第96話 後始末と家族が増えた。
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あらすじです。
捕まったゾルトリア達の元へエニグマのキャロルと、アーヴィングが現れる。そして…
ディオスはゾルトリアの被害者である子供達を引き取り、新たな日々が始まる。
ゾルトリアの連中は、魔法の発動を阻害される特別監視独房にいた。
十二人部屋のベッドがある部屋独房で、ゾルトリアの十二人はディオスに殴られた顔の部分を触る。
殴られた箇所は、赤く張れているだけで軽傷だ。
だが、焼けるように疼くのだ。
まるでスティグマ『罪の証』を焼き印されたように痛む。
「クソ! あんな、バケモノだったなんて聞いていないぞ!」
一人がぼやく。
バラルがベッドに寝ながら
「今は休め。ここを逃げ出す方法を考えるのが先決だ」
ゾルトリア達は運ばれる間に、全ての装備を没収、体に施された何かの呪印も解除され、体の中も透過で見られて、裸一貫になった。
仲間の一人が
「お前は、寝られるのか?」
バラルは
「寝るしかあるまいて…」
バラルは腹部と顎にディオスのスティグマの一発を食らっているので、焼けるように痛むのだ。
それを忘れる為にも眠るしかない。
ゾルトリアの面子が静かになると…入口のドアの下から黒い何かが入り込む。
「な、なんだ?」
と、ゾルトリアの一人がそれを見つけて呟くと、黒い何から人が二人出現した。
一人は、マッドハッターを回収したアーヴィング、そしてもう一人はキャロルだった。
ゾルトリア達は、キャロルの前に来ると集まって跪き
「宗主様、なぜ…ここへ?」
キャロルを宗主と呼ぶゾルトリア達。
キャロルはゾルトリア達に
「お前達、御苦労だった。今…何とかさせてやる」
ゾルトリア達はニヤリと笑む。
ここから脱出と思ったが…違っていた。
跪く十二名のゾルトリアの足下に魔法陣が展開される。
バラルが
「まさかーーーーー」
それは逃がす為の魔法陣ではない。
”ディザイア・サクリファイス”
魔法陣から赤い光が伸びて、十二名を包むと…
ぎやあああああああ!
十二名は悲鳴を上げて、体から赤い筋を放出して、水分が抜けるように枯れた。
十二名は、完全に枯渇して、ミイラになってその場に転がると、キャロルの前に十二名から出た赤い筋が集まって、片手に握れる五センチサイズの深紅の宝石となった。
キャロルが使ったのはエビルの外法で、人の命をアクワ・ウェーターに変える魔法だった。
ゾルトリア達の命を奪ってアクワ・ウェーターの結晶を作った。
アーヴィングが
「いいのか? 子飼いの連中だったんだろう」
キャロルはアクワ・ウェーターを握って
「こんなクソ外道な連中、幾らでも換えはいる。問題ない」
「そうか…」
アーヴィングの影の力によって再び、キャロルとアーヴィングは影に消えて、この独房のあった施設から消えた。
ディオスが王都御苑の出来事から二日目、ディオスはゼリティアの城邸で、七人の子供達と追いかけっこしていた。
「待てーーーーー」
ディオスは鬼で、相手は男の子達だ。
女の子達は、クレティアにクリシュナとゼリティアの三人の傍にいて、リリーシャとティリオにゼティアの相手をしている。
ディオスの追いかけっこで、捕まった男の子は、ディオスの気が済むまで抱擁と頬スリをされる。
「そらぁぁぁぁっぁ」
「あああ! はははは、あうう」
ディオスは子供を抱き締めて心ゆくまで子供の暖かい温もりを堪能した後、捕まえて置く場所にしている、赤ん坊達のいる部屋に入れられる。
男の子は、ティリオにリリーシャとゼティアの相手をしている女の子と妻達と加わって三人の赤ん坊を相手にする。
ディオスは、城邸を駆け巡って、男の子達と遊んでいると、そこへレディアンが来た。
子供を抱えているディオスにレディアンが
「何をしているんだ?」
ディオスは微笑む
「遊んでいる所だ」
「そうか…。その…ちょっと良いか?」
「ああ…」
と、ディオスは子供を降ろした。
子供達と赤ん坊達をセバス達に任せて、客間でレディアンがソファーに、対面にいるディオス、クリシュナ、クレティア、ゼリティアの三人に説明する。
レディアンが
「今日の午前中…ゾルトリアを捕まえている特別独房で、魔法が使われた反応があって、急いで確認に行くと…。ゾルトリアの連中が全員…死亡していた」
