白夜 30話 明日へ
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クロの凶行、それに…レナは…
とんでもない現場がアルテイル共和時空国の全体に生配信されている。
アルテイル共和時空国を長く支えた議会長を一人の男が殺そうとしている。
それをグルファクシに乗って向かっているレナとイーシャが青ざめて
「あのバカぁぁぁぁぁぁ!」
と、イーシャは叫び。
レナは青ざめて無言になる。
戴冠式の会場、クロがガージェストを倒して殺そうとしている場へ
「クロ、待ってくれ」
と、ライアスが妹のファリナ、マリアと共に来る。
マリアが青ざめながら
「どどどど、どうして、クロ! ストップ!」
ファリナが
「クロさん! 落ち着いて」
クロが
「黙ってろやあぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、怒声を荒げる。
クロから並大抵ならぬ殺気と威圧が放たれている。
ガージェストがそれを見て笑みながら
「さあ…クロード…引き金を引け」
クロが怒りで顔をガージェストに近づけ
「どうして、こんなクソな事をアイツらに依頼した…」
ガージェストが
「私がミカボシやスクナに、アークシアを超越存在の宇宙王にさせる為に依頼した手筈かい? それとも…アヌンナキ・プロジェクトの遺産を復活させて、それを流出させてアークシア達に使わせた事かい?」
アークシアは混乱した。
自分達は、自分達の選択で色々と決めてきた筈だった。
それが…それが…
クロが
「テメェは…昔から変わらねぇ…。自分の欲望の為に暗躍して利用して…」
ガージェストが笑みから真剣な顔になって
「その通りさ。オレは…何でも利用してきた。それが…この世界を救うと信じてだ」
クロが怒りの顔で
「偽善だ。善意の皮を被った詐欺師が!」
ガージェストが静かに
「その通りだ。どんなに善意と思って行動しようとしても…私は…自分の為に他者を、多くの者達を利用してきた」
と、告げて
「だから、何時か…誰かに殺されて終わると…思っていた。お前達を殺したように、オレも誰かに殺される。なぁ…マハーカーラ直下、第七艦隊所属、ナンバー777、クロードよ」
クロの正体がアルテイル共和時空国の広まる。
ガージェストを殺そうとしている男は、五百年前にインドラ時空帝国で最強を誇ったマハーカーラ部隊、その最強の一角、クロードであると…。
クロが引き金を引こうとしたが
「お待ちください父上!」
と、アークシアが呼びかける。
「父上、お願いです。そこから…その方から離れてください。父上が人殺しになる必要なんて」
クロがそのままの体勢で後ろにいるアークシアを横見して
「とっくの昔に人殺しの仲間入りをしているぜ!」
「なればこそです!!!!!!!!」
と、アークシアが声を張り
「これ以上、罪を重ねないでください」
クロが声を荒げ
「うるせえええええええええ! 説教なんて、意味ねぇんだよ! コイツは、コイツは! オレ達が昔に葬った悪夢を蘇らせ、そして…自分の欲のために多くを利用していた! 昔はよう…それで全体が良くなったから黙っていたが…今回はダメだ!」
ガージェストが
「アークシア女王よ。これでいい。この男が、彼が…私を殺しても罪にはならない。なぜなら、彼には私を殺す権利と責任があるのだ」
と、ガージェストは涙しながら
「ずっとだ。ずっと…ずっと、辛かった。お前から、お前達から全てを奪って、そして…思い通りになると思い上がっていた。全ては…思い通りになるどころか…最悪でしかなかった。何かを犠牲にして、何を得て、その得た何かを犠牲にして、ずっとだ。ずーっとそれを繰り返していた。心底、自分の無能に絶望したよ。だから…何時か…自分を殺してくれる者達が現れるのを待った」
ガージェストが涙して微笑みがら
「神はいるのだなぁ…私にとって最も…贖罪しなければならない者をここに…そして、我らは我らの責任を背負う。こうして、お前に殺される事が最後の責任だ」
ガージェストは覚悟を…
クロは
