星光 第150話 天地無限戦争
次話を読んでいただきありがとうございます。
シンイラとの戦い、それは物理的な戦いでは無かった。
シンイラとの戦いで用意された場所、そこは…氷の惑星だ。
全てが凍り付いたスノーボールアースという氷の惑星に、ティリオと一莵、ディジレーター達四人、奈瑞菜、ユノ、巴、ジャンヌの六人が降り立つ。
一切、生命がいない氷の惑星がリングだ。
ティリオが一莵を横見すると、一莵もティリオを見る。
今回の事で、初めて一莵とティリオは共闘する事になった。
ティリオは、心中が複雑も…戦いに集中する事にする。
そのティリオ達の目の前にシンイラが現れる。
軍服に燕尾服の洋装をまとうアマカスを先頭に、左右に二人のシンイラの者達が続く。
ティリオ達とシンイラのアマカス達が対峙した瞬間、惑星の宇宙域を覆うエボリューション・インパクター達が惑星を無限に変えるフィールドの力を発生させる。
球体の惑星がねじ曲がり、逆にひっくり返る。
それは、トポロジーの形になり、クラインの壺のように平面が無限に広がり閉じる。
無限の平原となった世界で一莵が
「行くぞ」
と、ティリオの呼びかける。
「ああ…」
と、ティリオが答える。
一莵とティリオが疾走する。
一莵は、右腕に巨大な戦車砲の如き砲身を装備する。
ティリオは両手にエネルギー剣と背中に魔法収納に入れていた無数の剣達を放出して背中に背負う。
先に続く一莵とティリオに続いて、ディジレーター達四人が続く。
アマカスがニヤリと笑み
「楽しめそうだ」
と、パンと両手を叩く。
左右にいたシンイラの者達が流星の如くティリオ達へ向かう。
廃棄女神であるユノと奈瑞菜、巴にジャンヌは…女神の権能を発揮する。
世界を己の法則に染める力を放つ。
ユノは無数の飛行機達が飛び交う世界
奈瑞菜は妖怪達が跋扈する世界
巴は鎧武者達が走ってくる世界
ジャンヌは甲冑を纏う兵士達が走ってくる世界
過去に消えた世界達の女神だった彼女達の世界が津波の如く迫ってくる。
飛び出したシンイラの四人は背中から、漆黒のサタンヴァルデウスの本体を噴出させる。
それは、サタンヴァルデウスになる以前のサタンヴァルデットの時に取り込んだ数多の罪人達の魂が集合した、罪人地獄だ。
サタンヴァルデウスは体内に地獄曼荼羅世界を持っている。
それを廃棄女神である彼女達の世界と衝突させる。
多くの世界と世界が、無限の氷原で衝突して、無限に広がる世界を侵食する。
世界同士の侵食の中をティリオと一莵が突き抜けて、シンイラのアマカスへ迫る。
アマカスが指を二本立てて
「いでよ、天神」
空が落ちてくる。
比喩でもない、本当に空が落ちてくる。
「沸き立て、地神」
地面が噴出する。
落ちる空と突き上がる地面に挟まれそうになる一莵とティリオだが、一莵が右腕に融合する戦車砲の如き砲身から一撃を放つ。
それが螺旋を描いて、落ちる空と突き上がる地面を引き剥がす。
その先をティリオが疾走して、背中にする剣達とアマカスへ発射する。
膨大な数の剣達がアマカスへ降り注ぐ。
アマカスが
「闇夜を衣に」
無限の氷原が一気に夜になると、アマカスはそれをつかみ自分の盾にする。
ティリオが放った剣達が夜の闇に引っ張られて外れる。
ティリオが渋い顔をする。
アマカスは、物理ではなく事象を操作して武器に使っている。
戦い方は、魔導文明であるアースガイヤの魔法戦闘に近い。
ただ、それを魔法を発動させる手段ではなく、高次元からの作用によって行っているという事だ。
一莵が右腕の戦車砲の如き砲身を、別の砲身へ変化させる。
それは全長十キロの巨大な天空砲だ。
カディンギル、神に挑んだ天の塔を砲身にした。
一莵がカディンギルの砲身をアマカスへ向ける。
アマカスと一莵の間が一瞬で十キロの距離へ変わる。
だが、ティリオからはアマカスと一莵は近い距離だ。
距離という事象さえ操作する。
一莵が神に反乱した一撃をアマカスへ放つ。
轟音と共に鮮烈な光がアマカスへ迫る。