ディオスは頭を振って
「ふ…口封じか…」
レディアンは肯き
「死因は…サルダレスの協力により、おそらく…大昔に失われたエビルの外法ではないかと…。死体は全てアストラル体が抜かれて枯死していた」
クレティアが
「せめて…情報だけでも聞き出して、他国に引き渡し、その後…確実に死刑だろうけど…。その間、自分達のやった事を悔いて欲しかったなぁ…」
クリシュナが
「内通者による手引き?」
レディアンは首を横に振って
「部屋に様子を記録していた監視魔導装置によって、ゾルトリア以外に二名の侵入を確認している。本来ならそこで警報がなる筈が…その魔導回路が壊されていた。だから…魔法の反応が出るまで分からなかった」
ゼリティアが
「怖いのぉ…何者じゃろう…何て言うのは野暮か…」
ディオスが
「確実にエニグマだな」
レディアンは肯き
「そうだろう」
クリシュナが
「他の捕まえた犯罪者は?」
レディアンがフッと笑み
「お主達…何をやった? 恐怖に顔を引き攣らせて、自分の罪を自ら暴露しているぞ。死にたくないから助けて欲しいとなぁ…」
クレティアは笑み
「アタシ達は普通よ。ダーリンが…」
クレティアとクリシュナはディオスを横見する。
「え、オレが?」
と、ディオスは自分を指さす。
レディアンは怪しく笑み
「良かったな。新たな箔が付いたぞ。愚か者の犯罪者六百名を、数時間で制圧したという記録が残る」
ディオスは微妙な顔をするが。
まあ…犯罪者が捕まっただけで、良しとして
「レディアン様。その犯罪者達はどのような連中で?」
レディアンは後ろに背を預け
「殆どが、非合法活動をしている連中で、後…成り上がりの小物とか…まあ、殆どが…どこかで殺人や強盗、その他、犯罪をしている奴らだ。こちらでの調べが終わったら、奴らの戸籍がある国の警察隊へ送還するさ」
ディオスが
「大部分がアーリシアの…」
レディアンは首を横に振り
「どうやら…アーリシアのそういう連中は分かっているらしい。お前には絶対敵わないとなぁ…。九割方、アーリシア以外の、ロマリアやアフーリア、ユグラシア中央、アルスートリの大陸の連中ばかりだ」
ディオスは頭を振り
「やれやれだぜ…」
アーリシアのそういう芽を一掃できると思っていたのに…
残念そうにするディオスに、ゼリティアが
「案ずるな、今やアーリシアは纏まっておる。ゆくゆくは、一掃出来る筈じゃ」
ディオスは座っているソファーに背をもたらせ
「次回に期待しますか…」
アイカ達、七人の子供達は、ゼリティアの城邸で健康状態を良くされて、その後…ディオスの屋敷に来る。
女の子からアイカ、フェル、リティア、アルナ
男の子は、ダンロ、ティダ、シャル
七人は、ディオスの屋敷に来ると、屋敷の中を探検する。
子供達の所在は、レディアンが調べてくれるそうだ。
全員がスキル持ち故に、おそらく、それでどの家の子供か判明するだろうと…。
まあ、それが判明するには、数ヶ月は掛かるだろうが…と。
ディオスは、七人を前に、レベッカに
「すいません。お願いしますレベッカさん」
レベッカは眼鏡を上げて
「事情は聞いております。むしろ、喜んでお引き受けしましょう。旦那様」
ディオスは顔を明るくさせて
「ありがとう! レベッカさん!」
こうして、ディオスの屋敷に七人の子供達は来た。
屋敷が華やかになる。
午前中は、ディオスと妻達の訓練に子供達も加わって行われ、午後にはディオスが魔導石を生成している場景を子供達が見る。
子供達は、ディオスの両手から放たれるオーロラの魔力に驚き、目を輝かせていた。
その後、ディオスは何時も通りの魔法をサポートする研究だが…そのスピードが速い。
そう、子供達と遊ぶ為に、素早く仕上げる。
それにレベッカは目を光らせる。
大事な仕事が雑になっていないか…と。
四時くらいから子供達と遊ぶ。
追いかけっこ、ボールを使った遊び、カードゲーム。
ちょっとした魔法を一緒に勉強したりと、ディオスの日々が楽しく回り始めた。
そんな時だ。
預かってから一週間くらい経った時に、皆で遊戯室でくつろいでいる時にアイカがディオスに向かって「パパ」と言ってしまった。
アイカは直ぐに口を塞いだ。
他の子供達も黙って気まずそうにする。
そう…こんな事…いけないと、子供達は思っていた。
