白夜 33話 ヤライとの戦い
次話を読んでいただきありがとうございます。
クロの少年だった過去、クロード少年の運命とは?
万軍兵器と呼ばれるシステムが完成していた。
数百万にも及ぶ無人兵器達の一つ一つには、人間の脳データをコピーできるシステムが備わっている。
一人の人間の脳データをコピーして、それを数百万の無人機達にインプットする。
それは、巨大な生命のように動き、多くの戦果を上げていた。
だが、それには…そのシステムに対応する者が必要だ。
この時代の戦争は、そのシステムが主流であり、クロードとアルードは、その為に作られた特別な子供、デザイナーズだった。
クロードとアルードの父親は…
クロードが乗る兵器、恒星間戦略兵器デウスの操縦席、特別なクリスタルに浮かぶクロードの脇に父親の顔が出る。
クロードの遺伝的な父親であるキムロウ博士が
「クロード、今度こそ…ヤライを倒せ」
と、冷徹に言葉を吐く。
15歳のクロードは、呆れた顔で
「超越存在であるヤライを…倒せですか。不可能ですね」
キムロウ博士は、それでも淡々と
「お前ならできるはずだ。お前は…アヌンナキ・プロジェクトから生まれた存在、超越存在を喰らう者…ハイパーイーターだ」
クロードが溜息交じりで
「ヤライ、八雷神と言われる神格を背負うバケモノですよ。不可能です」
キムロウ博士が
「不可能を可能にしろ」
と、告げて通信を切った。
少年のクロードは呆れていると、別の通信に双子の弟である赤毛のアルードが出て
「兄さん、あまり…父さんの言う事を…」
クロードが
「気にしていない。アイツのいう事なんて…アホの戯言と思っている」
アルードが
「父さんは、兄さんの事を期待しているんだよ。だから…」
クロードが皮肉な笑みで
「アイツは、オレやアルの事なんて道具としてか見ていない。一番大事な娘のサクラを守る付属品だ」
アルードが悲しい顔で
「サクラは、兄さんの事が大好きだよ」
クロードが呆れ気味に
「今はな…」
アルードが「兄さん」と含むような沈黙を見せる。
言い過ぎだ…とアルードが怒っているのが分かる。
クロードが溜息を漏らして
「作戦の宙域に入る。いくぞ」
クロードが乗る超巨大宇宙戦艦、恒星間戦略兵器デウスがコアであるエルドリッジが宇宙を進む。
ナスカの地上絵の鳥のような形状の全長100キロの超巨大宇宙戦艦が宇宙を進み、目的の戦場へ近づく。
とある時空、とある惑星、そこは生命がいない荒野だけの惑星で、そこに一隻の宇宙戦艦が鎮座している。
剣のような形の宇宙戦艦、それに乗るは…四十代の男性で、アルードと同じ赤毛だ。
ヤライと呼ばれる超越存在で、誰一人…味方はいない。
ヤライが、この惑星を押さえている。
それにクロードとアルードが乗る恒星間戦略兵器デウスを乗せるエルドリッジが近づくと、アルードが乗るデウスイドが
「兄さん、行くよ!」
背中から光の翼を伸ばす機神でアルードが発進する。
「ああ…行くぞ」
と、クロードはデウスを通じて意識を拡大コピー分散させて、エルドリッジに収納されている無数の無人機達を発進させる。
アルードを先頭に無数の数億機というクロードの意識をコピーした無人兵器達が続く。
ヤライがクロードとアルードの二人を感じて
「また、遊んでくれるとは…ありがたい」
と、自分が乗る剣型の宇宙戦艦の様々な箇所が開き、そこから無限のような赤い稲妻が発射される。
アルードはデウスイドで赤い稲妻を弾き、クロードの意識がコピーされた無人兵器達が惑星に着陸すると、荒野の大地を滑って、ヤライの宇宙戦艦へ向かう。
この時代、ヤライの時空とクロードの時空で、戦争が続いていた。
ヤライの生まれたファイライ時空共和国と、クロードにアルードのインドラ時空帝国で、とある時空の一部領域を巡る領土戦争があった。
その争いは、ヤライとクロードにアルードの三人が、様々な超兵器を使って行われる超兵器戦争で、多くの兵士や人員が決め手ではない。
お互いが持つ時空の技術による戦いが三年も続いていた。
荒野の惑星をクロードの意識がコピーされた無人兵器達が走り、飛んでいく。
それをヤライが乗る宇宙戦艦から発射される赤雷達が潰して行く。
ヤライの赤雷を回避して、数機の無人兵器達が到達するが。
ヤライの宇宙戦艦に備わる誘導レーザーが無人兵器達を貫く。
無数の痛みがエルドリッジのデウスに乗るクロードに襲いかかる。
脳を強く殴打される痛みに耐えながら、自分の意識と繋がる無人兵器達へヤライの宇宙戦艦へ攻撃を続けさせる。
アルードが乗るデウスイドが惑星へ入ると、音速を超えた亜光速でヤライの宇宙戦艦へ走る。
アルードは、早く決着を付けなければ兄クロードが持たないのを分かっている。
アルードが乗るデウスイドが巨大な光となってヤライの宇宙戦艦へ向かう。
ヤライの宇宙戦艦から無数の赤雷がデウスイドの光球へ放たれるも呑み込まれて消える。
「ならば…」
と、ヤライは笑む。
ヤライの宇宙戦艦が光の球体を構築する。
惑星を破壊し兼ねないエネルギーの爆発を構築しようとしたが、遙か上空からエルドリッジのエネルギー光線が届き、エネルギー構築を阻害する。
ヤライは…決断した。
アルードが乗るデウスイドがヤライの宇宙戦艦へ迫り、ヤライの宇宙戦艦を粉砕した。
だが、ヤライは脱出していた。
ヤライは間に合わないと判断して放棄した。
ヤライを乗せて脱出する小型の時空戦艦は、瞬く間に超光速へ達して、この惑星がある時空、領域から帰還する。
エルドリッジのデウスに乗っているクロードが疲れてグッタリと背を伸ばす。
アルードが通信に出て
「終わったよ。兄さん」
クロードが
「すまん疲れた。帰還の手筈は任せる」
と、休息システムを起動させて回復を行う。
アルードが頷き
「分かったよ。兄さんは休んでいて」
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次回、サクラとの過去