白夜 45話 探索の星艦
次話を読んでいただきありがとうございます。
星艦の探索を開始したクロ達だが…
クロは、今回の星艦調査であり実戦訓練でもあるメンバー達のデータを見つめる。
「全員、基礎はできているんだよなぁ…」
クロは腕組みして悩む。
何の訓練が必要なんだ?とクロは思ってしまう。
ベイルラム・インダストリーからミシガン大佐達の子孫であるミリアス、ミリー、アルナの彼女達三人。ベイルラム・インダストリーでも相当に実力がある。
そして、アークシアのナイツの彼ら彼女ら、上官のジーズを合わせて七人。
更に、ライアス達四人。
まるで、将来…
クロの回りに何かの繋がりを構築させようという、明らかに誰かに仕組まれたような匂いがする。
「ガージェスト…か?」
と、クロは口にする。
インドラ時空帝国からアルテイル時空共和国という大きな時空連邦国家になった。
その巨大な国家を維持するには大きな力、力を纏める象徴と、それを担保する力が必要だ。
地球時代にあった人心を集められる存在によって組織は維持されていた。
この宇宙時代では、人をどれだけ生かせるシステムがあるか?が組織を、国家を維持するのに必要だ。
地球時代の惑星に閉じ込められた世界では、人命は紙のように軽い。
宇宙文明や時空級文明になると、人命は組織より重い。
実際、アークシアは…その人命を軽視して自分達に近い者達を守ろうとした結果、宇宙王、超越存在として覚醒した後に色んな補償をしているが…それでも回復しない信用がある。
クロは面倒な感じで頭を掻く。
「だからこそ…」
そう、だからこそ…信用を回復できる機会へ力を投入する。
言いように使われているような気がするが…。
と、クロが考えていると、クロのいるデータ分析室のドアが開き
「どう? 訓練のプランは決まった?」
と、レナが入ってくる
クロがレナを見つめると、不意にレナの横顔にサクラの気配を見てしまう。
メディーサの孫弟子にあたるミカガミ女王が作ったデザイナーズだ。
サクラの因子を…それはいい。レナはレナだ。
「ああ…全員、基礎が出来ているから。大凡の目的と動きの指導だけだな」
と、クロはレナにデータを見せる。
レナがデータを見ながら
「そう。じゃあ、何時に出発するの?」
クロがその場から動き
「明日さ」
レナが
「いいの? 星艦のデータとか調べなくて…」
クロがレナに微笑み
「星艦は、決まった戦闘システムしか持っていない。まあ、星艦じゃあなかったら…確保を止めて、逃げの一手さ」
レナが「ふ…ん」と鼻で頷く。
クロがそれにサクラの仕草を見てしまう。
「レナ、明日の為に先に休むわ…」
レナが瞬きして
「そう、おつかれ…」
クロが部屋から出ると
「レナは、レナだろう…」
と、呟いて歩き出す。
◇◇◇◇◇
全長1000メートルの巨大宇宙戦艦が出発する。
その宇宙戦艦の艦長が隣にいるミリアスを見て
「ミリアス大佐。五時間後には予定のボイド領域に到着します」
ミリアスが予定の航路を見て
「超空間ネットワークトンネルを経由して…か…」
艦長が
「本当に、そのボイド領域に目的の星艦があるのですか?」
ミリアスが艦長に
「反応ではね」
艦長が帽子のつばを持ち
「ボイド領域は、斥力が強いです。引力と斥力が拮抗している宇宙域とは違って、ダークエネルギーの斥力が集まって出来た領域です。要するに…暗黒エネルギーの密度が違う。そこでは…物質も早くに素粒子となって消えやすい。まあ…普通よりは少し早いくらいですが…」
ミリアスが
「そのダークエネルギーの斥力が集まったお陰で、光も…様々なセンサーの探査エネルギーも中心には届きにくい。考えようによっては、何かを隠すには…」
艦長が厳しい顔で
「我々は、その入口までしか行けません。後の投入は、我々の艦から伸びるエネルギーケーブルに繋がって、大佐達が乗った宇宙戦艦が探査するしか」
ミリアスが笑み
「まさに地球時代でいうなら、深海探査ようなモノね」
艦長が少し呆れ気味に
「幸運を…」
ミリアスが
「何もなかったら、それまでよ」
◇◇◇◇◇
クロ達が乗る巨大宇宙戦艦が目的のボイド領域の入口に来る。
そのボイド領域へ向かって二百メートルの宇宙戦艦が降りていく。
それに乗っているのは、クロとレナ、ミリアスとミリーにアルナ、ジースが連れるクリニア、ナルファ、アークア、ジェイス、ガルダス、アルヴァに、ライアス達のライアスとファリナ、マリア、ツルギ。
そのメンバーと、そのメンバーが乗るマキナが乗っている。
クロは宇宙戦艦の司令室から降りていくボイド領域を見つめる。
宇宙戦艦は、ツルギが操作して、隣にアシストとしてジースが付き、ジースが
「ボイド領域へ入るが初めてで緊張しますね」
宇宙戦艦を操縦するツルギが
「ああ…光さえも呑み込まれて消える二億光年の領域…」
クロが
「心配するな。元の宇宙戦艦からエネルギーケーブルが伸びている。ここで迷う事はない。まあ、迷っても…オレが何とかしてやるさ」
ジースが
「ボイド領域へ潜った経験が?」
クロが笑み
「ああ…作戦で、ボイド領域を突き抜けて攻撃なんても…やったさ」
ツルギが
「よく出来ましたね。ボイド領域は…その暗黒性の高さから、探査や方向を調べる力やエネルギーが働かない。道標を失ったら最後、その中心であるもっと深い暗黒へ落ちてしまいます。真っ直ぐ進んでいたとしても、実は同じ場所を回り、より深みへ…」
クロが自分の額を指さして
「オレは、人より認識できる領域感覚が広いし敏感なんだ。数億光年くらいなら目隠ししても、その領域感覚を使って正確に移動出来る。まあ…超越存在の特性ってヤツだな」
ジースが
「では、ウチのナイツの彼ら彼女らも…ボイド領域で迷う事は…」
クロが笑み
「ないだろうね」
ツルギが
「なるほど…クロさん達が選ばれた理由が分かりました」
クロがツルギとジースの間にいて
「そういう事だ。それよりも…星艦の信号は?」
ジースが
「一定の周期ですが…発信されています」
クロがジースが見ている画面をタッチして
「この波長…」
ジースが
「何か、気になる事でも?」
クロがポケットからチョコレートスティックを取り出して
「普通なら、自分の位置を知らせる信号に、自分の現状を伝える暗号が入っているはずなんだが…」
と、クロはキャッチした波長を解析して、暗号を取り出そうとするも、全くない。
「どういう事だ? 星艦の状態を伝える暗号が入っていない」
ツルギが「まさか…」と、これは罠?という顔だ。
クロはチョコレートスティックをかみ切って
「罠だとしても、食い破れる」
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次回、星艦と接触