ディオスは父親ではない。でも…でも…
そのディオスがパパと呼ばれた現場に、クレティアとクリシュナにゼリティアの三人がいた。
三人はディオスを見ると、ディオスが瞳を大きく広げて嬉しそうにニヤけている。
ディオスはアイカに近付き
「パパって呼んでくれるのか?」
アイカが怖がって
「ごめんなさい」
ディオスは首を横に振って
「いや、いいんだ。でも…もし、呼んでくれるなら。パパって…」
「いいの?」
と、アイカが怯えながら尋ねる。
ディオスは嬉しそうに顔を綻ばせ
「いいに決まっているだろう!」
子供達が『パパ』とディオスを呼んだ瞬間、ディオスは抱えられるだけの子供達を抱えて
「いやったーーーーーーーーー オレ! 子供をゲットしたぞーーーーーーーーーーー」
超ハイテンションになるディオスに、三人の妻達は微笑み、ディオスが抱えられなかった子供達に近付き
「じゃあ…アタシ達はママね」
とクレティアは微笑む。
「よろしくね…」
とクリシュナは嬉しそうだ。
「うむ。今日から家族ぞ」
とゼリティアは力強く頷いた。
それをドア影からユーリとチズが微笑んで見つめ、ココナとセバスは拍手している。
レベッカは眼鏡を光らせ
これは…使える…。
ディオスと家族となった子供達は、遠慮がちだったティリオとリリーシャにゼティアの距離を詰めて、三人の赤ん坊を良く見てくれる。
ココナがティリオの面倒を見ているダンロに近付き
「いつも、ありがとうね」
ダンロがティリオを抱えながら
「ぼくね。弟がいたんだ。あの時…」
ココナは「あ…」と躊躇う。
ダンロはココナに微笑み
「だからね。今度は、僕がこの子を守れるように強くなるんだ」
ココナはそれを聞いて、目頭が熱くなって
「そうか…凄いなぁ…」
と、ダンロの頭を撫でた。
レベッカはとある計画をゼリティアと練っていた。
三日後、その日が来た。
ゼリティアは子供達を連れてオルディナイトの巨大工場へ来る。
子供達は興味津々に、工場内を見学すると、ゼリティアが巨大な全長五百メートルの巨大貨物飛空艇が作られているドックに連れてくる。
「これが、妾の財団で新たに作っている貨物飛空艇じゃ」
『わあああああああ』
子供達の目が輝く。
そして、その巨大貨物飛空艇のエンジンを製造している工場に来る。
全長二十五メータの巨大エンジンを前にゼリティアが雄弁に語る。
「見えるか。エンジンに一番大事な心臓部の巨大魔導結晶の王冠を…アレをパパが作っておるのだぞ」
フェルが
「本当なの?」
「ああ…」とゼリティアは肯き、今度は魔導石を製造する工場地区へ連れて行く。
「ほれ…あの魔導石の入ったケース。見覚えがあるじゃろう」
巨大な円筒形の装置にディオスの生成した三十センチの高純度魔導石が入るケースが収められ、高純度魔導石が巨大抽出分化装置によって多数の魔導石に精製される。
子供達はゼリティアの案内で、高純度魔導石が入るケースに来ると、確かにそのケースは屋敷から出たモノだと分かる。
ちょっとした、悪戯書きがケースの隠れた所にあったのだ。
更に、巨大な三百メータの銀光りする戦艦飛空艇が収まるドッグに来る。
「これも、パパが設計して、それを妾達が製造しておる。この戦艦飛空艇の様々な所にはパパの作った魔導技術が使われておる。どうじゃ! お主達と妾達のパパは凄いじゃろう」
『うん!』と子供達は頷く。
ゼリティアが
「お主達にお願いがある。パパはお主達と遊びたくて、午後にある仕事を早めにする所が出ておる。それをちゃんとするようにお主達に監視をして欲しいんじゃ…」
子供達は見つめ合って肯き
「分かった! 必ずパパのお仕事、チャンとさせるね」
そう、言葉にして、ゼリティアは
「うむ。良い子達じゃ」
と、一人一人頭を撫でた。
翌日、ディオスは何時ものように魔導石の生成を終えて、子供達と遊びたくて早く、魔法のアシスト研究を終わらせようとしたが、その両脇に子供達が来て
「パパ! お仕事、サボっちゃダメ!」
「え?」とディオスは困惑する。
そこへレベッカが来て
「そうですよ旦那様…。子供達が旦那様の仕事をチャンと出来るように見張っていますから」
レベッカの眼鏡が光った。
ディオスは内心でゴフ!と唸った。
そう、子供達がオルディナイトの巨大工場に行ったのは、この為だったのか!