全てを呑み込む程の閃光がアマカスに迫るが、アマカスは
「数多の言葉となって散れ」
と、アマカスが手を伸ばして閃光に触れた瞬間、閃光は様々な光の象形文字になって拡散する。
防がれた。だが、それでいい。
その隙をティリオが詰めて、アマカスの目の前に来た。
ティリオの剣の一閃がアマカスへ迫る。
アマカスは左手にサーベルの剣を握り、ティリオの一閃に応戦する。
火花が飛び交う。
ティリオは無数の剣撃をアマカスへ放つ。
両手にある剣の刃が嵐の如く乱舞する。
アマカスも両手にサーベルの剣を握り、それに応戦する。
一莵は、アマカスの背中へ回りつつ次の砲身へ右腕を変える。
それは翼を備えた天使砲だ。
天使砲から無数の光の攻撃を放つ。
それにアマカスが背中からサタンヴァルデウスの本体を伸ばして闇の光の触手を伸ばして相殺させる。
アマカスが楽しげに笑みながら
「楽しいなぁ…これほど、楽しい戦い…存分に楽しまんと損だぞ」
ティリオが渋い顔をする。
決まらない決め手にならない。
他のシンイラ達と戦っているディジレーター達四人も同じだ。
戦いが拮抗してしまった。
無限に戦い続ける神の闘争になってしまう。
ティリオは自分に疲労が起こらない事に気付いた。
そう…自分達の戦いの影響で、この無限の氷原へ高次元のエネルギーが流れ込み、疲労が起こらない。
このまま無限に戦い続けて、無限に決着が付かない。
ティリオは「なら」と攻撃を止める。
アマカスが動きを止めたティリオに
「どうするのかね?」
ティリオは決着が付かないなら、決着をもたらせればいい。
ティリオは右手に持つ剣を空へ、左手に持つ剣を地に
「天地開明」
世界を分断する閃光を放った。
そして、世界を両断した。
アマカスが残念そうに
「そうか…もう…決着とは…」
ティリオが世界を分かつ。
それによって、無限の氷原が分かれて、世界そのものが分裂して高次元へ消えた。
こうなれば、高次元に適応性があるティリオと一莵だけが残る。
無限の平原、無限の氷原は光を放って爆発、外から見えているクラインの壺のように平面が無限に重なる惑星のリングが、光を放って星になった。
ティリオと一莵は、無限に上昇する。
高次元を昇り、そして、ディーエ時空連合の全体が見える高次元へ到着すると、ディーエ時空連合の中心にある時空を見る。
それは漆黒の結晶で作られた機構の時空だ。
戦争シェアリングのコア時空。
そのコア時空の中心、戦争シェアリングからのエネルギーが集められている部分、そこに一人の影があった。
その人影がティリオと一莵を睨み見ていた。
ティリオと一莵は理解する。
あれが…ハジュン達四人が作ろうとしている超越存在のコアとなる魂の主であると…。
それをティリオと一莵は見て、リングとなった惑星へ帰って来た。
氷の惑星だったそこは、ティリオ達の戦いの影響で全ての氷が溶けて荒れる海となり、活発な火山活動を開始して、生命が始まる惑星へ転じていた。
シンイラのアマカス達はいない。
高次元へ飛んだので、どこかへ飛ばされたが…問題はない。
サタンヴァルデウス…罪食いの天神だ。直ぐに戻れる。
ティリオ達は、強制リングアウトの状態を作り出して勝利した。
ティリオはシンイラとの戦いも終えて…後は…
ティリオが空を見上げると、雲の合間からディジレーター達四人が帰還してくる。
同時にティリオの仲間達の時空戦艦も下りて来る。
ティリオは手を握り
「後は…彼らだけ」
◇◇◇◇◇
ティリオ達の勝利が決した後にアマカス達は戻って来た。
アマカスが最初に訪れたのは、ハジュン達四人だ。
ハジュン達四人が黙ってアマカスを見つめると、アマカスが
「後は…お前達だな…」
ハジュン達四人は沈黙だ。
アマカスが笑み
「最後の花火は、盛大な程がいいな。楽しみにしているぞ」
ハジュン達四人は沈黙のままだ。
それを背にアマカスは去って行った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、最終決戦 前編