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魔改造現代童話 ヘンゼルとグレーテル

作者: 青木翠

魔改造第三弾。

いつもと少し違うテイストにしています。

こう、夏らしく。


追記 遠野の名前、適当につけすぎたせいで美女と野獣のときと異なってます。

   すまん。


第三話「ヘンゼルとグレーテル」


夏のある日。放課後の空き教室の一角。第二学年の遠野世界とその後輩収拾院ノリコは、新作の炙りサーモンバジル味のポテチをつまんでいた。

「これ、おいしいですね。恒常販売すればいいのに」

「あー、期間限定味にかぎてって妙においしいよね。あるあるー…お、SSR当たった~」

「そのくせトマト味みたいな意味わからないものを常時販売したりしますよね」

「あー、い〇はすでよくある。あるあるー…お、星5来たじゃん」

ほのぼのと会話をしながら、ポテチを食べる。ついでに汚れてない手でガチャを回す。

「炙りサーモンバジルで思い出したんですけど、久保先輩捕まったらしいですよね」

「あー、KBITKでしょ。あるあ…いやねーよ!?」

突然の情報に遠野は驚き、勢いあまって持っていた大きめのポテチをパリッと握りつぶしてしまう。

「えー?めっちゃ初耳だし。いやいつか捕まるとは思ってたけど。懲役何年?」

「いや、それが刑務所じゃなくて。お菓子の家に捕まったらしいんですよ」

「うわーーーー??ごっつメルヘンなのきたーーーー」

まーた意味不明案件かと、今までのフラッシュバックと共に遠野は後ろの机にもたれかかる。後輩タックル、野獣と化した先輩。自由形フリー球技大会。目玉焼き醤油派ソース派による、きのこたけのこ代理戦争。しゃべるマグロ。その他もろもろ全部ろくな事件じゃなかった。今回もさぞ意味が分からないのだろう。遠野は心を限りなく無に近づけ、とりあえず話を聞くことにした。そろそろ悟りが開ける日も近い。

「で、何で捕まったし?」

「お菓子の家に『触れたもの全て炙りサーモンバジル風味になる液体』をかけたらしくて」

「いや馬鹿なの?」

「今子供と同じ牢屋にいれられて、労働させられてるらしいです」

収拾院がスマホを手早く操作し画像を見せてくる。そこには満面の笑みで女の子と自撮りに映る久保千佳の姿があった。

「いやめっちゃエンジョイしてるじゃん」

「エンジョイしてますよね」

「もうこれ放置していいでしょ?いいよね?」

「…………そう、ですね」

テロレン、とちょうど久保千佳からメッセージアプリの着信。トークルームを開くと「なう笑」という一言共に、いかにも邪悪な感じの老婆がめっちゃ笑顔で子供を鍋に沈める動画が送られてきた。

「いや『なう笑』じゃないし。なにわろとんねん」

「事案ですねこれ」

二人は顔を見合わせる。

「えぇー…………行ってこれ間に合う?」

「とりあえず確保しに行きましょ、殺人事件ですし」

「警察ぅー」

「警察が『お菓子の家で殺人事件が!!』といって動いてくれますか、先輩?」

「うーわーめっちゃ頭花畑って思われそうー」

はぁぁぁぁ、と深くため息をつき諦めと覚悟を決める。ため息ついたところで、もう既に不幸なのだから幸せも逃げようがないだろう。

「行きますかぁぁ……場所は?」

「ちょっと待ってくださいグーグルマップで」

「いや載ってるんかい」




そうして徒歩五分、何故か墓地が周りに乱立するマンホールをくぐり下水を軽く駆け抜けた先、開けた空間の中にお菓子の家はあった。外装は全てクッキー。二階建てで、無意味に太陽光パネルが取り付けられている。

