男の子が横から現れてるとスマホを見ながらなのかそのまま赤信号の交差点に突っ込んで行ってしまった。そこから1秒もしないうちに車のクラクションが鳴った。咄嗟に俺が飛びだし男の子を突き飛ばした。
飛び出してる間は不思議と時が遅くなったような感覚だった。
これが噂の走馬灯というものなのか
けれど最後におもうのは家族や友人の思い出ではなくある一つのことだった。
『腹減った、焼き鳥一本でも食いたかったな』