星光 第140話 覚悟はあるか? 後編
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ティリオ達に接触したスラッシャー、そのスラッシャーが示した場所に…
スラッシャーは、ゾディファル教団がどこの時空へ逃れたのか…分かっていた。
そして、放置していた。
ゾディファル教団が逃れた時空、そこは…意外な時空だった。
ティリオ達は指定された時空と銀河の星系へ来る。
その時空とは、神越存在である北斗がいるメガデウス時空群の一つだった。
ティリオは、自分の魔導時空戦艦へみんなを乗せて、メガデウス時空群の一つの、その場所へ到着する。
ティリオ、エアリナ、ジュリアとアリル、ナリル
ファクドと、ファクドの傍人アルド、ルアラ、ラアーラ、アルヤ、ミアラの五人
レリスとルビシャル
そして、グランナも。
グランナは相当に落ち込んで塞ぎ込んでいたが、ティリオがスラッシャーの事を言って解決方法があるかも…を聞いて乱れた髪のまま直ぐに飛び出して来た。
ゾディファル教団の宇宙戦艦達が、その場所に停泊して…補給を受けている。
ティリオが魔導時空戦艦の艦橋から見て
「なんで?」
と、当然の疑問の声を漏らした。
もし、ゾディファル教団がメガデウス時空にいるなら、北斗から連絡が入るはずだ。
それが無かった。
更にゲヘノムヴァ、あのスカイギアの時に遭遇したサタンヴァルデットの技術を持っている組織か集団とも繋がりがあった。
なんで? なんで?とティリオは疑問を感じていると、ティリオ達が進む星系の上に巨大な太陽系サイズの数十億キロの星艦が出現する。
白い結晶の星艦、それはゾロアスの者達だった。
ここにスラッシャーが呼んだ全員が揃いつつあった。
◇◇◇◇◇
ゾディファル教団の惑星級宇宙戦艦ソルハルに入ると
「やほぉぉぉぉぉ!」
と、声を張って近づく千華
「どうも…」
と、お辞儀して千華に続く紫苑がいた。
ティリオが微妙な顔をして
「カレイドの二人も来ていたのか…」
千華が腰に手を当て
「アンタがとんでもない事をやりそうって、アイツから聞いてね」
と、先にいるスラッシャーを指さす。
ティリオ達の後ろから五人が近づく。
ティリオは振り向くと、一莵とディジレーターの五人、ジャンヌ、巴、奈瑞菜、ユノがいた。
ユノがティリオの手を振り
「久しぶりね。聖帝のご子息くん」
ティリオと一莵が視線を交わすが、挨拶はない。
一莵が先を行き、ティリオの隣を通り奥へ行く。
ジュリアがティリオの袖を摘まみ
「いいの?」
ティリオの気持ちを察する。
ティリオは
「今は、そういう場合じゃあないから」
◇◇◇◇◇
ティリオ達、千華達、一莵達、三者はスラッシャーと共に奥にある教皇の間へ入る。
そこは大きな黄金十字と輪が重なったシンボルが安置されて、多くのテーブルが並んでいる。
そのシンボルの下には、ゾディファル教団の女性教皇マリアンナとテスタメントの三人、ゲヘノムヴァの者である浮遊する車椅子に乗る老婆と両脇に黒いサングラスと装束の男女が付いている。そして…もう一人…
ティリオはその人物を見て呆れてしまう。
「ネル様…」
ティリオが名を呼んだ人物、メガデウス時空で北斗と共に治めている女神の女王ネルがいた。
金髪をなびかせて従者の彼女を従えてネルがティリオに
「ごめんなさい。色々と…」
ティリオは呆れた顔をして、その脇をファクドがつつき
「どういう事なの?」
ゲヘノムヴァの大母である老婦人アルバラが連れを伴って近づき
「我らは…ネル様の加護によって成り立っています」
ティリオはアルバラを見つめて
「アナタ方の目的は、何なのですか?」
アルバラが悲しい顔で
「我らの目的は、ヘオスポロスに囚われる魂達の解放、ディオンスの崩壊です」
アルバラの両脇にいる男女、男のアムダスが
「我々は…ヘオスポロスに向かった人々が残した家族達の意思を継いで、ここにいます」
女のイムダスが
「ヘオスポロスでディオンスと融合してネオデウス・ウェポン、超兵器人になった者達の家族が…ヘオスポロスに…囚われた方達を助ける為に結成された組織です」
レリスが
「囚われているとは思わないね。自分で望んで向かっていた。もし放置したら、自殺か…他者を巻き込んだ拡大自殺の犯罪をしていただろう」
アムダスとイムダスが鋭い顔をするが、アルバラがレリスを見つめて
