白夜 36話 メディーサの思い
次話を読んでいただきありがとうございます。
クロードの周囲の思い、メディーサやアルード、アシェイラ、サクラ
周囲の思いとは?
エルドリッジとデウスを調節整備しているシステム室で、クロードとメディーサが話をする。
メディーサが
「ガージェストが言っていた事は、ウソだからね」
クロードがとぼけたフリをして
「なんの事でしょうか?」
メディーサが不安な顔で
「隠れて聞いていたの。君とガージェストが話している内容を…」
クロードは察した。
昨日の首都惑星エレメンタルでの事を…
メディーサが真剣にクロードへ
「キムロウ博士は、アナタの事を大切に思っているわ。アナタがサクラと一緒に未来を作って行く事を願っている。だから、アナタの厳しいのよ。未来を、先を生きて行けるように、サクラちゃんとずっと一緒に…」
クロードはメディーサに背を向けて
「話は、それだけですか?」
冷たい態度にメディーサは苦しくなる。
ここ最近、クロードに明るさがない。キムロウ博士がクロードに要求を強くしているのもある。
それは、早くクロードがヤライを倒して、実績を上げて欲しいからだ。
それさえあれば…。
「私と、キムロウ博士を信じてくれなくてもいい。でも、サクラちゃんだけは信じて欲しい」
クロードは背を向けて調節を続けながら
「オレが生まれた理由は、対超越存在兵器だからですよ。それだけです」
メディーサが
「アナタが生まれた理由は、それだけじゃあないわ!」
クロードが静かに
「あの…作業の邪魔なんで…静かにして貰えますか?」
メディーサが
「クロードくんは、サクラちゃんと一緒に生きて欲しいから生まれたの。アナタが生まれたお陰でサクラちゃんは超越存在の力の呪いから救われた。アナタがいなかったら、サクラちゃんは、生きていないかった。それを忘れないで…キムロウ博士は、アナタに感謝している。だから…」
クロードが作業を終えて
「オレは、オレの…兵器としての役目を真っ当するだけです」
と、告げながらメディーサを通りすぎた。
クロードの先のドアが開くと、そこにアルードと、金髪の乙女アシェイラがいた。
アルードが不安な顔で
「兄さん。兄さんは兵器じゃあない」
クロードがアルードの隣を通りすぎて
「アルード、アシェイラ、お前達は多くの人達に力を分け与える超越存在の初期の存在だ。オレは…兵器だ。それだけが事実だ」
アシェイラが
「サクラは、どうするの? アナタの事を…」
クロードは無言で先を進む。
アシェイラ、アルード、メディーサの三人は、離れて行くクロードを見つめるしかない。
メディーサが
「どうして…こんな事になってしまったの…」
◇◇◇◇◇
クロードがユニックインダストリーへ帰ってくると、サクラが
「おかえりなさい」
と、微笑んで迎えてくれる。
クロードがそれをツラそうに…
サクラが困惑して
「どうしたの?」
クロードは、苦しむ。
でも、言わなければならない。言わなければ…サクラの未来は守れない。
自分は、兵器だ。
ヤライとの戦いが終われば…新たな兵器としての未来しか待っていない。
それにサクラを巻き込むのは…ダメだ。
「サクラ、話がある」
◇◇◇◇◇
サクラとクロードは、二人だけで話ができるホールに来る。
「話って何?」とサクラが
クロードが真剣に
「サクラ、オレとあまり関わらない方がいい」
サクラが驚きの顔で
「ど、どうして?」
クロードが真剣に
「評議員は、サクラが超越存在として覚醒するのを面白くないと…思っている。サクラ、アルード、アシェイラの三人による三位一体の超越存在、サクラを中心とした宇宙王の体制、それは…このインドラ時空帝国で素晴らしい未来を約束してくれる。でも、でも…」
と、クロードはここから先がサクラを傷つけるかもしれないが、覚悟する。
「評議会は、オレをホモデウス、アヌンナキというシステムにして、インドラ時空帝国を統治する事を考えている」
サクラが視線を揺らせて不安が強くなり
「意味が、分からない」
クロードが
「将来、オレは…サクラの敵になるって事だ」
サクラがクロードの両腕を掴み
「なんで? どうして! なんで!!!!!!!!」
クロードが悲しい顔で
「オレは、超越存在をベースとした者じゃあない。反対側のアヌンナキ、ホモデウスをベースとした存在、兵器だ。意思を持ち、自分の道を進む超越存在より、意思がなく進む道をコントロールできるホモデウスの方が…評議会にとって都合がいい。それは…キムロウ博士、サクラのお父様の意思に反している」