「いや衛生面どうしたし????」

「少し炙りサーモンバジル液をかけた久保先輩の気持ちがわかったような…」

「とりま中に入ろ、ていうかバジルくさっっっっっっっ」

ドブとバジルサーモンの匂い、そして若干チョコの匂いのするクッキーのドアを開き中に入る。

中にはクッキーで埋め尽くされた壁、クッキーでできた家具、そしてクッキーでできた階段やドアがあった。

「クッキー大好きか!?!?バリエーションどうしたバリエーション!?!?」

「先輩!!気を付けてください!!」

「どうしたし!?!?」

「ここの家、ビ〇コにア〇フォート、ステ〇おばさんのクッキー、その他多種のクッキーをそろえてます!!!!」

「すっごいどうでもいい!!!!」


「はぁぁぁぁ…………単発するか?いやどうせインドになる…………」

お菓子の家改めクッキーの家、その中央のクッキーのテーブルの前に人が座ってることに二人は気づき、警戒する。しかし向こう側はこちらに気づかず独り言をぼやき続ける。

「3万5千入れたのになぁ、どうしてVVちゃん当たらないかなぁ、なんでインドが二枚も来るかなぁぁ…………」

「あれは……!!」

「知ってるし収拾院!?」

「ガチャの亡霊です。いくら課金ガチャしても目当てのキャラが出ない、そんな運の悪さ、ソシャゲ運営の悪意、課金を促進する風潮が生み出した現代のモンスターですよ。あふれ出るマイナスエネルギーは触れた相手の精神力をゴリゴリ削ります」

「なんか急に社会問題一歩手前のやつきたし」

「あのオリィマーフィーもi〇unesカード片手に戦って勝てなかった相手です」

「いや誰だし?オリィマーフィー誰だし?てかカードで人倒せるわけないでしょ、普通」

「あの家に幽霊を飼ってる百均の帝王、オリィマーフィーですよ?」

「いやーいらないその情報。そこにぶっ刺さってるビ〇コ並みにいらない」

そうですか、と少ししゅんとする収拾院を放置し遠野はガチャの亡霊を観察する。

「あれだけ性能評価してたのにまさか来ないなんてな、フラグをきれいに立ててたんだな僕は……来ないわけだよ、インドが確定するわけだ」

いやそのインドディス何?と突っ込みたくなる気持ちを抑え様子をうかがう。

「もう虹回転が怖い、虹回転からのインドの夢を見て三回くらい起きたっけな……インドが僕を起こしに来るんだ」

もういっそヒンドゥー教徒入れよという突っ込みをお抑え遠野はポッケの中の財布を引っ張り出し、中のi〇unesカードを見る。1500円分のカード。

遠野は手裏剣の要領でカードを亡霊に投げつける。それでようやく亡霊はこちらを気づいたらしく濁った眼で二人を凝視する。

「使用済みのカードか…?」

「私がスタンプ買うために買ったやつ。なんか可哀そうだからあげる」

「というかあなたは誰?」

「いいから回して、ガチャ回して」

カードを受け取り何故か渋々コードを入力する亡霊。目的のソシャゲを開いたのか虚ろな目でスマホのボタンを連打し始める。

「どうせインド…!?!?!?!?VVちゃん!?!?!?!?」

「お、当てた?」

「これが友情パワーですか?」

「一辺も友情ないっていうか初対面じゃん、普通に」

「やったぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!これで劣等感から解放されうっぷ……」

「え?うっぷ??何故吐き気??」

「緊張と極限と同時に胃の中身が解放された…?策士ですね先輩」

「いやガチャの喜びで吐くとは全く想像してなかったんですけど」

亡霊はありがとうというジェスチャーをしつつクッキーハウスを大急ぎで出て行った。多分ドブに直接ゲロるのだろう。葉を隠すなら森、ゲロを隠すならドブというところか。いや違うか。

「とにかくこれで先に進めるかな」

「ありがとうございます先輩!!このままどうしようもなかったら切り札を出そうかと思ってたんですけど」

「切り札?」

制服のポケットから収拾院は謎のスイッチを取り出す。

「視界のものを任意で爆破するスイッチです」

「こっわ!!??!!??」

「最悪の場合、久保先輩ごとこのクッキー家を爆破します。その覚悟をしておいてください」

「えぇー、なんでお菓子の家ごときで爆破に巻き込まれる心配しなきゃいけないの…」

他に刺客や門番らしき人物はいないかと一階を見て回るが、何もなかったため、二人はクッキーの階段をサクサク駆け上がった。


二階に上がると大きな広間に出た。もちろん内装は全てクッキー。奥に巨大なアチアチの鍋をかき回す老婆、煮られる子供、それを「ほへー」という表情でお茶を飲みながら眺める久保千佳の姿があった。

