白夜 32話 最初の入口
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クロは自分の戦闘データの無人機を作ろうとした現場に問題の一団が…
クロは、ナイツの六人の訓練に困り果てていた。
「どうしようか…」
仮想実戦では…彼らの成長が望めない。
もっと、実戦的な訓練が必要だ。
それ程までにナイツの六人の性能は高い。
胸ポケットからチョコレートスティックを取り出して口に咥えて
「実戦…んんん…」
と、悩んでいる部屋にジーズが入ってきて
「どうですかな?」
クロがジーズを見て
「出来が良すぎ生徒ってのは困りますな」
ジーズが笑み
「ええ…でしょう。六人は…クリニア、アーシア、ナルファ、ジェイス、ガルダス、アヴァロは…性能が、能力が高い」
クロがジーズに
「どうやって六人をコントロールしていたんですか? 上官でしょう?」
ジーズが笑み
「コントロールというより、説明をして納得して貰っていた。それだけです。個々の能力が高い彼ら彼女らは、こっちが真剣に伝えようと同じ目線で対等に説明すれば、納得してくれましたし。互いに納得できない部分は、トコトン話し合いましたので…」
クロが頷き
「なるほど、人間同士の関係がしっかりしていたからこそ…か」
ジーズが
「突撃が主流だった原始的な歩兵の時代なんて遙か太古です。宇宙に飛び出した今では、一人で万軍のシステムを動かせる。そんな世界では…上司に必要なスキルは、対等で真剣に説得する能力が一番に必要ですから」
クロがフッと笑み
「確かに…命令するだけ、従わせるだけの毒親みたいなヤツに…未来はないか…」
ジーズがクロを見つめて
「あの…その感じから…もしかして…」
クロが手を振って
「昔の話です」
ジーズはクロが軽く流した雰囲気から
「そうですか。では…」
深入りするのを止める。
人間同士、深入りすると良くない場合がある。
大人は人との関係に距離感が必要であると分かる事であり、人との関係も密着ではなく距離感で成り立つ。
ジーズがクロがいるから部屋を去ると、入れ替わりにレナが入り
「クロ…」
と、レナが近づきレナは無意識にクロの接近してクロの手を握る。
「ああ? どうした?」
と、クロはレナの行動が当然のように振る舞う。
クロとレナの距離感は密だ。
ジーズは、二人の密接な距離感に親子…と思うが、クロとレナの態度に違いを見る。
クロは親と子であろう。レナは…もっと…
それを感じ取りつつジーズは去っていた。
◇◇◇◇◇
一隻の時空戦艦がクロがいる惑星へ向かっていた。
その時空戦艦には、ティリオとグランナ、ファクドの三人が乗っていた。
客室にいる三人、グランナが
「なぁ…そこまでする必要があるのか?」
グランナは、ティリオの父、聖帝ディオスと同じもう少し相手を見ようの方で
「いいや、ティリオの言う通りだ」
ファクドは、ティリオの考えを肯定する方だ。
「もし、これで…怪しい部分が判明したのなら…」
ティリオはアースガイヤの魔導文明が作り出した人の記憶を読み取る魔導アイテムのムネモシュネを掲げる。
グランナが渋い顔で
「人のプライバシーってのは大事にするべきじゃあないか?」
ファクドが鋭い顔で
「それは確かにある。だが…ヤツは、クロードは超越存在だ。存在その者が多くの宇宙、時空に影響を与える。なら、その危険性について考慮するべきだ」
グランナが呆れた顔をする。
ファクドは、普段はチャラチャラした態度だが…こういう超越存在に関する事案になると、ティリオと同じくしっかりした方が良いと厳しくなる。
普段のふざけた態度とは、反転して鋭くなる。
ファクドの一族、ゴールドジェネシスは超越存在で苦しんだ一族だ。そういう事に厳しくなったのは理解に固い。
グランナが
「もし、問題なかったら…」
ティリオが
「分かっている。父さん達の考えに…賛同する」
グランナは、面倒事になりそうな覚悟をする。
そうしている間に、時空戦艦は目的の惑星に到着する。
◇◇◇◇◇
クロは、ナイツの六人を前にして
「六人の性能が、能力が高すぎて…訓練に困っている」
ナイツの六人は渋い顔をする。
クロが
「意見を聞きたい」
ナイツのアヴァロが挙手して
「オレ達、まだ…アンタに勝っていない」
クロが困惑で
「ええ…そこに、こだわるの?」
ナイツのジェイスが挙手して
「六人がかりでも勝った事が無い」
クロが頭を掻きつつ
