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翌日。


私は開店と同時にカフェに入った。

いつもの席を見る。


ない。ない。ない…⁉


焦ってマスターに落とし物として預かっていないか聞いてみたが、知らないとのことだった。


日記データはパソコン本体にも入っているから続きを書く分には問題ないんだけど、今回心配するのはそこではない。

どうしよう、誰かに見られていたら…。

でも私の名前はどこにも書いていないし、見られたとしても誰の物なのかは分からない…はず。頼むから、そうであってほしい。


まだ客が誰もいない店内を探し回ってみたが見つからなかった。

店内掃除の時に捨てられたと思っておこう…。

もし交番などに届けられていたとしても、持ち主の確認のために中身は見られるだろうし恥ずかしくて取りに行けるわけもない。もう諦めよう…。

あと今度からは日記USBメモリは外で持ち歩かないようにしよう…。教訓として日記に綴る。

そもそも外で日記を書かなければいいだけの話だが、習慣化したものをいきなり止めるのは案外難しい。それにここで紅茶を飲みながら日記を書くのが好きなのだ。


完全にUSBメモリのことは諦めて、ゆったりとした時間を過ごしていたら徐々に人が入り始めてきた。

すると真っ直ぐにこちらに向かってくる人物が一人。空いている席は沢山あるのに。


ちらりと見るとそれはヨゾラさんだった。


なぜかヨゾラさんは私をしっかり見ながら、私の目の前で止まった。

私はもう軽くパニックだった。

なんで、なんでヨゾラさんが私の前に⁉もしかして、ずっと見ていたのがばれて苦情を言いに来たのかも…⁉

いろんな悪い考えが頭をよぎる。するとヨゾラさんはいつもの笑顔と飄々とした様子で口を開いた。


「あの、すみません。ちょっとあなたにお聞きしたいことがありまして…ここに座っても良いですか?」

「は…はは、はい…どうぞ…」


私に断る選択肢は無かった。

異常なくらい彼を見ていた自覚もあるし、問い詰められてもおかしくない。

完全に悪いのは自分だが、ヨゾラさんは綺麗とは言え男性。少し怖くなった。


「それでは、お邪魔します」


そう言って目の前に座る。

何を言われるだろうと私は生きた心地がしなかった。


だが間近でみたヨゾラさんはとても綺麗で、夜空を連想させる深く青い瞳をしていたことが分かった。

その綺麗な瞳に吸い込まれるように目が離せなかった私は、少し恐怖が薄れていた。


ヨゾラさんは優しく笑って話し始めた。


「突然すみません。単刀直入に言いますが、昨日忘れ物をしませんでしたか?俺が預からせてもらっていたんですけど、こちら、あなたのですよね?」

「え…?」


テーブルの上に置かれたのはUSBメモリ。

間違いなく、どう見ても私のものだった。一気に血の気が引いた。全部、知られた…?

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