「間に合いましたね先輩!!まだ煮込んでます!!」

「普通に間に合ってないから!!そこまでだしBBA!!」

二人のシャウトでようやく気付いたのか、老婆はゆっくりこちらを振り返る。

「イッヒッヒ、よく来たねぇお菓子の家に。好きなものを食べなさいな」

「好きなものっていうか一種類しかないんですけど」

「??ビ〇コも、ア〇フォートも、ス〇ラおばさんのクッキーもあるじゃないか。何が不満なんだい??」

「いや全部クッキーだから。小麦粉だから」

「まさかあんた、ポテチ界の回し者かい…?」

一触即発の老婆と遠野。そんな火花散る、いや、小麦粉と芋の散る二人の間に捕虜・久保千佳がのんきに割って入る。

「まぁまぁ。クッキーが不満なら私の薬で『炙りサーモンバジル味のポテチ』にしてあげるから」

「限定的!ていうかのど乾いた。そのお茶もらうわ」

遠野は久保千佳からお茶をひったくり飲み干す。香り豊に炙りサーモンバジル味がした。

「まっっっっっっっっっっっず!!??」

「おいしくないか?」

「馬鹿か、馬鹿なの??飲み物をこんな油ギトギトの食べ物の味にする普通???」

「でもおいしかっただろ?」

「マズイって言ったでしょうが!?!?!?」

「はい先輩たちすとーっぷ。遠野先輩は落ち着く、久保先輩はいつまでも炙りサーモンバジルを引っ張らない。それ前の事件のやつですから」

できる後輩収拾院の仲裁により、仲間割れは中断。三人で老婆に向き直る。

「仲間割れはおわりかい?ちなみに私はしめ鯖が好きだよ…イッヒッヒ」

「めちゃくちゃどうでもいい情報ありがとうございます、とりあえずその子供を解放してもらえますか?」

「今煮てるヘンゼルのことかい?ダメダメ、私はこの子をぐつぐつにしなきゃいけないのさ」

「キラキラネームぅ!!」

「私がつけたんじゃなくて、本人が名乗ったから私しらない。とりあえずグツグツにしないと」

「いやもう既にグツグツだし。オーバーキルだし」

先ほどまでピクピク動いていた子供だが、今はもう全く動く気配がしなかった。

「あらやだ、煮すぎたかね?千佳ちゃん何分たったかい?」

「16分、一分オーバーだよグランドマザー」

「待てお前どっちの味方なの?」

「いや、仕事はしっかりしないといけないかなって」

揉める二人をよそにいそいそと、老婆は鍋から子供をひっぱりあげる。男の子だった。

「くっ…間に合わなかった」

「せめて食べさすわけには…!!」

それを聞き、ん?と老婆は首をかしげる。

「何言ってるんだい、子供を食べるわけないじゃないか。常識だろう?」

「え?」

「ここに来て下水のお菓子の家に住んでる人からまともなコメントが?」

「そうだぞ子供を食べるわけないじゃないか。馬鹿か二人とも」

無言でスパァァン!!と久保千佳の頭をひっぱたく遠野。それに便乗して収拾院もファサッ…と優しさたっぷりラブ&ピースという感じに、久保千佳をひっぱたいた。というか撫でた。