確実に、自分に仕事をさせる為に、子供達を自分の味方に付けたのだ!
恐るべし! レベッカ包囲網!
こうして、ディオスは子供達にしっかりやっていないか、監視されて仕事をする事となった。
クソ!と内心で舌打ちしながら…。
ディオスの日々は充実していた。
子供が増えた事で、その手間が多くなったと思う人も多いだろう。
だが、ディオスにはそんな事、関係なかった。
子供達と関われる全てが楽しかった。
週に一度、まあ…王宮に行く時も寄っていくから週に二度、ゼリティアの城邸に来ると、ディオスが城邸に行くとなると子供達も同行する。
ゼリティアの城邸では、大きな庭園…と呼ぶには広大な庭で子供達は遊ぶ。
その際に、必ずゼティアも連れて一緒に面倒を見てくれる。
七人の子供達と戯れるゼティアの姿と傍に執事や女中の者達もいるが…その幸福な風景を見ながらゼリティアの腰を自分の方へディオスは抱き寄せて見つめる。
子供達のお陰で、ゼリティアの傍にいれる時間が増えた。
ゼティアが産まれてからは、ゼティア優先だったが…。
こんな余裕が出来るなんて、思いもしなかった。
屋敷に子供達と帰ると、子供達は、ユーリやチズ、ココナ、レベッカと共にティリオとリリーシャの面倒も見てくれる。
子供達は自分も小さいのに、更に小さい赤ん坊を大切にしてくれるという素晴らしい姿を見せてくれる。
それにディオスは
すげーなぁ…本当に凄い!
毎回、感動してしまう。
そうなると…夜になって増えるのが…妻達とのお互いの温もりの交わし合いだ。
「ねぇ…ダーリン。もっと子供達…増やさない?」
クレティア
「アナタ。あの子達だってもっと、家族が欲しいと言っているから」
クリシュナ
「ああ…そうだな!」
ディオスは、力強く頷いた。
これは、更に増えそうな予感がビンビンにして堪らない。
あっという間に三週間がたった。
大きな子供達が寝るベッドにディオスを枕にして眠る子供達がいる。
ディオスも幸せそうな寝顔である。
ディオスの両脇に女の子二人がピッタリと、その腕枕に男の子と女の子、お腹や足、ディオスに被さって男の子二人と女の子が寝る。
それを見たクレティアとクリシュナ、フッと微笑み。
さらにその中へ、ココナが抱えたティリオとリリーシャも入る。
子供達という布団を得て、ディオスはスヤスヤと寝ていた。
その日は、大家族となったディオス達がフェニックス町のギルト兼食堂へ、みんなを連れて食事に来ていた。
町の人達は、ディオスの増えた子供達の事情を知っている。
ディオスが包み隠さず伝えたのだ。
それに町の人達は、ディオスの深い優しさと愛情に、ただ…感銘を受けるしかない。
ディオスが子供達や自分の赤ん坊達と楽しそうに食事する姿に、なんか…ディオスさんらしいかも…と町の人達は思った。
ギルド兼食堂でみんなと食事するディオスは不意に、窓の外で学校から帰る子供達の姿が見えた。
ああ…そうだな。子供達の学校を…。
そう、このままここで暮らすなら、学校へ行かさないといけない。
みんな、スキル持ちだから、そういうスキル持ち専用の学校が王都にあったなぁ…。
そこへ、みんな、通うのかなぁ…。
そんな事を考えていたディオスだが…そうはならない事態が来た。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。




