白夜 43話 新たな機体
次話を読んでいただきありがとうございます。
クロのプライバシー違反のツケは…
クロは、腕組みして仁王立ちしている。
クロの右隣にはレナがいる。
そんな二人の目の前に頭を下げる三名がいる。
一人はディオス、その右に青髪の老紳士ライドル、左に黒髪の同じ老紳士のアインデウス。
その三人の後ろで俯いているティリオがいる。
クロが苛立った顔で
「人の覗かれたくないプライバシーを侵害した。お宅さん達の子ってどうなんでしょうね?」
と、言葉の節々に棘がある。
ディオス達三人は顔を上げて、ライドルが
「ワシがそそのかしたのが原因だ。ティリオは悪くない」
アインデウスが
「本当に申し訳ない。ティリオと止められなかった。わたくしが原因です」
ディオスが
「父親として、息子の暴走を止められなかったのが原因です」
「本当に申し訳ない」とディオス達三人は深々とクロに頭を下げる。
それを後ろで見ているティリオは、泣きそうな顔をして俯いていた。
自分の軽率な行動によって、父親や伯父達を困らせてしまった。
恥ずかしさと悔しさと、色んな感情が溢れて苦しかった。
ディオスが頭を上げて
「どんな賠償でも償うつもりです」
クロがフンと鼻息を荒げて
「賠償で済むと思って」
「なら、お願いがあります」
と、レナが被せてきた。
クロが無言で驚き、隣のレナを見つめる。
レナが
「クロとわたしの機体、オメガデウス・ヴァルヤですが。損傷は修復されましたが…諸々の戦闘に耐える事が出来ないようです。だから、オメガデウス・ヴァルヤを改修して欲しいのです。それで、今回の事は贖罪が完了した…という事で」
クロが驚きの顔で
「うぇぇぇええええあうあうぇええええ!」
と、訳が分からないという驚きの声を放つ。
レナがクロを見つめて
「いいよね。それで…」
クロが困惑で
「え? ええ! えええぇえぇ?」
レナが鋭い視線で
「いいよね!」
と、威圧した。
クロは意気消沈して
「は、はい…」
レナがディオス達の方へ向いて
「そういう事で、お願いします」
ディオスが深く頷いて
「分かりました。誠心誠意、機体の改修をやらせて貰います」
クロは自分の意思を無視して話が進んだ事に、困惑と驚きの顔だ。
◇◇◇◇◇
クロとレナのマキナであるオメガデウス・ヴァルヤがディオス達に改修される。
それをイーシャ共に見上げるクロ。
イーシャが
「ごめんね。アタシの工房じゃあ、アンタ達の要求に応えられるような改修はできないんだよ」
クロは隣にいるイーシャに
「そこは、気にしていない。オレ達の面倒を見てくれるだけでも、ありがたい」
イーシャがニヤニヤと笑み
「アンタ、遠くの横から見ていたけど…レナに勝てないんだね」
クロがフッと笑み
「レナは、オレをこの世界に定着してくれた。それに…何か…逆らえないっていうか…傷を付けたくないって感じがあるんだよ」
イーシャが
「もしかして、アンタの一番大切だったサクラと…似ている?」
クロが真剣な目で
「かもしれない。もしかしたら…」
イーシャがクロの横顔を見つめて
「サクラの生まれ変わり?」
クロが首横をに振って
「そんな事は…いや、そうだとしても…レナはレナだ」
イーシャが空を見上げて
「命は巡る。何時か…クロードと繋がった命達の縁が…」
クロがその場から背を向けて
「もう一度、英雄として立て…なんて、ごめんだね」
と、歩もうとした前に、ティリオがいて
「すみませんでした」
と、ティリオが頭を下げる。
クロが溜息をして
「レナがそのケジメで良しとしたんだ。それで終わりだ」
と、ティリオの横を通りすぎようとしたが止まり
「小僧、憶えておけ…お前がバカをやると…多くの人に迷惑を掛ける事を」
ティリオが苦しそうな顔をする。
それを背にクロが
「つまりだ。お前に未来を期待している人達がたくさん、いるって事だ。気張れ、自分を戒めろ! そして…前に進め。今回の事は汚点だが、そこから学べる事は多い。俯くな、胸を張り、前を見て、自分がどれだけの多くの人達と一緒に歩んでいる事を理解して、進め」
歩いて去って行くクロに、ティリオは驚きの視線を向ける。
怒りではない、説法を説かれた。
改めて、ティリオは自分の事を…。
同時に、去って行くクロの背中に、ディオス達と似た強さを見た。
◇◇◇◇◇
最終確認、ディオスが確認のデータ端末をクロに渡す。
「これで良いかね?」
と、ディオスがクロに尋ねる。
データ端末を受け取って確認するクロが
「お前…今回の事、息子の成長に利用したろう」
と、クロが呟く。
ディオスが
「何の事でしょうか?」
と、含み笑みだ。
クロが呆れた溜息を漏らす。
最近のティリオは、正義の暴走を起こしやすい。それを注意しても直るのは難しいから、ワザと…クロを使って…
「お前は、本当に聖帝だわ。オレや、オレ達と戦ったカレイドのハジュンより…恐ろしいわ」
成功より、失敗の方が多くの事を得る。
もちろん、失敗させようとして失敗させるのは恨みが伴う。
だが、自分で選んで自分で行動させた結果による失敗には、大きな成長を与える。
今回の事は、ティリオが選んだ。そして、行動させて失敗となった。
この失敗を糧にティリオは、更に飛躍するだろう。
正義によって暴走するのは良くないという戒めは、何よりも強い力を持つ超越存在には必要な素養なのだ。
クロとレナのオメガデウス・ヴァルヤは、改修の為にディオス達が持って行く。
「さて、この間…どうするか?」
と、クロは頭を掻く。
レナがそこへ来て
「クロ、次の仕事…」
クロがレナに
「次の仕事って…オメガデウス・ヴァルヤがないんだぞ?」
レナが次の仕事のデータ端末をクロに渡して
「また、教官して欲しいって依頼があった」
「ああ?」とクロは受け取ってデータ端末を見ると
「はあぁぁぁぁ! ベイルラム・インダストリー!」
レナが
「クロが昔に一緒に働いていたでしょう。そのベイルラム時空傭兵団が元になった組織からの依頼だよ」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、子々孫々