「どういう意味?ここは少年少女を拉致監禁飲食する犯罪巣窟じゃなかったの?」

「イッヒッヒwwww、絵本の読みすぎじゃないかいお嬢さん?メルヘンだねぇ!」

「材質百パークッキーの家に住んでる老婆に言われたくねぇ!!」

「いやでも子供を鍋で煮て…」

「ん?治療の事かい??」

とたとたとた。足音がした方を向くと、そこにはグツグツ煮込まれて絶命したはずの少年が立っていた。

「おばあちゃん!クッキー食べても大丈夫かな?」

「小麦粉アレルギーは治ったはずだからねぇ、お食べなさい。ほれビ〇コ、強くなるよ」

少年にお菓子を老婆が手渡すほほえましい光景を見て、遠野と収拾院は顔を見合わせる。一体どういうことなのか。

「とりあえず話を聞いていったらどうだ、二人とも?」



「小麦粉アレルギー治療センター?」

「そうだよお嬢さん方、ヒヒ」

老婆の話をまとめると、ここは親に無理矢理そうめんを食べさせられたり、クッキー生地でぶたれたり、小麦粉虐待を受けた小麦粉アレルギーの子供たちの行きつく場所らしい。

家が全部クッキーなのは、半分趣味、半分子供が来やすくするため。そして家が下水道の広場にあるのは、半分趣味、半分実用性を兼ねてということなそうだ。

「ごめんんさい下水道の趣味と実用性が全くわからないです」

「地上だと鳥、獣、虫の三種類の対策をしなきゃいけないからねぇ。こっちはネズミとその他だけでいいのさ」

「なるほどー、ん?趣味は?」

「アイドルグループが、あえてブスをチームに入れて美人を際立たせる話を知ってるかい?それと同じ要領で、ドブの中にあるこの家はよりいい匂いに際立つというわけさ。イヒヒヒヒ」

「いやぁー、匂いが交じり合ってモンスタースメルが生まれるだけでしょー」

結局のところ、ドブの中に君臨するクッキーハウスの異常性はさておき。誰も捕まったわけでもなくグツグツに煮込まれた後、クッキーの生地に練りこまれたわけではないということが判明。

無駄足というか余計な徒労だったね、と遠野と収拾院は力なく笑った。ちなみに久保千佳は怒られた後、人手不足ということで自給770円とクッキー食べ放題の待遇でバイトしていただけらしい。


「悪いねぇ、ヘンゼルを頼んだよ。あ、みんな好きなクッキーを持って帰りなさい」

「「「ありがとうございましたー」」」「お疲れさまでしたー」

クッキー家を後にして、三人プラス一人で下水の中を歩く。女子高生組はビス〇コ、ヘンゼル少年は小さめの立体ガイコツクッキーをもらった。どうしてか久保千佳は不服な様子だった。

「ヘンゼル君、今何歳?」

「にじゅういっさい!!」

「まだ拳で抵抗する年じゃないでしょ~、本当は?」

「ななさい!」

そんな風にキャッキャウフフとドブの中可愛い会話を繰り広げつつ、久保千佳曰く帰るのにちょうどいいポイントらしいマンホールの下に到着した。

「ヘンゼル少年、先に上がるといいよ。あ、私がこのガイコツちゃんを持っておくよ」

少年は久保千佳にガイコツを受け取りするするとハシゴを登っていく。

「しかしこのガイコツちゃんのクッキー、精巧だな。まるで理科室に置いてるアレだ。私も欲しいぞ」

「でもサイズ感かわいいですよねー。お先しつれいしまーす」

遠野と久保千佳を置いて、収拾院は地上へのぼっていった。

「遠野、先に行っていいぞ。これ落としたら大惨事だからな」

「バラバラに砕けるしね。あ、誰もいないからってそのクッキー味見したりすんなよ?」


三人が登り終えたのを確認し、こっそり久保千佳はガイコツクッキーをかじろうとして、やめた。

「……んー、やめとくか」

その後少し味見するかどうか悩むそぶりをみせたが、諦めて久保千佳はガイコツ片手にハシゴをのぼりはじめた。


「おねぇさんたち、じゃーね!!」

「ばいばーーい!!!」

帰るのに最適なポイントとは、偶然にも最初に二人が使ったマンホールと同じだったらしい。

家はこっちだから、大丈夫だよとのことでマンホールの上で3人と1人は別れた。もらったクッキーを大事に抱えて、高めの塔めがけて一本道を走っていく少年の後ろ姿を見送り、遠野は感慨深げにため息をつく。