「望み通りに」
と、引き金を引こうとした背中に何かが直撃した。
「いてぇぇぇぇぇぇ!」
「バカぁぁぁぁぁぁ!」
と、叫ぶレナが装備の物をクロに投げていた。
「バカ! バカ! バカ!」
と、装備の物をクロに投げ続けるレナ。
クロは立ち上がって頭をグングルニルで守りながら
「止めろレナ! お前の攻撃だけは絶対に防げないんだよ! 止めてぇぇぇぇぇぇ!」
クロは絶対に防げないレナの折檻を受けて、レナが頬を膨らませて怒っている。
「クロ! 帰る!」
クロがええ…って顔で
「レナ、オレは決着をつけないと」
と、言った弁慶の泣き所にレナが蹴りを放つ
「うぇぇぇぇぇぇぇぇおえぇぇぇ!」
クロはレナの攻撃に激痛を受けて転がる。
ガージェストが解放されて上半身を起こして
「お嬢さん、彼のやろうとしている通りにさせてやってくれ」
と、レナを見つめる。
レナは横で弁慶の泣き所を抑えて転がるクロに
「クロ!」
と、怒ってガージェストを指さして
「もうやらないよね!」
クロが「えええ…」と困惑の顔をするとレナが背中を蹴る
「いてぇぇぇぇぇぇ! だから、オレの性質上、レナの攻撃を絶対に防げないんだって! やめてぇぇぇぇぇぇ!」
レナがお怒りの顔でクロに訴えかける!
クロは上半身を起こして
「ええ…」
レナがまた蹴り上げようとする。
クロが
「分かった! 体罰、止めてよ…」
と、クロは起き上がって
「ガージェスト、次は…お前が…心まで死んだ時に殺しにくる」
ガージェストが項垂れて
「まだ、この地獄を続けろ…と」
クロが息を出して力を抜き
「そうだな、人生なんて地獄さ。それでも…いや、地獄だからこそ、生きる価値はあるさ」
と、周囲に落ちたグングルニルを回収して背中に背負い
「帰るぞ、レナ…」
と、その場から歩き出す。
レナがガージェストに頭を下げ
「色々とごめんなさい」
と、クロの背中を追いかける。
護衛部隊がクロを…ガージェストが
「止めろ。彼と彼女は、無罪放免だ」
と、捕らえようとする者達を止めた。
ガージェストは去って行くクロとレナの背中を見つめる。
そして、かつての仲間の幻影を見た。
クロと共に歩んでいくかつての仲間の幻影達。
それにガージェストは取り残されて…
ガージェストは涙して項垂れた。
追っ手がこない現場、そこら離れると腕組みして怒っているイーシャの顔があった。
クロは額を抱えて
「その…何というか…すまん」
と、イーシャの頭を下げる。
イーシャがクロの顎をつまみ上げ
「お前が持ち出したアタシの在庫のエンジェリオン、高かったんだからなぁ…その借金、返すまで…許さんからな」
エンジェリオンは兵器だ。最新戦闘機の百億円程度の価値はある。
だが、クロが聖帝ディオスからの依頼を受ければ返せない額の借金ではないが…おそらく、何だかんだ言って、借金は永遠に返済させて貰えそうにないだろう。
クロが
「オレの行動、間違って」
と、言ったそこにレナのケツバットの蹴りが入る。
クロがレナを見て
「レナ…体罰は止めて…」
レナがお怒りの笑みで
「クロがバカな事をするなら、殴ってでも止めるから。わたしより年上なんだから、そのくらいダメだって分かれ!」
クロは萎縮して
「は、はい…」
と、同意するしかなかった。
こうして、事件は幕を閉じるのであった。
数日後、クロとレナは整備を終えて時空戦艦グルファクシに乗って旅立つ。
次の依頼は…
「は? 戦闘訓練の教官?」
と、次の依頼を見てクロは首を傾げる。
グルファクシの中央室の画面にアークシアの通信画面が出て
「父上! 依頼よろしくです!」
と、笑顔のアークシアがいた。
ええええ…とクロは青ざめる。
アークシアがアルテイル共和時空国の宇宙王になったので、その護衛部隊の戦力強化としてクロに依頼が来たのだ。
クロが隣にいるレナを見て
「レナ、これってキャンセル…」
レナが目を輝かせて
「報酬、最高!」
ダメだ。こりゃ!とクロは仰け反るのであった。
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次回、訓練と暗躍