サクラがクロードから離れまいと両腕を掴んで
「だって、クロードは、クロードでしょう。兵器なんかじゃない! クロードだから!」
クロードが
「サクラ、オレは…君達とは一緒に生きられない。それが…オレの運命だからだ」
サクラがボロボロと涙して
「いや、クロードは…私達と一緒に、ずっと、嫌、イヤ…そんなのイヤ!!!!!!!!」
クロードが
「ヤライとの戦いが終われば…必ずそうなる。オレは…オレは、サクラと共に生きてはいけない」
サクラがクロードに抱き付いて
「イヤ、イヤ…ずっと、これからもクロードとみんなと、クロードと一緒にいるの。小さい頃からそうだったように、ずっとずっと…私を置いて何処かに行かないでよ! クロード!」
クロードにサクラが抱き付いてズッと涙し続ける。
それをクロードは静かに受け止める。
これは、どうしようもない運命だ。
運命を変えられるなら…
運命とは個人で変える事は不可能だ。数多の人達が繋がり大きな流れになる。それが運命だ。
それに、一個の点である個人なぞ太刀打ちできない。
必ず評議会とユニックインダストリーの衝突は起こる。
クロードはユニックインダストリーにいるが、評議会によって特別なナノマシンが植え付けられている。
クロードとアルードの誕生は、評議会が大きく関わっていた。
キムロウ博士は、独立した命としてクロードとアルードを求めたが、評議会は危険性を考慮して、安全弁的な役割を持つクロードを自分達のコントロール下に置くナノテクノロジーを付与した。
それのお陰でクロードは、インドラ時空帝国の様々な兵器やシステムと繋がれる。
だが、それは評議会が保有する兵器としての証でもあるのだ。
ユニックインダストリーに所属しながら、評議会としてのコマ、それがクロードなのだ。
◇◇◇◇◇
サクラが泣き止み、離れてくれたが…アルードとアシェイラの二人に、何があったのか?とクロードは問い詰められるも、クロードは無言だった。
クロードが座るベッド、目の前のイスにアルードとアシェイラの二人が座って
「何があったの? 話してよ兄さん」
と、アルードが尋ねる。
クロードが無言を貫く。
アルードが苛立ちで髪を掻く。
アシェイラが
「答えてよ。クロード、私達、一緒に…何でも解決して来たでしょう?」
そこへメディーサが入り
「アルードとアシェイラ」
と、二人を呼んで部屋にクロードだけを残す。
アルードとアシェイラの二人はメディーサから事情を聞く。
「アンタ!!!!!!!!」
と、アシェイラが部屋に再度、突入してクロードの襟首を掴み上げる。
「サクラになんて事を! そんなにアタシ達は頼りないか」
クロードがアシェイラの襟首を掴む手を解いて弾き飛ばし、アシェイラをアルードが抱き留める。
クロードが
「これは、オレが背負うべき問題。お前等に関係ない」
アルードがアシェイラを抱えたまま
「兄さん、ボクは…絶対に兄さんを見捨てないよ」
クロードから今までに無い不気味な圧力が放たれる。
まるで、何倍も歳月を過ごした巨木のような圧が放たれて
「どんなに、望んでも、願っても、そうなる時は、そうなるしかないんだよ。それが…それが…人間ってヤツだ」
口調が若い感じではない。
まるで、何十年と生きた老人のようだった。
その圧に呑まれて言葉を失うアルードとアシェイラ。
メディーサが
「クロード…キムロウ博士が」
警報が鳴り響く。
『緊急事態発生、ヤライが領内の時空の住民が多数いる惑星を占拠しました。直ちに発進を』
クロードが部屋から出て
「敵が待っている」
アルードもそれに続いて
「兄さん、後で、本当に…話がある。だから…」
クロードは無言で進む。
◇◇◇◇◇
宇宙港へ生き、デウスに乗り込むクロード。
クロードが乗るデウスがエルドリッジに組み込まれて、発進する寸前にキムロウ博士が通信で
「クロード、後で…話がある」
クロードが淡々と
「今は、敵の殲滅を優先します」
ユニックインダストリーの司令センターにいるキムロウ博士は、通信が切れた後、ドン!と端末の机を殴った。
「どうして、こんな事になった!」
キムロウ博士の願いは、サクラの幸せだ。それはクロードやアルード、アシェイラも含まれていた。
彼ら彼女らの四人が幸せになる事。
それが…望みだったのに…。
願いとは何時も叶わないモノだ。
それが現実だ。
この時までは…取り戻せると…誰しもが思っていた。
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次回、ヤライの願い