星光 第141話 システムの正体
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゾロアスから語れるシステムの正体とその目的とは…
ゾロアス…アヌンナキという神人、ホモデウスにして…神である存在が語る。
「アレのシステムの正体は、聖櫃だ」
それを聞いた千華が鋭い顔をして、紫苑が横見する。
ティリオ達は、ゾロアスの説明を静かに聞く。
ゾロアスが
「聖櫃は、神化加速器という装置だ。全ての存在、あらゆる存在を神化へと加速させるシステムだ」
レリスが
「それが、ディーエ時空連合の戦争シェアリングのシステムと、どう…関係しているんだ?」
ゾロアスが慎重に言葉を選びながら
「要約するとだ。神化加速器という聖櫃のシステムを完全複製して、その中に聖櫃と同じく超越存在に至った者の魂が保管されている」
ティリオが千華を見つめる。
聖櫃を追っているカレイドの千華達から、そんな話を一切聞いた事が無い。
誰かの魂が入っているなんて…知らなかった。
何かのエネルギー加速装置という程度の認識だったからだ。
千華がそれを聞いて目を閉じて静かにする。
ゾロアスが続ける。
「聖櫃と違うのは、ディーエ時空連合に根を張っているという部分だ。ディーエ時空連合に根付いている戦争シェアリングは、そのシステムの必要なエネルギーを提供する。エネルギー搾取機能と思って貰って構わない」
ファクドが
「エネルギー搾取装置? なんのエネルギーを搾取しているんだ?」
ゾロアスが厳しい目で
「死ぬ者が放つ、事切れる寸前に放出するメモリーのエネルギー、記憶が空間、時空に解ける際に放出される記憶や魂のエネルギーと思えばいい」
ティリオが青ざめて
「ちょっと、なんで…そんなとんでもない事を…しているんだ?」
と、答えるティリオの脳裏に、生まれた魔導文明のアースガイヤであった最悪な歴史が過った。
アースガイヤでは、生体エネルギー、魂のエネルギー、アストラルを回収して強大な力を行使した魔法があった。
それは、ティリオが幼い頃、父ディオスも遭遇した。
ゾロアスが
「その魂が時空へ、高次元へ帰り再び世界へ戻る際に、魂が得た肉体と世界の記憶が世界に解ける。同時に、その反作用のエネルギーも生じる。それが稀に残り、世界に見えない憎悪の念と絶望の意識の残滓を残す。普段は、空間に残ると存在を維持する為に自らを消費して消えてしまうが…。それを戦争シェアリングのシステムで繋がるディーエ時空連合から回収して、それを更に加速させて大量生成する為に、資源やエネルギー、物資の勝者分配をしている」
ゲヘノムヴァのアルバラが鋭い顔で
「そんな…負や絶望の意識のエネルギーを集めて…明らかに、恐ろしい事をしようとしているとしか思えない」
ゾロアスが真剣な目で
「その通りだ。負や絶望の意識エネルギーは、より人という人の形を強く固着させる作用を持っている。人間は人間の負の側面があるからこそ、人間としての形を成す」
スラッシャーが
「人としての巨大な形を得る為に、負や絶望の意識エネルギーを集めているなら、その強大すぎる人の器に宿る存在って…」
ゾロアスが
「ティリオ達、超越存在が繋がる極天の中で、進化の果てという極天がある。その進化の果ては、高次元から運命を干渉する六柱のホモデウス・アヌンナキを使って、様々な知的生命体の神化を加速させて、進化という存在力を莫大に循環生成している。だが、それに…大きな停留が生じつつある」
ファクドが
「そんな、進化なんてどこでも起こっているだろうに…」
「は!」とティリオは驚きで口を押さえる。
それにファクドが「どうしたんだ? ティリオ…」と
ティリオが挙動不審で
「もしかして、その停留って…ボクの父さんの事?」
ゾロアスが笑み
「正解だ。進化の果ての対決軸である極天の権化である聖帝ディオス、救世全煌帝の活動によって、進化を加速させる絶望エネルギーが減退している。更に聖帝ディオスを主軸として高次元で集まる神格達の集中も、それを高次元から運命を干渉する神々の力も増している」
一莵が
