白夜 42話 散る桜 後編
次話を読んでいただきありがとうございます。
サクラの元へクロード、そして…
有機体と無機物が融合したナノテクノロジーの最終到達点の存在、恒星間戦略兵器デウスに乗ってクロードは、サクラがいる場所へ飛んでいく。
時空を、空間を、圧縮して光速より速く、どんな速度よりも速く、サクラがいる場所へ向かった。
そこは、時空を侵食して呑み込もうとする七色の巨大な蝶だった。
蝶の羽のように七色の光が四対も連なって時空を呑み込もうとする力が働いている。
アヌンナキ・プロジェクト。
この宇宙を、時空を、自分達が思い通りにする為に高次元から操作して作り替えて思いのままにしようとする計画。
神と神の地を作ろうとした狂気。
本来は、クロードがそのコアになるはずだった。
クロードは、アヌンナキ・プロジェクトから生まれた存在。
高次元、神格、神がいる上位世界を分析して、人でありながら神、ホモデウスを創造する為にクロードは、神が入る人の器として作られた。
超越存在、それは人でありながら人として、高次元と時空を繋ぐ存在。
人が持つ可能性を最大限まで具現化した存在。
アヌンナキとハイパーグレートは近い部分があるが、根本が違う。
両者は一緒のようで、全く違う存在。
なのに、評議会は…何を勘違いしたのか…アヌンナキのコアとして超越存在を使った。
その結果、これだ。
間違いを間違いで上塗りした所で、更に大きな間違いとなるだけ。
アヌンナキのシステムが、サクラという超越存在をエネルギー源として…この宇宙を呑み込もうとしていた。
クロードが乗るデウスが、中心にサクラがいる元へ来た。
全長30億キロの星艦がそこにあった。
その星艦から力が溢れて出ていた。
車輪を持つ十字架の形をした星艦、そこにサクラがいるのが分かる。
ここまで近づけるのはクロードだからこそだ。
それ以外は、星艦から放たれる力によって呑み込まれて消えてしまう。
クロードはゆっくりとサクラがいる星艦へ入る。
恒星を動力源とする星艦の中心、惑星サイズの装置、結晶の星へクロードは近づく。
この星艦の中でさえ、膨大なエネルギーが渦巻いている。
まさに太陽の中心にいるような超高エネルギーの中でも、クロードは自分が放つ黒い波動の力によって無傷だ。
そして、クロードは…サクラが組み込まれた巨大な結晶の塔へ到達する。
塔と呼ぶには巨大すぎる全長数千キロの結晶の柱へ近づく。
クロードは、デウスの手で数千キロの結晶の塔に触れると、その中にいるサクラを感じた。
サクラは、装置を動かす動力源にされていて、微かに存在が残っている。
クロードは微笑み
「サクラ…ごめんな。オレのせいだ。こんな事になって…」
クロードは決意する。
自分の力を全て使ってサクラを…
「こんなオレを大切に思ってくれて、ありがとうな。サクラ…」
クロードは自分の力をオーバーロードさせる。
黒い波動は、黒いエネルギーの奔流となって、サクラのいる数千キロの結晶の塔を包み込む。
そして、その黒いエネルギーの奔流が星艦に吸収されて、アヌンナキの力を相殺する。
クロードは自分が持っている全ての力を消費して、サクラを助ける。
だが…
クロード、帰ってきてくれたんだね…
クロードの意識にサクラの意識が流れ込む。
サクラが
「ごめんね。私…クロードをもっと…」
と、伝える。
クロードが微笑み
「いいや、オレが悪いんだよ。君をもっと大切にできなった…から」
サクラが
「クロード、生きて…私の分まで」
クロードが驚愕して
「サクラ! 止めろ!」
サクラは自分の力を依り代として、クロードの力を飲み込み、クロードへ自分の力、超越存在の力を流し込む。
クロードは二つの力をサクラによって授かる。
超越存在とアヌンナキという二つの性質が全く違う力がクロードの中に宿る。
同時に、サクラも超越存在とアヌンナキの二つの性質の力を持ち、その力で…この時空を呑み込もうとする力を高次元へ持っていく。
「止めろ! サクラぁぁぁぁ!」
と、クロードが叫ぶ。
このまま高次元へ行くという事は、存在が消失するという事だ。
サクラが
「クロード、生きて…」
と、残して時空を侵食する力の全てを高次元へ持って行き、自分もその重しとして
「サクラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、クロードが叫ぶ。
この時空を侵食、呑み込もうとした力が消えて、桜色に変わった。
時空の侵食はなくなり、宇宙空間には残滓のような桜色の光が降り注ぐ。
サクラによって、この時空の終わりは救われ、クロードも…。
◇◇◇◇◇
それから数か月後
「このような不正と不義が行われていたのだ!」
と、時空内の議会達が集まった通信の席でガージェストが声高に言っている。
評議会の評議員によるアヌンナキ・プロジェクトという悪行の全てが公開されて、犯罪者とされていたキムロウ博士とユリ博士の名誉が回復し、諸悪の根源として評議会の追及が行われる。
全てのデータは…残っている。証拠も、クロードという存在が…
クロードは、とある惑星の公園のベンチに座っているとアズサワが来た。
「君の望み通り、評議会が秘匿にしていたアヌンナキ・プロジェクトのデータと、様々な実験のデータも公開させたよ」
クロードは、ポケットから、とあるモノを取り出す。
それは、ヤライから貰ったチョコレートスティックの箱だ。
「これが報酬だ」
アズサワがその箱を受け取り、中を確認して
「確かに…相応の報酬だ」
クロードは立ち上がって、別のポケットから新しいチョコレートスティックを取り出して食べながら
「じゃあな、色々と助かった」
アズサワが去ろうとするクロードに
「これから、どうするんだね?」
クロードは背を向けたまま
「新たな世界には、新たな英雄が必要だ…そうだ」
アズサワがフッと笑み
「そういうのは好きなのかい?」
クロードが苛立ちの声で
「誰が英雄なんて、なりたいかよ。ふざけんなよって感じだ。だけど…生きないといけない。そう…願われたから…」
アズサワが少し呆れ気味に
「呪いだな」
クロードはチョコレートスティックをパキッと口で割り
「呪いと加護は、紙一重よ」
と、告げて去っていた。
◇◇◇◇◇
クロードの記憶の世界を見たレナ、ティリオ、グランナ、ファクド。
自分達のいる場所を覆っていたエネルギーが消えて、元に戻る。
ブレインスキャンの施設からクロが出てくる。
青年のクロードではない、中年のクロが現れて
「これで満足か?」
と、怒り顔だ。
ティリオとグランナにファクドは気まずい顔をしている。
クロが
「もう良いだろうが。人のプライバシーを犯して、ホント、傲慢だな」
と、辛辣に告げる。
それにティリオ達三人は黙る。
クロの記憶を見る企みは成功した。
だが、ティリオ達が望みような結果ではなかった。
ティリオ達の気持ちが暴走した結果は、最悪な結末を迎えてしまった。
クロからの信用を失う事になった。
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次回、間話の次に、新たな機体