「貴方の言う通り、ヘオスポロスが…そういう事をしなければ、そうなっていたでしょう。ですが…その追い込んでしまった咎は、私達が本来、背負わなければいけない業、罪なのです。それを背負わなかったから…安易な道を選んで後悔して、それを…背負う覚悟を持って、ディオンスを破壊して解放したいのです」
ティリオがネルに
「それを影からネル様が支援していたのですね」
ネルは頷き
「はい。私は…彼女達の考えを痛いほど理解できますから…」
ティリオが
「納得した。どうして、リング・ハイパーグレートの技術とサタンヴァルデットの技術の両方を持っていて研究していたのが、その…エピオン達のようなディオンスの破壊なら、確かにリング・ハイパーグレートとサタンヴァルデットが融合した技術が必要だ。ディオンの結びつける意思をサタンヴァルデットにして破壊する。なるほどね」
エアリナが
「そのために…それをやったゾディファル教団の技術が…」
アルバラが
「ええ…協定を結んでいますよ。極秘に…」
色々と話が繋がる。
そして、一莵が
「色々と話が繋がって通ったなら、スラッシャー」
スラッシャーが
「ああ…じゃあ、本題に入り」
教皇マリアンナが
「我々、ゾディファル教団は…戦争シェアリングをするディーエ時空連合に加わります」
先に言われてスラッシャーがマリアンナを見つめる。
マリアンナが笑み
「アオイ、アナタは最近、言い方がクドいのよ」
テスタメントのホロイエルのエルが
「そう! 全く、嫌な年の取り方をしたわ」
スラッシャーが渋い顔で
「説教なら、帰って来た時にタップリと受けただろう…喋らせてくれよ」
ホロイエルのエルがアオイ…スラッシャーに
「アオイ…アンタは、この子達に嫉妬しているから挑発的な言い回しになって誤解が生じるのよ!」
アオイ…スラッシャーは口をモゴモゴと黙らせる。
指摘通りなのだ。
それをエアリナは見て懐かしさで笑みが零れる。
マリアンナとエルの二人に敵わないアオイの姿が懐かしくてしかたない。
マリアンナがエルと視線を合わせて頷き
「わたくし達から説明します。わたくし達、ゾディファル教団は…ディーエ時空連合の戦争シェアリングへ加わります。そして、戦争シェアリングで他の勢力を圧倒する」
エルが
「聖帝のご子息様、エアリナ、覚悟はある?」
それで全部をティリオ達は察した。
ティリオが
「自分達も加えたゾディファル教団の部隊として、戦争シェアリングに介入して…」
一莵が右手を挙げるとゾロアスと王座と繋がる空間と、この空間を繋ぐ接続面が出現して、王座にいるゾロアスが
「戦争シェアリングは、強大なシステムだ。それから解放できないなら…それを破壊する。それが最善策だぞ」
一莵達の上にある空間の接続面から見える王座にいるゾロアスがティリオ達を見下ろして
「ティリオ・グレンテル…。汝達に問う、覚悟はあるか?」
落ち込んでいたグランナの目に精気と気迫が灯る。
全てを救えない。
ならば、自分が救いたい相手の為に、それ以外を破壊するという覚悟だ。
つまり、今いる…このメンバーで戦争シェアリングをするディーエ時空連合へ戦争シェアリングのルールを使って攻め込むという事だ。
グランナの覚悟は決まっている。
グランナが前に出ようとした肩をファクドが掴む
「オレは…」
と、止めたファクドをグランナは睨む。
ファクドが笑み
「誰が一人で行かせるかよ」
ファクドはグランナの肩を抱いて前に出ると同時に、ティリオも前に出た。
それを見たゾロアスは嬉しそうに笑む
「流石、我が愛し子だ」
前に出たティリオ達にレリスとスラッシャーが続く。
ゾロアスが
「我々からの条件は、スラッシャーを加える事、そして…我々の力を使う事だ」
ゾロアスの我々の力である一莵達がティリオ達五人を見つめる。
「アタシ達も加わるわよ」
と、千華が紫苑と共にティリオ達に並び
エアリナがティリオの後ろに行こうとしたが、ティリオが振り向き手を向けてエアリナを止めた。
ティリオの視線から察してエアリナは下がり、その肩をジュリア、アリル、ナリルが抱く。
ゲヘノムヴァのアルバラが
「我々もバックアップとして…」
ゾロアスが
「では、全てを語ろう。戦争シェアリングを維持運営するシステムの中核を…」
ゾロアスが神の眼で見た戦争シェアリングを維持する存在が語られる。
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次回、システムの正体