「不幸や絶望の運命を大量に生産させる事は、大きな進化の力を生み出す。だが…聖帝ディオスがいる事によって、その運命を緩やかに回転させて、文明の発達を促しつつ、進化の果てが干渉できる運命の…命達の道の影響力を弱める事ができる」
ゾロアスが
「更にティリオ達のように次々と超越存在の者達が誕生する背景も完成した。それによって、更に超越存在の力が増して、それに繋がる極天との神格達の干渉力も強まる。それは、進化の果てという極天には面白くない事だ」
ファクドが口に手を当て
「ああ…色々と読めてきた」
ルビシャルが
「どういう事なの?」
ティリオが
「つまり、ボクの父さんや、超越存在になっているみんなの影響で進化の果てっていう超越存在の上にいる存在の一つに不都合が生じている。その不都合を解消する為には…その不都合を壊す存在を…あああああ! だから、負と絶望の意識エネルギーで…」
ゾロアスが
「それに匹敵する存在、対局を作り出す為に、戦争シェアリングを使う事をしている」
グランナが
「その超越存在の上にいる極天ってヤツ等の思惑によって戦争シェアリングは、キュリアは、巻き込まれて…ヒドい事に」
ゾロアスが頷き
「その通りだな」
レリスがゾロアスに
「ゾロアス、アナタがそれを分かるという事は、進化の果てという極天の側じゃあないのか? 進化の果てという極天にはアヌンナキ・ホモデウスが、アンタと同じアヌンナキ、神人がいる」
ゾロアスが笑み
「私は、私の神としての道、神道を歩めれば後は…どうでも良い。進化やら、その他の思惑なぞ、降りかからないなら無視するまでだが…」
レリスが鋭い視線で
「つまり、アンタの身にその火の粉が掛かるって事か…」
ゾロアスが頷き
「そういう事だ。もし、その存在が完成すれば、巨大な力で多くの時空が…影響を受ける」
つまり、ゾロアスとて…その影響を避ける事は不可能という事だ。
ゾロアスが鋭い顔で
「これが、ディーエ時空連合で行われている戦争シェアリングの真の目的だ。戦争シェアリングによる調整の裏に隠された本来の仕組み、システムだ」
ティリオ達は、とんでもない事を聞いた。
ティリオが
「これを…」
この事実を父ディオス達に知らせなければ…と
「父親に知らせるのは、それはムリだぞ。小僧」
と、スラッシャーは先を塞ぐ。
ティリオがスラッシャーを見つめて
「なんで? だって、大変な事だろう」
一莵が
「聖帝ディオスの一派や、他の連中も知っているし、勘付いているよ」
「そんな! だって」というティリオの肩をファクドが持ち
「ティリオ、だからこそ…諦めさせたんだよ」
ティリオは察してしまった。
超越存在の不文律という建前を囮にして、本命であるこの事から避けさせる為に父ディオス達が…
スラッシャーが
「オージンの事件と、ネオシウス時空の事件の裏を探っている時に、超高次元多結晶体がもたらされた先を調べた結果、ディーエ時空連合に行き着き…それは、聖帝ディオス側も同じだった」
ゾロアスが
「おそらくは、密かに動いて…色々と…対処するつもりなのだろう。超越存在の連合はな…」
ティリオ達が黙ってしまう。
これは、父ディオス達、超越存在の連合が静かに潰そうとする、とんでもない事案だ。
それに自分達が強引に…
ゾロアスが
「まだ、ここで止まれるぞ?」
グランナは
「みんな悪い。オレは行くわ。みんなは…」
ファクドが
「格好つけるなよ。オレも行くぜ」
ティリオが
「ボクもだ。グランナを見捨て置けない」
と、一莵を見る。
自分が救えなかったキズを持っている。だから…
レリスも
「自分も意見は、変わらない」
ルビシャルが
「アタシは…」
ファクドが微笑み
「学園の方を頼むわ」
ルビシャルが苦笑いして
「分かった」
スラッシャーが
「じゃあ、決定だな。各々」
マリアンナが
「大切は話です。しっかりと親御さんや家族と話し合ってから来なさい」
先を言われてスラッシャー…アオイは渋い顔をする。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、家族への説得