「小さい子は可愛いなぁー」

「先輩、ショタコンですか?」

「ショタ……なにそれ?」

「小さい男の子が好きってことです」

「へぇー、じゃあ私ショタコン!!」

二人はにぎやかに会話を続けるも、久保千佳はうんうんと、どこで拾ったのか分からない赤い粉を手にうなり続けていた。

「KBTIK、どしたし?ドブの匂いがきつかった?」

「いや、大したことじゃないんだが。さっきガイコツのクッキーを持ってた時に『これ実は本物じゃね?』って思って。確かめるためにかじろうとしたんだ」

「ガイコツが本物か確かめるためにかじろうとする狂気、さすがです先輩」

「よせよ褒めるな。でも、これがクッキーだったら少年に悪いじゃないか。だからこっそりカルシウムに反応する液体をかけたんだ」

「ほんと馬鹿なの?反応したわけ?」









「あぁ、したんだよこれが」

しん、と三人の空気が凍る。


「……たち悪いですよ、先輩。そういう風に怖い話するなんて」

ちょっぴりビビり気味の収拾院をしり目に、久保千佳はさっきもらったビス〇、そして液体の入った瓶を白衣から取り出した。

「確かこの菓子は、カルシウムが豊富に含まれてるんだよな」

強くなれる、というキャッチコピーの菓子に液体をかけると、じんわりと赤くなった。

「い、いやぁーまさかー?」

「歯で試してみるか?魚の小骨でも構わないけど」

「その手の、赤い粉は……?」

「彼のガイコツから採取したものだよ」

ふっと、風が吹き少女の手から赤い粉が宙に舞って、霧散する。

「二人とも、あの家に来るときマップを開いてきたか?」

「……それが何?」

「ここの周り何があるか確認したか?」


”何故か周りに墓地の乱立するマンホール”、その事実を思い出し遠野はもう一度マップを開く。

見間違いなく、周りには墓地がたくさん。

「少年の走っていった方向にあるもの。私の予想が正しければ」

画面をスライドし、少年が向かった道を追う。

その先にあったのは集団墓地。道はいっさい枝分かれする道はなく、入れる建物もなかった。


「お菓子の家にヘンゼルが訪れるのは分かる。彼も冗談で言ったんだろうが、グレーテルはどうしたんだろう。これは……私の考えすぎなのか」

”かわいいサイズのガイコツクッキー”。あれはひょっとしたら。あの”クッキー”の大きさは、ヘンゼル少年より、少し年の小さい、女の子のソレと同じ大きさだったのではないか。

「……考えすぎっしょ」

「そうかな、つじつまが」

「合いすぎてむしろ不自然です。さ、帰りましょ先輩方」

突然二人の手を掴み、帰り道に向かい始める収拾院。その手はかすかにふるえていた。

「あーあー、後輩びびらせたーー!!KBTIKが後輩泣かせた―ー!!」

「な!?!?ビビってもないし泣いてもないです!!ですわよ!?」

「泣いてないらしいしいいじゃないか、どうせだから少年が走った方に」

「帰りましょ!!すぐに!!!」

ずるずると、後輩に手を引かれながら遠野は少年の帰路の方を振り返る。

高めの塔。あれは、恐らく、墓標なのだろうか。調べようと思えばすぐに調べれるが、そんな気が起きない。

ふと、途中で久保千佳が「落としたら大惨事だから先に行け」と言ったことを思い出す。

あれは、もし彼女がガイコツを落としたら、遠野に固めの物体が当たることを危惧したのか。それとも落としたことにより、あの場でに事態が明らかになることを恐れたのか。

果たしてそのどっちだったのだろう。

「……ま、どっちでもいいか」

「どうしたんだ遠野?」

同じくビビる後輩に引きずられる同級生。さきほどの事を全く気にかけていないのか少しアホっぽい顔をしていた。

「なんでもない。さ、帰ろ帰ろ」

「そうです帰りましょ!!あ、うちによりませんか?というか泊まりません、今日??」

「ビビりすぎじゃないか?」

「ビビらせたお前が言うなし」

そうしていつも通り、少女たちはにぎやかに夕日のほの暗く照らす道を、軽やかに歩いて行った。まるで放課後の廊下を駆けぬけるように。




「あ、でもあれおばーちゃんからもらったクッキーなんじゃ?」

「さっきマザーに確認したけど『そんな悪趣味なクッキー作ってないねぇ』とのことだ」

「もうやめましょ!?その話!!」


FIN

ね、言ったじゃないですか。いつもと違うテイストって。

そういえば元々ヘンゼルとグレーテルって、青髭ことジル・ド・レェが子供を誘拐していた話がモチーフになってるって聞いたんですけど、本当のところはどうなんでしょうね。

ギャグ物特有のホラー回。そんな怖くないけどホラー回。そんな第三話でした。

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