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白夜 53話 レイセン達の思い

次話を読んでいただきありがとうございます。

八雷神の継承者になろうとするレイセン、その思いの根幹をクロがディアに…


 クロはティリオと共に、エルドリッジに内部の広いドームで作業をしていた。

「いやぁぁぁ。材料工学のスペシャリストさんがいると、色々と助かるわ」

と、クロは言葉にして装置を組み立てる。


 ティリオは作業用の特別な万能機デウスメーカーに乗って、色々な材料を運び込み

「まさか…回収したオメガデウス・ヴァルヤの調節に持って来た色んな道具で、こんな事をするなんて思わなかったよ」


 クロとティリオは、二人してトリガー型の超越存在の覚醒を行う装置を作っていた。


 その装置達に繋がる端末に、ソフトを入力するのはディアで

「ええ…お二人には、助けてもらって感謝しています」


 クロは作業用のマキナ(人型機体)を操縦しながら

「オレは、何をしていない。ここに運んで、装置を組み立てているだけだ」


 ディアが

「クロさんは、エネルギー工学の専門。ティリオ様は材料工学の専門。お二人がいなかったら…ここまで出来ませんでしたよ」


 クロが

「へぇ…そうか…」


 ティリオが平静に答えるクロに違和感を感じるも

「あと、少しで必要な材料の生産は終わりますので、終わったら自分もクロさんの手伝いに回ります」


 クロが

「いや、ここはオレで十分だ。ティリオは…オメガデウス・ヴァルヤの調整をしてくれ」


 ティリオが

「何か問題でも?」


 クロが

「やっぱり複座の操縦での連結が上手く行ってない感じがする」


 ティリオが頷き

「分かりました」


 必要な材料の生産と準備が終わったティリオがオメガデウス・ヴァルヤの調整へ回り、このドームにはクロとディアの二人だけの作業になり、クロが

「ディアさん、一つ…教えてくれないか? どういう状況になって、ヤライの力をレイセンのお嬢さんが求めるようになったのか?」


 それにディオはためらい気味に

「全ては、レイセンの純粋な願いからです」


 ◇◇◇◇◇


 ディアの語り

 レイセンは、八雷神の直系のである。

 ヤライには伴侶がいた。

 その伴侶から生まれて続いたのがレイセンの血筋だ。

 この宇宙文明級な世界では珍しい事だ。

 宇宙文明級の世界では、男女の営みによって子供を授かるのは、ごく一部の上流階級のみ。

 後の多く99.99999999999%、圧倒的大多数は、調節された高性能な生殖細胞から生まれた精子から誕生する。

 つまり、宇宙文明級の世界では、男女比が圧倒的に女性が多くに傾くのは仕方ない傾向だ。

 文明の発達に男女は必要ない。

 必要なのは個々の資質と能力、宇宙文明級な世界の技術から作られるマシンを正しく扱う人格。

 レイセンの付き人として従っているミレセンとアイセンとて、宇宙文明級の世界の当たり前から誕生している。

 ディアもデザイナーズという人工的に誕生した超高性能人類だ。

 レイセンは、いわば…地球という惑星に囚われていた時代の価値観を持ちつつ今の宇宙文明級の世界の二つを持つマイノリティ、少数なのだ。

 男女による、父母、親から生まれるのがマイノリティーな世界。

 そこで、レイセンは…恋をした。

 恋をした相手は、ディアの上司に当たるデザイナーズ、ヴァイレンだ。


 クロ達を止めよとした男だ。


 ヴァイレンに好意を寄せるレイセンだが。

 それは…叶わない。

 ヴァイレンには、作った者達、その主となっているファイライ時空のトップの意向による枷が付いている。

 ヴァイレンは、ファイライ時空を維持していく為に存在するデザイナーズだ。


 同じ人ではあるが、社会的な役割によって階層がある。

 それは、別に珍しい事ではない。

 上流階級には上流の、中流には中流の、下流に下流の、そういう社会的な階層があり、それによって世界の安念が保たれている。

 差別は悪い事だ。だが、人が人として生きるには、どうしても階層を形成しなければいけないし、形成されてしまう。

 どんなに足掻いても、人の世界、社会には、階層が生まれて、それによって分けられて、維持されて、平安が守られている。


 ヴァイレンとレイセンの恋は、実らない。

 悲恋の物語であり、仕方が無い事でもある。


 だが、レイセンはそれを良しと思わなかった。


 もし、この階層を壊せるなら…。いや、自分がその階層を弾き飛ばして思いを貫けるなら…。

 レイセンは、その方法を探した。

 それを…ディアが見つけた。


 かつて、ファイライ時空に大きな栄光と絶望をもたらした超越存在、八雷神の後継者として自分が立てば…ファイライ時空の復興と共に、それを愛おしいヴァイレンと…


 ◇◇◇◇◇


 ディアがクロに深い物語を語った。

「そういう事があるの…」


 クロが

「ふ…ん。実らない恋を実らせる為に…か」


 ディアが

「レイセンがファイライ時空を何とかしようとする事も事実だし、それをする必要な理由もあるわ」


 クロが顎を摩りながら

「まあ、カワイイお嬢ちゃんの気持ちを、叶えてやりたいってのは分からんでもないが…。それって正しいのか?」


 ディアが瞬きして

「正しいって」


 クロが訝しい顔で

「ヴァイレンのヤツは、それを望んでいるのかなぁ…って思ってよ」


 ディアが一瞬だけ固まるも

「勿論、それをヴァイレンも望んでいるわ」


 クロがその隙を見逃す事はない。

 なんだ? 今の戸惑い…まさか…


 クロが怪しむ視線を向けるとディアが

「ヴァイレンの気持ちは、作成者の枷でも…コントロールする事は出来ないのよ。ブレーキと気持ちは、別だから」


 クロが考える。

「まあ、確かに…」

 枷は、その行動を止めるブレーキであって、そのブレーキがあるからこそ、思わない訳ではない。

 話の筋としては…通っている。

 ヴァイレンとレイセンが結ばれる為に、レイセンが八雷神の継承者となってヴァイレンを補佐にして、恋人となり…二人してファイライ時空を支える。

 だからこそ、ファイライ時空は既存のアルテイル時空共和国に属したまま、自らの安寧を考えて行動すればいい。

 全てのピースは揃っている。

 だが、何故か…クロにはシックリこない。

 あのヴァイレンを見た時に、クロは…ヴァイレンの瞳の奥から鈍く熱い…怒りのような熱量を感じてしまった。

 それが…気になって仕方ないのだ。


 そんな思いを抱えつつ、作業は進める。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら

ブックマークと☆の評価をお願いします。

次話を出すがんばりになります。

次回、ヴァイレン少佐

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