「つまり、オレに勝てるまで、戦い続けたいって。それは経験値としてよろしくないぞ」
ナイツのジェイスが挙手して
「それは、分かります。でも、でも…なんか、クロに勝てないと前に進めない感じがして」
クロが悩み額を抱えて
「分かった。オレの脳内回路をスキャンさせて、戦闘だけのコピー無人機を作る。それで訓練するで、良いか?」
ナイツの六人は視線で会話して、ナルファが
「それで…」
もう、クロとの訓練期間も終わりが近い。
◇◇◇◇◇
クロは、ブレインスキャン施設へ向かう。
それに、レナも一緒だ。
機械的な白いビル、上部にはネットワークと繋がる時空間リングが浮かんでいる。
施設のシステムが作り出した立体映像の職員がクロとレナを案内していく。
クロは横になるベッドに座り
「全く。オレに勝ちたいって、どういう事なんだ?」
近くにいるレナが
「最初の敗北だったから、ショックだったんじゃないのかなぁ…」
クロが呆れた溜息を漏らして
「執着し過ぎ」
レナが
「もしかして、遺伝的に父親って分かっているから。越えたいのかも」
クロがフッと笑み
「ファザコンされるほど…オレは、ちゃんとした父親の壁じゃあねぇ」
レナが
「まあまあ、クロの戦闘データだけをコピーした無人機を作って終わりだから」
「全く」とクロが呟く前に
「クロード!」
と、ティリオとグランナ、ファクドの三人が来る。
クロが渋い顔をして
「おいおい、何ですか? 若き超越存在の面々様…」
ティリオが近づき直球で
「お前には、疑問点が多すぎる。だから、この魔導具でお前の記憶を覗く」
「はあああああああ!」とクロは驚き
「ふざけるなよ! プライバシーの侵害だぞ!」
グランナが
「まあまあ、守秘義務は守るから…」
と、落ち着けようする。
ファクドが
「ここは、脳内の記憶をスキャンする施設ならちょうど良い。この装置も組み込んで…」
クロが
「ふざけんな! なんでお前等にオレの記憶を丸裸にされないといけないねん! 拒否だわ!」
ティリオが懐からデータ端末を取り出してレナに渡して
「報酬と規約がここにある。契約してくれ」
レナは受け取り驚愕する。
とんでもない額の報酬だ。でも…
「拒否します」
ティリオが「なら…」と強引に行こうとして、魔導具のムネモシュネを取り出す。
「お前! ふざけんじゃねぇ!」
と、クロとティリオがもみ合いになりそうな間にレナが入り
「止めてください!」
レナに間違って魔導具が装着されそうになったのを
「ヤロウ!」
と、クロがキャッチして離して
「こんなモノ! 破壊して」
と、アースガイヤの魔導文明が作ったモノなら、アースガイヤの魔導文明の魔法で
”ブレイク・サウザンド”
と、雷の魔法で破壊しようと…。
だが、その魔導具と魔法が複合反応を起こして…
クロが破壊しようとした魔導具のムネモシュネが光に包まれて、クロを光に包むと…クロを中心として光の柱が昇る。
その光の柱が施設の天井を突き抜け、超空間ネットワークと繋がるリング装置と接続された瞬間、その施設が光に包まれて…消えた。
レナはクロが消えて
「クロ!!!!!!!!」
ティリオとグランナ、ファクドの四人は周囲を見る。
グランナが
「ティリオ、何が起こった?」
ティリオが
「まさか…魔導具の効果が増幅と複合反応を起こして」
ファクドが
「おいおい、空間が異様な事になっているぞ」
レナがティリオの元へ来て
「クロは! どこに行ったの!」
と、声を荒げる。
ティリオが
「外へ、出て見るぞ」
と、四人は外に出ると、不思議な事が起こっていた。
自分達がいる施設を七色の防壁が包み込み、七色の防壁から出ようとしても出られない。
その外で起こっている事だけが過ぎ去る。
そこは、荒野の戦場だった。
無数の人型兵器が飛び交い、駆け巡る戦場。
レナは困惑で
「ここは…どこ?」
自分達は七色の防壁に包まれた場所から動けない、だが…その七色の防壁の領域が動いて、一機の人型兵器へ近づく。
その人型兵器に乗っているは、十五歳のクロだった。
「ええ…」とレナは困惑する。
まるで、映画を見ているようにクロの過去が…
過去のクロが乗る人型兵器に併走する人型兵器に赤い髪のクロと似た少年
「兄さん!」
過去のクロが
「アルード! 行くぞ!」
レナ達はクロの過去を見る。
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次回、八雷神の大戦